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「吸血鬼…?」
「うそぉ」
「「「「「!!?」」」」」
汽車に乗り遅れたアレンを迎えに行ったヨリとラビ。
ただならぬ空気を感じて樽の中に隠れていると、村人達によって捕らわれ村の先にある古城にいる吸血鬼を退治してくれと懇願されているアレンを発見した。
途中、ヨリもラビも樽から頭を出していたが村人達もアレンも気付かなかったようだ。
「なっ何奴!?」
「ラビ、ヨリ!?
どうして此処に?」
「アレンを探しに来たの」
「そっちこそ何やってんだ?」
「はっ、村長!
あの二人の胸…!」
「はっ!!」
村人達の視線がラビとヨリに向けられる。
村長、と呼ばれた老人の目が光った。
「黒の修道士様がもうふたりィー!!!」
「やった!」
「押さえろ」
「ラビ!ヨリ!」
ドッタンバッタン、とラビとヨリが村人達にもみくちゃにされる。
「………で?」
蔑むような目で、椅子に座り足を組んだヨリがテーブルに肘をついて頬を乗せている。
その横にはアレン同様捕らわれたラビが『ほらな、オレの予感は当たるんさ…』と遠い目をしていた。
「つ、強い……」
「悲しいかな、任務でよく組むせいでユウに性格が似てきちゃったヨリを怒らせると怖いんさ……」
「ヨリってそんなに強かったんだ…」
「オレはヨリに怒られた事ねぇけど元々キレたら怖えからな…」
「怒られた事ないんですか?」
「オレに対しては怒らないしキレた事無ぇけど、オレに何かあったらそれが例えユウ相手でも怒るぜ。ホント頼もしい彼女さ。」
ラビと一緒に捕らわれそうになったヨリは襲い来る村人達を片っ端から対人格闘で返り討ちにし椅子に縛り付けられる事を免れた。
擦り傷1つしていないが打ち身でボロボロの村人達の前で、ヨリはゼロを転換させナイフに変えるとラビとアレンのロープを切って解放する。
「で、何なんですか一体?」
「聞かない。帰る。」
「お待ち下さい修道士様ァァァッ!!」
「ま、まぁまぁヨリ。話くらいは聞いてやろーぜ?」
「………ラビが言うなら、話だけ。」
基本的にラビを絶対とするヨリは捕らえる為とはいえラビに襲いかかった村人達をよく思っていないようだ。
立ち上がり建物を出ようとするヨリを必死に止める村人達を見て、ラビはヨリを引き止めた。
「実は、クロウリーが暴れ出す少し前に村にひとりの旅人が訪れたのです」
「旅人…?」
「はい。旅人は神父と名乗りクロウリー城への道を聞いてきました。」
「(…神父?)」
黙って話を聞きながら、ヨリはぴくりと眉根を寄せた。
いつぞやに自分は神父の真似事をした事がある。
それを覚えたきっかけである“彼”も、旅をしていた時『自分は神父だ』と名乗っていた。
「死ぬかもしれないと必死で止めたのですが、旅人は笑いながら城へ行ってしまったのです。
それから3日経ち、やはりクロウリーに殺されてしまったかと思った時、なんと旅人は戻ってきたのです。」
「………………」
「ヨリ?」
ヨリは村長の話を聞きながら適当な村人を1人手招きし紙とペンを持ってこさせた。
紙の上でサラサラとペンを動かすヨリにラビは紙を覗きながら不思議そうに見つめる。
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