意識しちゃってください


「あっ、哲さん!」

休み時間。
移動教室の途中で哲さんを見つけた。

こんなことはなかなかない。
1年生と3年生の教室は離れているため、校内で顔を会わせることは難しいのだ。
…今日はいいことがあるかもしれない。

「佐藤。移動か?」

哲さんはいつもかっこいい。

「はい。哲さんもですか?」

だからファンも多い。

「あぁ。」

ほら、今だって。
女の子がみんな哲さんを見ている。

「がんばってくださいね!」

だから私なんかが適うわけないのは、わかっている。
「ありがとう。
佐藤もな。」

だけど、想うだけならいいよね?

「はい!」


_______


放課後。
練習が終わった。

夏大が近いため、いつもより練習も長かった。
マネージャーも結構大変だ。

「よし。」

部室の鍵も閉めたし…
帰ろう。

そう考えていた時だった。


「佐藤?」

「あっ!哲さん!
お疲れ様です。」

私は急いで頭を下げた。
予想していなかったことに、焦ってしまう。

「佐藤も、お疲れ。
これから帰るのか?」

「はい。」

そう答えると哲さんは少し考えると

「送っていく」

と言った。

「えっ?
そんな、大丈夫ですよ!」

「いや、もう暗いし…
俺が送っていきたいんだ。
いやか?」

「いやじゃないです!」

むしろめちゃくちゃ嬉しいんですけど…

哲さんは少し微笑むと

送る

と言って歩き出した。



暗い夜道を並んで歩く。

私はさっきからドキドキしっぱなしなんだけど…


「佐藤…」

「はい?!」


しまった。
声が裏返った…

しかし哲さんは気にすることなく話しはじめた。

「最近、佐藤のことを意識してしまうんだが…」

えっ?
それって…
期待していいんだろうか?

「意識されるのは…
イヤか?」

「イヤじゃないです!
意識しちゃってください!
あっ、変ですよね…」

恥ずかしくてつい下を向いてしまった。

「佐藤」

名前を呼ばれ、恐る恐る顔をあげると



___あっ
笑った…



「これからも見ていてもいいか?」

「はいっ!」

嬉しくて私も哲さんに笑顔を返した。

まだまだ始まったばかりの恋だけど…
あなたの隣に適うような人になりたいです。



意識しちゃってください










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