▼
(1/7)
無事列車に乗った(駅では間に合わない為線路の上にあった橋から飛び乗り乗車だ)四人。
ヨリは車掌を見つけるとコートの左胸にあるローズクロスを見せ、個室を用意してもらった。
「っだー…初日からあんなに走ると思わなかったさ…」
ラビは用意された室内のベンチにズルズルと座り込む。
「わりとよくあるよ。コムイは無計画だから。
ね、神田」
「夜中じゃないだけマシだな」
「夜中は夜間列車しかないから乗れなかったら朝まで待たないといけないしね」
窓際でラビの隣に座るヨリはトランクの隙間から資料を取り出した。
それを合図に他の3人もそれぞれ資料を手にする。
【フィンランド “精霊の泉”現象】
首都であるヘルシンキ近郊にある古びた祠のある泉。
正義なる泉とも呼ばれ、150年程前からその現象があると言われているとの事。
現象としては、身を清め泉に浸かればどんな傷も癒し、不治の病をたちまち治す事が出来るが、不浄の身であればその者をその場で死なせてしまう、という。
泉を知っている者は「正義であれば泉の神の怒りに触れる事はない」と信仰している。
そこまで読んで昔フィンランドに一度行った事があるのを思い出した。
クロスと旅を始めた頃に連れられ、借金の取り立てから逃げていたら師の愛人とやらに匿ってもらった記憶を掘り返す。
お前は女だからギャンブルは覚えるな、と言われたが結局借金を返す為に覚えたのもその時だった。
「ヨリ?」
「…フィンランドには、師匠と行った事があって」
「クロス元帥か」
「!」
「え、じじい知ってんの?」
「まぁ、ある意味有名ですしね」
女好き、酒好き、借金まみれ
世界中にいる愛人にも借金。
「…オレそこまで聞くとクロス元帥ってロクな人間に聞こえないさ…ってか女好き!?ヨリ何もされてない!?」
「何を…?
あたしがギャンブル覚えたのも、元はといえばクロス様が原因だしね」
「ギャンブル!?」
「うん。クロス様には“女だからしなくていい”って言われてたけど、一時期あたしがギャンブルで稼いで生活してたから」
「オレのヨリに何教えてるんさクロス元帥!」
「(教えたのはクロス様じゃないんだけどな…)」
「(この赤毛うるせぇ…)」
狭い個室で抜刀しかねない神田に気付いたヨリが立ち上がった。
「ラビ、」
「んえ?」
「ちょっと早いけど乗り換えないと行けないから行こうか」
「分かったさ」
「ではまた。
神田もまたね」
「うむ、気をつけてな」
「…あぁ」
ラビも立ち上がり、ヨリはブックマンに軽く挨拶して神田にひらりと手を振ってヨリとラビは部屋から退室する。
prev / next