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意識が浮上して、ゆっくり目を開ける。
開いた視界に入って来たのは陽の光ではなく燃えるような赤だった。
「おはよ、ヨリ」
「jr.…」
「違うさ」
「…ラビ」
合格、と彼は微笑んだ。
何故鍵をかけた筈のこの部屋にいるのか。
「おはよう……?どうやって…」
「ん?そんなのオレの前じゃ、ちょちょいのちょいさ。」
「…………」
犯罪チックな台詞に寝惚けた頭の隅でまぁいいやと考える事を放棄したヨリは再び瞼を落とそうとする。
「ちょ、ヨリ、起きて起きて!」
「んぅ…?」
「あーだめそんな可愛い声出さないでオレ辛い何か負けるさ」
「……?」
仕方無く目を擦って意識を叩き起こす。
目の前で自分のベッドに潜り込んでいるラビは立てた腕に頭を乗せてこちらを見ていた。
「ヨリ、教団の中案内してくれない?」
「…いいよ。
ちょっと顔洗ってくる…」
「ん、分かった」
何故ベッドにいるのか、などいろいろなツッコミを頭の隅に全て追いやり、ベッドからもぞもぞと起き上がった。
5分で顔を洗って歯を磨き、クローゼットの中に閉まっている団服を取り出す。
左胸にローズクロスのついたフード付きのロングコートをベッドの空いている所に置き、脱衣場でハイネックの黒い長袖と丈の短い黒のホットパンツ、アキレスまでの靴下を履く。
ペタペタと脱衣場から出て来たヨリの格好に起き上がっていたラビは片手で顔を覆って仰け反った。
「(太腿…!!)」
「…?」
一人あーだのうーだの唸っているラビに首を傾げながらもロングブーツを履き、立ち上がってコートを羽織る。
「…行かないの?」
「行く、行くさ。もういい?コート着た?」
「?うん」
コートのジッパーを上まで上げ、ポケットに白い塊を入れると、ラビが立ち上がった。
腰に華蝶風月を装備した。
「ヨリ、」
「?」
「お前の団服考えたの誰さ?」
「何でもいいって言ったから知らない。リナリーとリナリーじゃないかな。」
「ジョニーって科学班の奴だよな。
リナリー?」
「コムイの妹」
「会ってないかも」
「多分任務行ってるから」
ラビが部屋の鍵を解錠して扉を開けた。
すると扉の前に見慣れた影が。
「やっぱりかこの馬鹿もんが!!」
「げ、じじい!」
「ヨリ嬢無事か」
「何もしてねぇって!」
ぎゃいぎゃいと喧嘩する二人を見ながら傍観しようとしたヨリの耳に普段個人で来る連絡とは違った劈くような音がポケットから鳴る。
ジリリリリ!!
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