※暴力表現 ※ガッシュ可哀相 ※病み麿 「いま、帰ってきたのだ。清麿。」 清麿からの返事はない。 お腹は空いてないか?ブリをとってきたのだ!と揚々に戦利品を掲げるも、清麿の目は虚を映して、そして微笑んだ。 「でていけ」 あまりにも綺麗に、あまりにも美しく微笑み言うものだから、ガッシュは一瞬息を飲んだ。後退りをするも、ガッシュは踏み止まる。「きよま、」「聞こえなかったのか?」精一杯搾り出した声すら、清麿は一静かに蹴し、「でていけって言っただろう?」と続けた。あまりの息苦しさに、ガッシュは立ちすくむ。部屋を出ないガッシュに、清麿は苛立ちを隠そうともせず頭を掻きむしりとうとう声を荒げた。 「耳でも聞こえ無くなったか?!いいから出てけよ!お前だって、もう俺に用なんてないだろう!!」 清麿は、失明したらしい。 何が理由かは詳しくは聞かされていない。だが、日々ガクンと下がっていく視力に怯える、パートナーの姿は一番近くで見つめていた。 そして先日、清麿はとうとう視力を失った。 その時の彼の目は、何もうつさないまま、絶望という言葉を具現化させたような、そんな色をしていた。 清麿は頭がいい。 だから、殻に篭った。 ガッシュと出会って間もない頃、誰にも相談もせず、顔も合わせなかったあの頃と同じ様に。誰も傷付けないように。 そしてガッシュはその優しさに気付いてしまっている。ガッシュだけじゃなく、周りだってもう気がついているのだ。しかし、そんな清麿に未だ根気強く付いているのは心のパートナーであり、親友であるガッシュと華だけとなってしまった。 暗い部屋の中、再び俯く彼をどうしてもまた外にだしたくて、けれどまた駄目で。 ガッシュは思わず目の前を潤ませる。零れた雫はあまりにも美し過ぎて、けれど盲目の清麿はやはり、舌打ちをうつだけだった。「ガッシュ」 呼ばれて、ガッシュは顔を上げる。感情の読めない声で、清麿はガッシュを呼んだ。呼ばれた事が嬉しくてつい清麿の座るベッドの足元まで行ったが、それは間違いだったのだと気がつくのは数秒後だ。 「お前は俺のために、何ができる?」 そう呟いたから、思わず心が動いてくれたのだと、勘違いしてしまったのだ。ガッシュは胸倉を捕まれながら、清麿の顔を信じられない思いで見つめた。 「じゃあ、ころしてくれよ」 何も見えない世界で、人の感情が何故か、強く見えるようになった。清麿は前にそう言って泣いていた。今の自分は彼にどう見えるのだろう。そう考えるが、直ぐに悲しくなって頭を振った。 「きよっまろ…!」 「なぁ、どうなんだよ?」 「………ッできぬ…出来るわけないであろう?!」 瞬間、持ち上げられていた身体が重量に従って床にたたき付けられる。痛みに呻きながら目を開けると、清麿の足が迫っていた。だが、避けられない。 「ッ――!!ぐ、う…!」 呼吸音で居場所を探しては、そこに向けて殴りつけては蹴り飛ばす。何も生まれぬ暴力だが、ガッシュにそれを拒む理由は無かった。そしてその衝動に駆られる清麿が、抑える理由も無かった。「なんで」清麿は時に虚に呟き、時に激情に駆られながら叫ぶ。「なんで」と、清麿が口にするたびガッシュの胸は張り裂けそうに痛むのである。 「なんで、おれなんだよ………!」 咆哮しながら、大粒の涙を流しガッシュを殴りつづける。痛い、だが、清麿はもっと痛いのだ、と。ガッシュはまた、泣いた。 孤独な狼と理不尽マスコット 幸せを呼ぶ金色は既に闇に飲まれ、彼に届くことは無かった。 (111115) こういうの書きやすい もっとガッシュ殴りたかった。嘘。ガッシュ愛でたいわ |