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ある日の昼下がり。







「紅月?」

「え?」








政宗が紅月の部屋に入ってきた。


城下を歩いていた際に領主・伊達政宗公に気に入られて、少し前に彼から拾われた紅月は字が書けずに政宗にお願いし、こうして毎日字の練習をしていた。







「どうかなさいましたか?」

「いや、大した理由じゃないんだが…。」








"Ah〜…お前の顔が見たくなってな"と政宗が続けた。







「っ…」







一気に熱が上がり、紅月は顔が紅潮したのが自分でも分かった。


それに気付いた政宗がニヤリと笑う。







「照れてるのか?」








ニヤニヤしながら見つめる政宗に紅月は更に紅潮する。








「て、照れてませんっ!!」








そう言って私は紙と向き合った。
筆を持ち、気持ちを落ち着かせて字を書こうとするが思うように書けない。








「気が乱れてるぞ?」

「ひゃっ…」







政宗様、私が耳弱いのを知ってて耳元で囁いているんですか。

貴方様の声が楽しそうに聞こえますよ?






内心そんな事を思いながら紅月は流されるまま政宗に任せた。








「ほら…」








政宗は紅月の手も一緒に筆を握り、サラサラと筆を走らせる。

弱いところで囁かれた上に、手を握られて思考回路が爆発してしまった紅月は何も考えられない状態だった。








「…こうするんだ、分かったか?」

「は、はいっ?!」








政宗は一通り教えていたが、紅月はそれどころじゃなかった。
何とか返事をしてみたものの、裏返った声になってしまう。








「っ…ははっ!!」

「…っ」








小さく吹き出して政宗は大きく笑う。
それでもときめいた紅月は一体どれだけ政宗を溺愛しているのだろうかと一瞬思った。







「わ…笑わないでください!!」







これ以上真っ赤な顔を見られまいと両手で顔を覆ってみるも、政宗によって引き剥がされた。





Chu







「なっ…!!」

「相変わらずcuteな顔しやがって…」








政宗が紅月の頬に口付ける。
クスクスと笑ってそのまま政宗は紅月を押し倒した。








「紅月…乱れる姿、俺に見せてみな…」








政宗が紅月の着物に手をかけた。








「っっ、こ…小十郎様ぁぁぁあっ!!」








身の危険を感じ、ある意味政宗の保護者であろう片倉小十郎を城内に響き渡るような声で呼ぶ。








「what!?紅月!!」








バンッ!!








「どうしたっ!?
…って、政宗様…?」








小十郎が乱暴に襖を開けた。
組み敷かれてる紅月を見て現状を把握したのだろう。


二人は小十郎の背後に鬼のようなモノが見えた。







「政宗様…執務はどうなされたんですか…?」







呼んだのは間違いであっただろうか…。
そう思ってしまう程本気で怖い。








「oh…それは…っ小十郎!!」








言葉を濁す政宗を問答無用で小十郎は連れて行く。








「す、すみません政宗様」








バクバクと煩い心臓を宥めながら、もういない政宗に紅月小さく謝罪する。


先程握られていた手にはまだ政宗の体温がほんの少し残っていた。








end.

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