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※一歩を踏み出す勇気の続き
「倉持は元ヤンだからね〜。」
教室で楽しそうに話すあいつ。
一年の時からなんだかんだ一緒にいる友達。
“友達”
俺の立ち位置はそれ以上でもそれ以下でもない。
俺の中では、あいつは特別。
一年の時からずっと好きだった。
でも、あいつが好きなのは、
「ヒャハッ!お前ムカつく!」
俺の友達なわけで。
しかも、2人は両想い。
ははっ…
笑うにわらえねぇ。
「御幸くんのこと、ずっと好きでした!私と付き合ってください。」
数分前、知らない女子にコクられた。
もちろん答えは、
「ごめん。」
しかない。
こうやってコクられることは、珍しくない。
でも、やっぱり好きなやつにコクられないと意味がない。
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放課後、教室でため息をつくあいつを見つけた。
…なんでため息をついたかは、わかっている。
さっさとコクっちまえばいいのに。
…そーすれば、この気持ちにも諦めがつくかもしれないのに。
まただ…
悲しそうな顔をした…
たまらなくなり、話しかけた。
「佐藤はさぁ、倉持のこと好きなんじゃねぇの?」
「はっ?!そ、そんなわけ、ないじゃん!」
動揺しすぎだろ…完全に図星じゃねぇか。
はっはっはっ!と笑ってやる。
…心は笑ってないのに。
で、本題。
「…なんで告白しねぇの?」
「だって…フラれるのわかってるのに告白なんてできないじゃん。」
フラれるわけねぇじゃん。
思わずため息が出た。
「なんでフラれるってわかんの?」
そう聞くと、意外な答えがかえって来た。
“私には勇気がないだけだけどね…”
佐藤は、弱々しく微笑んだ。
…こんなこと言われたら背中押してやるしかねぇじゃん。
お前はもっと自信持てばいい。
…俺みたいに伝えられないまま終わるなよ。
「っ!御幸!ありがとう!!」
佐藤は教室を飛び出して行った。
「ばーか。」
気づかないあいつも、何もできない自分も。
けれども想いは届かない
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