▼ 02-1
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「……何故ですか、火影様。」
長期任務から戻り、その場で暗部を抜け上忍に戻るよう言われたカノトは2日程休みを貰っていた。
朝早くに日課を終わらせ、上空に旋回する鴉を見て三代目の許へと馳せ参じたのが五分前。
「元々あた…私は暗部に残ると言った筈です。」
「それは昨日却下したじゃろうて。
以前も暗部に残るのを却下したのをどうしても、というから延長したにすぎん。」
「なら…!」
「カノト。」
「っ!」
三代目に咎められカノトはぐっと黙り込んだ。
「…お前を暗部に残したくないのは四代目の意向なのじゃ。」
「!」
「頃合いを見て上忍に戻すつもりだと言っていたが、四代目が亡くなって保留になっていた。
確かに暗部はまだ人手不足、残りたいと言うのはありがたいが…本来ならもう上忍に戻るべきなのだ。
それとも、暗部を抜けたくない理由があるのか?」
「……いいえ」
「なら上忍に戻りたくない理由があるのか?」
「……いい、え」
「なら上忍に戻れ。良いな?」
カノトは躊躇いがちに返答した。
「…御意」
「…話を戻す。
改めて言うが、お前にはカカシ率いる第七班の補佐に入ってもらおうと思う。」
「っ……何故ですか。」
久し振りに会った幼馴染は最後に会った時と変わらなかった。
昨夜はたまたまかもしれないが、また避けられるかもしれないと思うとカカシに会うのが怖かった。
「これはカカシの希望だ。」
「っ!?」
カノトは三代目の言葉に目を見開いた。
「う、そ…」
「嘘ではない。
今朝、珍しく早々に訪ねてきおってお前を補佐に欲しいと言ってきた。」
「何故か…彼は言っていましたか?」
「……何かあったのか?」
三代目の訝しげな視線がカノトに刺さる。
避けられている、とは言えなかった。
「……いえ…。」
「なら、構わんな?」
「………は、い。」
「ならば、今日付でお前をカカシの補佐とする。」
「御意…」
「なに、今日は元々非番じゃろうて。
そのまま休んで構わぬ。
呼び出してすまなかったな。」
「いえ」
部屋を後にしたカノトは自宅に帰る気にもなれず、里をぶらつく事にした。
しかし里を半周しても、考えるのはカカシの事だけという事に気付き自嘲気味に笑う。
いつから好きだったのか、何て分からない。
初めて会った日、ひとりが嫌だとぐずった自分を支えてくれた。
それだけじゃない。
任務の時も、怪我や病気をした時も。
カカシは覚えていないかもしれないが………オビトやリンが死んだ時もだった。
いつも助けられて、支えられて。
いつの間にか惹かれていて。
ただ。
師を失くして、気付いた時にはカカシは自分を避けるようになった。
暗部を抜ける少し前からいろんな女性との噂が絶えなくなり、更に気付けばその噂から逃げるように自分は暗部に逃げていた。
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