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チャキ、と両左右から充てがわれる苦無は微塵の隙も許さまいと冷たく煌めいていた。
下忍三人が唖然とカカシとカノト、動けずにいる斬不斬を見つめている。
「終わりだ」
「す…すっげぇ!!」
ナルトが感嘆の声を上げる。
サクラも表情を輝かせており、サスケは気を許さないがどこか安心したように空気を和らげていた。
すると、突然斬不斬が笑い出す。
「…くっくっ……終わりだと?」
「…何がおかしいの?」
「分かってねぇなァ、猿真似ごときじゃあこの俺様は倒せない。…絶対にな。」
「…………………」
カカシの表情が険しくなる。
隣にいるカノトも、斬不斬を睨むように目を細めた。
斬不斬は尚も笑う。
「しかしやるじゃねぇか、あの時既に俺の水分身の術はコピーされ、カカシの殺気に紛れて雪の分身を作り上げていたわけか。
分身の方にいかにもらしい台詞を喋らせる事で俺の注意を完全にそっちに引きつけ、本体は霧隠れで隠れて俺の動きを窺ってたって寸法か」
斬不斬のいう『あの時』というのはサスケを鼓舞した時だろう。
黙ったままの二人に構わず斬不斬は続けた。
「けどな」
「「!!」」
目の前にいる筈の斬不斬の声が突如後ろから聞こえ二人は目を見開いた。
「俺もそう甘かぁねぇんだよ」
「!」
「っ」
「そいつも偽物!?」
目の前で捕らえていた斬不斬が水に変わり、後ろに立っていた斬不斬が斬破刀を横に薙ぎ払う。
咄嗟にしゃがんだ二人だが、カノトは斬不斬に蹴られて離れた木の幹に叩き付けられた。
「か、はっ…!」
「カノト!!」
「カノトねーちゃん!!」
「カノト先生!!」
カノトの口から血が溢れる。
カカシやナルト、サクラが叫ぶも次の動きに移す前に振り切り地に刺さった斬破刀を支えに持ち替えると逆の足でカカシを蹴り飛ばした。
ドンッ……
すかさず斬不斬は湖へ落ちていくカカシへと走り出すが入れ違いでカノトが瞬身の術で斬不斬の後ろへと回った。
「(まきびし…!?)」
「(今、)」
地に巻かれたまきびしの手前で足を止めた瞬間、苦無を構えたカノトが得物を振り下ろす。
ガッ
「ぐっ」
「カノト先生!!」
「(早い…!)」
ヒュッと風を切った刃はギリギリで躱した斬不斬に届く事無く、カノトは後頭部を掴まれると斬不斬に湖に投げ飛ばされた。
ドボン、と水中へ落とされると同じタイミングでカカシも湖へと落ちる。
「くだらねぇ」
「ぶはっ」
「な、何だこの水…やけに重いぞ…!?」
「ふん、馬鹿が」
「!」
背後の斬不斬に気付いたカカシがカノトの腕を引くと素早く印を組んだ斬不斬が術を発動させた。
「水牢の術」
「しまった…!」
ザバッ、と斬不斬の術により湖から巻き上がった水の玉にカカシとカノトは閉じ込められた。
カカシと背中合わせで水の玉を見上げたカノトが小さく舌打ちを溢す。
「ちっ…」
「(水中に一時逃げ込んだつもりが大失策だ…!)」
「(この狭さじゃ下手に術が使えない…!)」
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