01
ふわふわあまい
今日は市が出ると言う事で、休日なのを利用して皆で町へ出掛けた。
皆というのは勿論五年の連中だ。
女装の授業に必要な小間物を揃えに行こうと八左ヱ門が言い出し、ぞろぞろと赴く事になった。
そう言えば俺も、頬紅を買わなくちゃと思っていたんだっけ。
「ねぇ鴻、良かったら俺の頬紅見繕ってくれない?」
尾浜がへにゃりと笑い近江に振り向く。
各々が談笑に花咲かせながら町への道を行く中、尾浜と共に最後尾を歩いていた近江は「いいよ」と頷いた。
「じゃぁ、最初は化粧道具が売っている店を探そうか。」
近江が前方を歩く四人に声を掛ける。
「その後、私は簪が見たい。」
鉢屋も会話に加わる。
「僕は髪紐が欲しいな。普段使えるやつも。もう使い過ぎて切れちゃいそうなんだよね〜」
不破がちょいちょいと自身の結わえられている部分をつつく。
「なら私も。」と鉢屋が不破に同意する。
完璧に模す事を譲らない鉢屋は、日常で不破が持っている物と揃える。
「俺は紅が見たい。」「なぁなぁ!最後に茶屋に寄ろうぜ〜!!」と、それに続いて先頭に居た久々知と竹谷も振り向き加わる。
「八、当初の目的とズレている。」
鉢屋が振り向いて来た竹谷のおでこに、ずびしッ!と、でこぴんをする。
「痛てぇ!やったな三郎〜」
手をわきわきと動かし、鉢屋を捕まえようとする竹谷と、不破の背に隠れる鉢屋。
そして挟まれて「僕を巻き込まないでよ〜」と苦笑する不破。
「だったら俺、豆腐屋寄りたい…。」
ぼそりと要望を加える久々知に「それは個人行動でお願いします!!」と、鉢屋と竹谷がすかさず答える。
「今日も平和だね〜」
そんなやり取りを微笑ましく眺める尾浜と
「本当だな〜」
と、穏やかな表情の近江が頷く。
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