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「っ…」
「これは……」
悲鳴が聞こえた方へたどり着くと、薬売りと如月は絶句した。
如月に至っては嗅覚が鋭い為浴衣の袖で鼻と口を覆って顔をしかめている。
殆ど顔の原形を留めていない遺体。
無造作に腹を引き裂かれ、辺りに飛び散っている臓物。
少し離れた箇所に転がり活動を続けようと弱く鼓動している心臓。
「これは、これは…」
「今殺られたばかりだな…鼻が曲がりそう…」
薬売りが真新しい手拭いを出し如月に手渡すと前に向き直った。
遺体から少し離れたところに蹲る女性二人に怯えた表情の女性、真っ青になって口を押さえる男性が一人と法師と修験者が一人ずつ。
そして三人目の女性にくっついている信太。
「ひっく……っふ…」
「いや、ぁ…」
「っ………」
「な、な…」
如月は人数を確認しながら、少々骨が折れそうだと小さく嘆息した。
「あんたらは…」
「これは…一体、誰が?」
泣き続ける女達を見て如月に目配せすると如月はため息をついて固まっている女子供の所に事情聴取に向かう。
その間に薬売りは残る男三人に話を聞く事にした。
「これは…一体、何が…?」
「し、知らねえ!!
急に茂吉が苦しいとか言い出して…っ」
「知り合いで…?」
「知り合いも何もっ…そいつぁこの辺じゃ知らない奴は居ねぇよ!!」
「ほう……」
憎々しげに男は茂吉について語り出す。
如月は女子供を宥めながらそちらに聞き耳を立てた。
「自分のシマだ何だとか言って適当な家に押し入って場所代とか言って金を要求してきたり、気に入った女拐って襲ったあとに捨てちまったりする酷ぇ男だい!!」
「では、そいつはこの辺じゃあ知らない奴はいない…という事か?」
如月の質問に男──弥七は頷いた。
「俺の妹は…そいつに襲われて…身投げしちまったよ」
「!」
「それは…お気の毒に…」
男の言葉に如月が顔をしかめ、薬売りがそう言葉を紡ぐと弥七は黙り込んでしまった。
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