06
あぁ、もう思い上がった哀れな子でもいいから、今だけはこの人の大事な人だと勘違いさせてください。恋仲だと夢を見させて下さい。
どうにも抑えられない感情と共に、手放しで近江先輩に抱き付き自ら口付けを落とす。
顎、頬、瞼、額へと、唇を避けて。
ちゅっ、ちゅぅ。
「ははっ、くすぐったいけど…好いよ。」
近江先輩が耳元で囁いた。彼の声が最早性感帯を震わせるなど私も重症だ。完璧に溺れてしまっている。
ぞくりと這い上がってくる快楽に肩を震わせた。
そして、ゆっくりゆっくりと宛がわれた作り物が侵入してくる。
「…ッ!!!!!」
内を押し開き侵入してくる異物感と、それを押し返そうと下腹部に入る力が相反して痛みを伴う。
ぞわぞわぞわ、と背筋が凍りつき血の気が引いた。
「あぁッ!!やっ…!んぅ!」
夢中で先輩にしがみ付いた。冷や汗がぶわっと額に浮かぶ。
「辛いか?ゆっくり深呼吸してごらん?…そう。ゆっくりゆっくり、力を抜いて。」
言われるがままに深呼吸を繰り返す。先輩は微に入り細をうがって私を優先してくれる。
少しでも辛くないように、痛くないようにと。
「せん…ぱい、私、初めてが近江先輩で、ほんと…に、良かったです、…ッ。」
やっとの思いで感謝を伝える。
ようやっと受け入れられた時の、同調した達成感はきっと生涯忘れられないだろうと思う。
今の今まで奉仕してもらう一方で何一つ返せなかったけど、やっと応えられた瞬間だった。
二人見合わせて安堵の表情をした後、思わず零れた屈託のない笑顔。心が一つになった様な充足感。先輩は「頑張ったな。」と情愛の籠った口付けを瞼に落としてくれた。
それからはもう、競り上がる快楽に呑まれるように意識が朦朧とし、近江先輩に全てを預けて、縋って、溺れた。
貴方に縋って、声を嗄らせて
(―――幸福というものを、初めて知りました。)
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