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修行開始から暫くしてチャクラの練り方が上手いサクラに合格点とタヅナの護衛を指示したカカシはカノトを伴って街へ出ていた。
といっても忍者の裏の世界では名の知れたカカシとカノトである。
カカシは松葉杖を突いた黒髪で左目に包帯をした男性、カノトも長い銀髪を緩く結んで右肩から流した黒瞳の女性に変化して大通りを歩いていた。
「ねぇ、ナルトとサスケ放って大丈夫だったの?
タヅナさんの護衛もサクラだけで…」
「ま、大丈夫デショ。
俺と一緒で再不斬も暫く動けないだろうしこんな日中の人が多い時に何かあればすぐ分かる。
…お前の事だから風羽も飛ばしてるんだろう?」
「…まぁ念の為、ね。」
街に出る際に口寄せで呼び寄せた小さなミミズクを思い出してカノトはカカシの隣をゆっくり歩きながら微苦笑する。
「ところでどうして街に?」
「ま、リハビリも兼ねて…」
「“兼ねて”…?」
「デートv」
ニコ、と笑い掛けるカカシの言葉に耳を疑って目を見開いたカノトが一拍置いてかあぁ、と頬を染める。
ぱくぱくと口を開けたり閉ざしたりしながら言葉を失う。
「なっ、なな…っ」
「はっは、照れた?」
「ば、馬鹿!!…って、ていうか任務中よ!?何言って」
「分かってるって。だから早く治る為にリハビリしてるんでしょーよ」
「もう!からかってばっかり…!!」
「……からかって無いんだけどなぁ」
ふい、とそっぽを向いてしまったカノトに苦笑を溢したカカシは肩を落として先へ行こうとするカノトの腕を掴んだ。
「!な、何?」
「向こうで昼飯でも」
ぎこち無く振り返ったカノトの後ろの暫く先の店を指差せば二人でそこを目指してまた歩き出す。
適当な定食屋に入った二人は昼時にも関わらずガランとした店の奥の席に座った。
「やっぱり海の側なだけあって魚料理がメインなのね」
「っつっても、沖で獲れるような魚料理は今やってないみたいだな」
「そりゃあそうよ、船を出すのに制限が掛かっちまってねぇ」
開いたメニューを見ていると店の女将さんらしき初老の女性がコップに入った2つの水をコトリと置きながら会話に入ってきた。
「昔は今より貿易も盛んだったし沖まで漁に行っては沢山の魚を獲って来ていたんだけどねぇ………
今じゃ浅瀬にいる魚しか獲りにいけないのよ」
「…………」
「漁が満足に出来ない今はこのメニューしか取り扱ってないの。
折角来てくれたのにすまないね……」
「いえ、お気になさらず」
ずらりと並ぶメニューのうち3種類だけ指差した申し訳なさげな女将にニコ、と笑いかけその内の2種類を注文して女将が下がるのを見届ける。
「………結構大変ね、海辺の国だし漁に制限が掛かるのは死活問題じゃないかしら」
「さっき八百屋があったけど、遠目で見ても分かるくらいには品薄だったな………」
「これじゃ国が荒れるのも時間の問題ね…ま、タヅナさんに刺客を送るくらいだから文字通り権力で物を言わせるんでしょうけど……」
カノトは頬杖をついて窓越しに外を歩いている死人のような顔の街人をぼんやり眺める。
「あら、サクラとタヅナさん」
「ん?」
「そういえばツナミさんに買い物頼まれてたみたいだからそれじゃないかな。」
遠目から見えるサクラとタヅナの姿を確認したカノトは服の裾を掴んできた幼い子供にお菓子をあげているサクラを見て目を細めた。
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