06




「我儘を、ご容赦下さい。」
そう言って深々と頭を下げた鴻は、そのまま雷蔵を突き飛ばし塀の外へと舞い上がった。
咄嗟に雷蔵を抱きとめた私と八、そこに駆け寄ってきた中在家先輩。
鴻の行く方向に顔を向けるのが精一杯だった勘右衛門と兵助。
駆け出そうとした善法寺先輩の腕を掴んで阻む食満先輩。
追おうとした七松先輩と潮江先輩は、鴻から手裏剣が投げられて足止めを食らい、唯一立花先輩だけは微動だにせず、じっと鴻の去った方向を見据えていた。


あの時、伝えていたら

(―――借りた面をまだ返していない。だから、絶対に帰って来い、鴻。)





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