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自分達は一流の忍者になる為に日々鍛錬を積み、実習実技実践を経て学園を巣立つ資格を得ようと精進している。
しかし彼の場合はそれとは別に、既に稼ぎを生む立場にまで入りつつある。
その境界が、その責任が、ある種の隔たりを感じさせているのだろうか。

ぶんぶん、と潮江が頭を振った。
「大変か、家業は」
目を逸らす様に帳簿へと落とす。
「ん〜?まぁ、な。でもやり甲斐はあるし、俺にはこれくらいしか出来ないから」
微かに日向が苦笑を零した気配がした。
それは字の如く“苦い笑み”だった。
何かを甘受するような苦笑ではなく、自嘲するような笑み。
「おい、」
咄嗟にそう口をついたが
「親父がさ、ここしばらく調子が悪くてな。床に伏せる事もままあって、今は俺が跡取りとして親父の補佐と代理を務めつつって感じだからバタバタが増してるけど…」
そこで一瞬、日向が言い淀む。
「それに、弟には最後まで安心して学び舎に通って欲しいし、その為なら学園との両立は苦じゃない。それは本当」
パタリ、と帳簿を閉じる。
「だから大変は大変だけど、辛くは無いよ。ちっとも辛くはない」

“こんな事は”
と続いている様な気がした。

「陽、」



なら、お前はどんな事を辛いと思っているんだ。
“それは本当”と言うのなら、何が偽りなんだ。

自分を嗤うのは、何故だ。



潮江は問い出そうと日向の名を口にしたものの、続きが紡げなかった。
言葉を発そうと口を開けば、理由の解らない苛立ちが喉へ流し込められ胃を不快にした。



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