冷えた肌にぬくもりを


雨。

雨。

雨。


雨はキライ。


じめじめしててイヤになる。



「はあ…」



窓の外を見て今日、何度目かのため息をつく。


傘を忘れた日に限って雨が降るなんて。



教室にはもう私だけ。



もう一度外を見た。


雨の止む気配はない。



しかたない、濡れて帰ろうかな。



そう思って立ち上がろうとした時だった。





ガラガラカラ



「あれ?翼ちゃん?」


「御幸?」


御幸一也が教室に入ってきた。


整った容姿に強豪野球部の扇の要。


それは、まぁ、女の子たちも騒ぐわけで。


私には関係ないけれど。


「どうしたの?」


御幸が近づいてきて尋ねた。


「傘忘れたから
御幸は?」


「俺はこれ取りに来たの。」


そう言って見せたのはスコアブック。


キャプテンでキャッチャーって、やっぱり大変だと思う。


「大変だね。」


「まあね?
でも、好きだからやってるの。」



珍しく御幸が真剣な顔をした気がした。


いつもへらへらしてるイメージしかなかった。


ちょっと見直したかも。


そんなこと考えてると、


「はい。」


「ん?」


御幸が差し出して来たのは折り畳み傘。


御幸がここまで来るのに使っていたであろうその傘はまだ濡れていた。


「傘ないんだろ?
これ、使えよ。」


「いいよ。
そしたら御幸が濡れちゃうじゃん。」


「俺は男だからいいの」


「だめ。」



そんな攻防を続けてると御幸が突然、なにか思いついた顔をした。



「じゃあさ、傘貸してあげる代わりにお礼をちょうだい?」


「お礼?」



そう言って聞き返すと御幸が近づいてきた。


何がなんだかわからない私に御幸は顔を近づけ





















チュッ―――




















上唇に触れるだけの軽いキスをした。


まだ少し動けば唇が当たるくらいの至近距離で御幸は


「俺、好きな子以外にキスしたりしないから。」



と言い、傘をおいて私から離れてドアの方へ向かう。


「返事、ちょうだいね〜」


なんて言いながら御幸は教室を出ていった。



私はしばらくそこを動けなかった。






…やっぱり関係なくないかもしれない。




雨はキライ。


じめじめしててイヤになる。


でもたまには良いかもしれない。







冷えた肌にぬくもりを



――――――――――


あれ…

甘甘を書くつもりだったのに…

全然甘くない(/_;)












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