01
Merry Christmas
今年もこの日が来た。俗に言う「クリスマス」だ。
俺、竹谷八左ヱ門はバレンタインの次にこの日が嫌いで、でもどっかで望みを持ってしまう忌々しい日だと認識している。
…うん、今年も力一杯叫ぼう、この胸の内を!
「リア充滅びろッ!!」
清々しいまでに声を高々と上げたら
「五月蠅ぇ、馬鹿八ッ」
―――ゴンっ!!
と、三郎に拳骨を食らった。痛い。マジで痛い。容赦ねーのな。
「何もゲンコじゃなくてもいーじゃんよ」
痛ててて、と頭を擦って俺は椅子に座り直す。
今は昼食中で昼休み。
ここ1年B組には、俺と三郎と雷蔵。それからA組の勘右衛門と兵助。C組からは鴻がやって来て机を囲んでいた。
どういう訳か、馬が合うと言うか何と言うか。入学当初から徐々につるむようになり、クラスは違えど常に6人一緒に居る様な形に落ち着いた。
「馬鹿が馬鹿な事を叫ぶからだ」
冷めた目で三郎が俺を一瞥する。
そこに「それだからモテないんだよ」と、兵助がズバッと言葉を重ねる。
「酷でぇ…」
ダブルパンチに頭を垂れる俺に「でも、八左の気持ち解らなくもないよね〜。ホント、浮かれてる奴滅びればいいのに」と、勘右衛門が物凄く優しい微笑みを湛えて、物凄く恐い事をサラッと言って退けた。
俺、同じセリフ言ったけど、こんなにドス黒いオーラ纏ってなかったぜ!?
勘右衛門の顔を見て、ひくり、と全員の顔が引き攣った。
「…勘右衛門、もしかしてまた振られたのか?」
呆れたように三郎が口にする。
「またって言うな馬鹿鉢屋!!」
勘右衛門が三郎に間髪入れずに歯を剥く。
「何なの皆、好きだって言ってくる癖に、暫くすると別れたいって!一方的過ぎ〜」
もうやだ!と勘右衛門が飲みかけのフルーツジュースのパックを乱暴に机に置くと突っ伏した。
「勘ちゃんは…優しいから」
それまで行く末をのほほんと見守っていた雷蔵が苦笑を浮かべて言葉を零す。
「“優しい”と言うなら、雷蔵だってそうじゃんか〜」
突っ伏した顔を半分だけ上げ、勘右衛門が雷蔵をじとっと見つめる。
「優しいは優しいでも、勘と雷蔵は違うからなぁ」
もぐもぐとサンドウィッチを頬張った鴻が、ここに来てやっと話しに加わった。
「何が違うのさ」
今度は鴻をじと目で見遣る。
「雷蔵の優しさは、気の無い告白はちゃんと断る。勘の優しさは、おおよそオールマイティに告白を受け入れる。けれど結局、許容範囲が広い分“特別”にはならない。そこが不満なんだろうな」
と、鴻が眉を八の字に下げて微笑む。
「意味分かんない」
勘右衛門が不貞腐れたように再び突っ伏した。
「となるとさ!現在全員フリーって事だよな?うお〜、仲間仲間!!」
色めき立った教室の雰囲気に散々中てられた俺は失念していたけど、実は俺たちの中で唯一彼女持ちだったのは勘右衛門だけだった。
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