ぬらりひょんの孫 | ナノ


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奴良組本家ーーーーー







清々しく気持ちの良い早朝。




着流しに羽織を着たリクオが大きな盃に妖酩酒を注いで庭の池の前に佇んでいた。







その後ろには猫の姿をした紅葉が欠伸を噛み殺しながら眠そうな顔でそれを見守っている。






「お?」






姿は見えないが二階から声が聞こえる。

恐らくリクオの姿を見つけた首無あたりだろうと思いながら紅葉は再び込み上げてきた欠伸を我慢した。





奥義・明鏡止水!!


桜!!





祖父であるぬらりひょんの技を発動したものの、盃から妖酩酒が溢れただけで失敗に終わる。




リクオは盃の重みに耐えられずそのまま池にダイブした。






「あれっ…」






ザパーーンッ






『あーぁ、妖酩酒もったいにゃい…』






あたしの妖酩酒…とぼやきながら紅葉が前足で顔を洗う。






「いでで…やっぱ無理かぁ」

「ひゃっひゃっひゃっ、なーにをしとんじゃリクオー」

『うわ出た』






聞き慣れた声にぴしりと紅葉は尻尾を振る。






「出たとはなんじゃ。人を妖怪みたいに…まったく」

『寧ろ大妖怪じゃないの…』

「して、リクオ。そりゃ明鏡止水か?
小さい頃はよく見よう見まねで真似しとったの」

「じいちゃん…」






案の定、池から這い上がってきたリクオが嫌そうな顔をする。






「まーたあんときみたいに、おじいちゃんみたいになりたーいとか言って継ぐ気になってくれんかのー」

「うん。まだ…遅くはないよね。」

「やめとけやめとけ。人間に妖力は使え…え?何ーーー!?」

『ちょっと初代うるさ!!馬鹿!!』






ぬらりひょんの叫びに紅葉の毛が逆立つ。

耳に響いたのか、両前足で耳を閉じた。






「じいちゃん…僕、三代目を継ぐ!
これ以上組のみんなを…迷わせない」

「そ…総大将…こ、これは…」

「うぬぅ…ワシは夢でも見とるのか?
牛鬼と紅葉は一体何を吹き込んだのか…」

『ちょっと。あたしは何もしてないわよ。』






池に落ちたとはいえ水も滴るなんとやら、と濡れているリクオを横目で見ながら惚れた弱みだと自分に内心苦笑いしつつ、ジト目で紅葉がぬらりひょんを睨む。






「あれ…牛鬼のこと知ってるの?」

「当たり前じゃ!!カラスの息子に口止めしたらしいが…牛鬼と戦ったらしいな!!あいつめ、目をかけてやったのにとんだことしてくれたわい!!
あんなやつ!!破門じゃ!!切腹じゃ…」

「ちょ、ちょっと総大将…!まだ詳しい事が分かりませんゆえそこまでは…」

『…あら、牛鬼が切腹なら事態を予測していて黙っていたあたしは粛清かしら?』

「何ーー?!何故黙っていた!!」

『にゃあ』

「ごまかすでない!!」






縁側で普通の猫のように振る舞い始めた紅葉にぬらりひょんが詰め寄る。





首根っこを掴まれそうになった紅葉の前にリクオが割って入り、紅葉を優しい手つきで抱き上げた。










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