02




「五月蝿い、八。」
「病人の頭に響くだろうが、考えろ馬鹿。」
久々知と鉢屋の容赦ない注意が入る。
「悪ぃ。」
と、竹谷がガシガシと後ろ頭を掻く。
「ありがとうな、八。」
近江だけは擁護して桶を受け取る。

「はっちゃん、ありがとう・・・」
僕もお礼を述べる。
「いいって、いいって、こんくらいしか出来ねぇし。」
枕元へ来たはっちゃんが、ぐしゃぐしゃと僕の頭を混ぜる。
ちょっとだけ頭に響いたけれど、はっちゃんの労りが心地よくて目を瞑った。

「さて、雷蔵も少し眠りな。兵助、悪いが勘の所に様子見に行ってくれないか?三郎は伊作先輩から薬を貰ってきて欲しい。八には申し訳ないが、もう一回水を汲んできてもらいたい。雷蔵の身体拭くのにこの水使っちゃうからさ。」
てきぱきと近江が指示を出す。
「分かった。」「任せろ!」と快く承諾する久々知と竹谷、そして不服そうながらも「・・・分かった。」と頷く鉢屋。

各々がそれぞれの仕事に散った。

「これで少しは静かになるだろう。」
くくっ、と鴻が可笑しそうに苦笑を浮かべた。
「気を使わせちゃってごめんね・・・」
そう僕が謝ると「気なんか使ってねぇよ?雷蔵こそ俺たちに遠慮なんかすんなよ、なっ?」と、ゆるりと頭を撫でてくれた。
「もう少し汗を出し切ったら着替えような。それまで眠るか?」
鴻が僕の額に濡れた手拭いを押し当てる。
ひんやりとして気持ち良い。



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