Happy&ThankyouBirthday!




えー。本日は3月5日です。
とても大事な日だったような、そんなこともないようなコトもない気がするけれども。
何が大事だったかが思い出せない私、黒河沙紀です。

……。

あ!あれか!DVDの発売日か!
いやそれもあったけど、何か違うわ。
もっと大事な内容だったような……。

思い出せ、私。
とても大事なことのはず……。



「……黒河?なにしてるの、こんな廊下のど真ん中で」

「……っがんばれ私!思い出すんだ……!」

「……」



がしっ



「ひぃぃぃっ…!な、ななっなに?!なに突然のアイアンクロー?!!」



突然正面に現れた人物に、更に突然頭部を鷲掴まれ、私は混乱の極地に落とし込まれた。



「俺が声を掛けたのに無視するなんて、どういうつもりだい?」

「ゆ、幸村…っ?」



なんと。というか。
私に物理的攻撃を仕掛けてくる奴なんて、他にいないわ。



「ごめん、無視したつもりは……ちょっと聴覚奪われてた!」

「……」



めりめりめり……



「ったぁぁあぁっイタイ痛い痛いです幸村様ぁぁっ……!!」



掴まれた手に力が籠められる。

おま、ちょ、自分の握力考えろや!
頭割れるし!

必死で彼の腕をばしばしすると、やっとのことで解放して頂けた。



「で、なにしてたの?」

「あれ、さっきまでのやり取り全力でスルーですか?」



別にいいけどさ。

幸村に抗議するなんて時間の無駄だ。
そう思って顔を上げた瞬間だった。



「いやぁ、今日さ……ぁ、あぁぁあぁあぁっ…!!!」

「朝から騒がしいね、黒河は」



思い出したのだ。

今日という日が何の日か。



「あ、ぁぁ、……あの、ゆ、幸村……っごめん!」

「は?」



咄嗟に頭を下げた私に幸村の表情は見えなかったけど、頭上から降ってきた言葉に硬直する。

「は?」とかもうこれ土下座した方がいんじゃね?頭廊下に擦りつけた方がいんじゃね?

ガタガタ震えながらチラリと幸村を窺えば、普通に驚いた表情をしていた。

そんな彼に、私は罪を告白するように口を開く。



「…………プレゼント、用意するの忘れましたぁぁっ……!」

「……あぁ……そんなこと?」

「うんやっぱそんなことだし本当に心から申し訳ないと……。……?ん?“そんなこと”??」



あれ?
幸村……怒って、ない?

予想外のリアクションに首を傾げていると、それはそれはイイ笑顔で、幸村が私の両頬にそっと手を添えた。

え。なにこの状況。



「黒河が俺の誕生日を忘れてるのなんて、予想済みだよ」

「はぁ…面目無い」

「でも。プレゼントは欲しいな」

「え」



「くれるよね?」



まさかのムチャぶり?

戸惑いながらも必死で頭を働かせる。

こうなれば、笑いでこの場をやり過ごすしかない。



「ゆっ、幸村……!」

「ん?」





「わ……私のハートもってけ!!」





「…………」

「…………」



あれ。ウケない、どころか。



「フフ、それはありがたく頂くよ。……でも足りないかな」

「えぇぇ……」



めっちゃイイ笑顔再び。



「ぜんぶ」

「は?」





「黒河の全部を、俺にくれない?」





「……あ、はい」





その笑顔に、拒否権なし。



ぜんぶもってけ恋ドロボー!










(3/5〜HappyBirthday
  for YUKIMURA!)

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