D.gray-man | ナノ


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くらくらと目眩を起こしているような錯覚に陥りながらヨリはゆっくり目を開ける。








「目が覚めた?」

「…シエル…?」

「ふふ、覚えていてくれて嬉しいわ。」

「…一応、ブックマンの縁者だから」

「そうだったわね」







澄み切った青い空、白い雲と、以前夢で会った黒いリボンで目隠しをした銀髪の女性が視界を埋めている。



どうやら彼女に膝枕されているらしい。






身体を起こそうとするとシエルの白く細い手がヨリの身体を優しく押し戻す。







「まだ休んで。
短期間でいろんな事起きて、貴女が思っている以上に貴女に負荷がかかっているの。」

「…休んでいられない。」

「このまま起きれば貴女は死ぬかもしれない。」

「!

………それは…咎落ちって、こと…?」

「…………お願い、休んで。」







シエルの言葉に心当たりがあるヨリは静かに問いかけるも答えない彼女が暗に肯定していると悟り、シエルの膝にゆっくりと頭を乗せた。








「良い子ね。」

「…説明、出来る?」

「それはどれの事について?
イノセンスの事?ノアの事?ヴァルキリー…乙女の事?私の事?
ーー貴女の事?」

「………全部。」

「そうねぇ…」







顎に人差し指を宛ててシエルは“んー”と思案する。







「そんなに悩む事?」

「いいえ。順を追って説明したいのだけど貴女にどうやって理解してもらおうか悩んでるの。
ジョイドに会って、無くした昔の記憶は戻ったのよね」

「ジョイド?」

「あぁ、えっと…今は確かティキ、ね。」







ヨリは瞼を震わせて目を伏せる。
脳裏には空白だった記憶。




癖のある黒髪、金の瞳。


左目の下にある泣き黒子が特徴的で、いつも優しく撫でてくれていたのをーーーーー何となくだが、覚えている。







「………思い出しては、いる。」

「信じられない?」

「信じられない…というより実感がない。
別にあの人と似てないし」

「そうね、ジョイドにはあまり似てないわね。
でも心当たりはあるでしょう?」

「…………」







あの温かい手の感触が、他の誰でもない事を。






「彼が貴女の傍を離れた理由も分かるわね?」

「…あたしがノアに覚醒したあの人を見たから。」

「そう。ましてや、貴女はブックマンやjr.に劣らない記憶力がある。
だから貴女の記憶が消された…正確には封じられた。
彼らは“貴女を殺す事は出来無い”から。


ーーー全部知ってしまえば、貴女は選択を迫られるわ。
ただただ幸せに生きたいなら何も知らずにイノセンスを手放して静かにブックマンjr.の帰りを待っている方がいい。」

「……置いて行かれるのは、もう、うんざり。」

「………」

「いつになるか分からない彼の帰りを待っている方がおかしくなる…教団にいても、そうだった。

それなら武器を取り戦って傷付いてでも彼の傍にいるし、何者からも彼を守る。
…世界を敵に回しても。」

「ヨリ…」

「それに」

「…『それに』?」







ヨリは下からシエルを真っ直ぐ見上げた。







「『悲劇に負けないで』と言われた。
『今度こそ幸せになって』とも。」

「!」

「だからあたしは負けるわけには行かないし、あたしの幸せは彼とその隣で生きる事だから。」

「……エリアーデったら、最期にそんな事言ってたのね。」








どこか懐かしむような、寂しそうな表情で(といってもヨリには彼女の目元など分からないが)ぽつりとシエルが呟く。








「ヨリ、」

「…何?」

「約束して。
自分の運命を受け入れて、抗い、絶対勝つと。」

「…どういう意味?」

「今から全て話す。
そして私は貴女を全力でフォローする。
でも運命だけは代わってあげる事は出来無い…自分の運命に負けないで」

「……………」

「あと、お話が終わったらやっておかないといけない事があるの。」

「やっておかないといけない事?」








質問に応えない代わりにシエルはヨリの頭を優しく撫でながら静かに語り出した。







「貴女はねーーーーー」










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