05
「うん?ちゃんと最初に断りを入れておくよ。唇以外なら構わないよって。それでも唇にって話になったら・・・どうにか宥めるかな〜。」
背を撫でる手を、ぽんぽんと宥めるような一定の韻律に変えて答える鴻に、意地悪心と好奇心に負け「じゃぁ、私が頼んだらどうする?」と口にしてしまった。
ぴたり、と動かす手が止む。
“しまった“と思い、恐る恐る顔を上げると、きょとんとした鴻の瞳とぶつかる。
「誰かに奪われるのを心配しているのか?大丈夫、渡したりしないよ。」
ふっと柔らかく笑って、私の頬を撫でつけてくれた。
そうされたらもう口を噤むしかなくて、代わりにもう一度ぎゅうぅぅぅと抱きしめた。
きみは変わらない笑顔で
(―――やられた。誤魔化された。)
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