甘寧と喧嘩した。
理由は餓鬼か、てくらいくだらない事。
とにかくあいつがかなり怒ってて、でも俺も納得出来なくて、いつもの通りの喧嘩で済むかと思ったんだけど。
今回は何故か違うみたいだ。
甘寧はたまに、怖い。
本当の本当に俺の事なんてもうどうでも良いような、諦めたような眼をして「もういい」だなんて言われると本気で焦る。
このままもう甘寧は俺のところに戻ってこない、なんて、そんな事なんて無い筈なのにくだらない。
ただそれが本気だったら、とか。
惚れた弱みってやつかもしれない。
汚い言葉で罵られたほうがまだ良かった、だなんて思ってしまう程甘寧には考えられない冷たく低い声を出して言うのだ。
「どっか行ってろ。もう顔も見たくねえ」
その言葉に俺はやっぱり何も口に出せなくて。
そっか、て納得もしてないくせにゆっくりとした動作で扉へ向う。
追いかけてこいよ。
やっぱり嘘だ、そんな訳ねえだろ。って笑い飛ばしてくれよ。
ほら、もう部屋を出ちまう。
「凌統」
「ッ!」
自分でもまさに期待してました、とでも言うような振り向きかただったかもしれない。
なに、とか興味ありませんみたいな口調で、でも内心心臓が飛び出るんじゃないかって思うくらいばくばくしていた。
「今までありがとよ。…楽しかったぜ」
ねえ、今なんて言ったの。
せめて「ゆめ」だと笑わせて
(虚無。ただそれだけ)