・夜の学園を生徒会で見回りする話。
・臆病なルルーシュと、変態スザク。
・裏あり。
忘れ物を取りに、夜一人で教室にやってきた生徒がいたの…。
こんな時間に校舎内をうろついているところを見つかったら怒られると思って、明かりもつけずに教室の中を歩いて行ったんだって。
手探りでようやく自分の席までたどりついた時、ふと窓の外を見たら……。
なんとそこには、大きな白い影がああああああああああ
「「きゃあああああああああ!!」」
おばけなんてないさ「会長…。もう夏も終わったんですから、そういう類の話は遠慮してもらえませんか?みんな怖がってるじゃないですか」
先頭を歩いていたルルーシュが、呆れ顔で後ろを振り返った。
アッシュフォード学園の校舎。
真夜中の学校の廊下に、生徒会メンバーはいた。
「そ、そうだよミレイちゃん。こんな時にやめてよ…」
「冗談でも怖いですよぅ…」
先程悲鳴をあげたニーナとシャーリーが、手に持った懐中電灯を強く握りしめる。
電気のついていない廊下は真っ暗で、その小さな明かりだけが頼りだった。
「あら。冗談じゃないってば。謎の白い影目撃情報は、ほかにもたくさんあるんだから。低く唸る声がしたとか、ものすごく高速で移動した、とか!もう絶対に幽霊よ、幽霊!」
ふふ、とミレイは楽しそうに笑った。
「だからって、わざわざこうして俺たちを巻き込んでまで見物に来なくても…」
はぁ、とルルーシュはため息をつく。
今夜、生徒会でセキュリティの確認に見回りにいくわよ!とミレイが突然言い出した時から、嫌な予感はしていた。
要するに、深夜に現れるというその白い影の正体が知りたかったのだろう。
思いつきで行動するなんとも会長らしい企画だ、とルルーシュは心の中で思った。
「安心してください会長!幽霊が出てきた時は、俺が守りますからっ!」
「ありがとうリヴァル。…でも、ぜーんぜん現れなくって、つまんなーい!」
確かに、もうかれこれ1時間ほど歩きまわっているが、それらしい影はまったく見えなかった。
いい加減、ミレイが痺れを切らし始めている。
「まあ…こんなにぞろぞろ大人数で探しにくれば、出てくるモンも出てこれないんじゃないッスか?」
「ねぇミレイちゃん、もう帰ろうよ?」
「うーん、そうねぇ。なーんか、そろそろ飽きてきたしぃ…?」
ようやく季節外れの肝試しがお開きの流れになって、一同はほっと胸を撫で下ろす。
…が、
「よって、残りの見回りは副会長に一任する!」
「はぁ!?」
思いがけない展開に、ルルーシュは思わず懐中電灯をゴトリと落とす。
「何言い出すんですか会長!俺に丸投げしないで下さいよ…!」
「いいじゃない別に。あとはこの棟だけなんだし。白い影の正体、わかったら後で教えてね!」
それじゃ、検討を祈る!
そう言って、ミレイは黒い闇の中へと消えていった。
誰か残ってくれるだろうと期待して他のメンバーを見やるも、みんな眠くて早く帰りたいからか、ごめんねとバツの悪そうな顔をして帰って行ってしまった。
ルルーシュは、一人ぽつんとその場に取り残される。
……いや、もう一人だけ残っていた。
「スザク…。お前は帰らなかったのか?」
今までずっと静かだったスザクが残っていて、意外そうな声を上げる。
てっきり、みんなと一緒に帰ってしまったものだと思っていたのだ。
「ルルーシュだけ残して、帰るわけないだろ」
スザクがにっこりと微笑む。
落とした懐中電灯を拾い上げ、はい、とルルーシュに渡す。
ルルーシュはスザクが一緒に残ってくれたことに、安堵の息を漏らした。
二人で、誰もいない廊下を並んで歩く。
教室の中も覗いてみるが、特にこれといって変わった様子もなかった。
そして何も起きないまま、一通り回り終えてしまう。
「…結局いなかったね、幽霊」
「当たり前だ。大体、幽霊だなんて非科学的なものが存在するわけがないだろう。会長は面白いこと好きだから、すぐこういう噂にも飛びつく。振り回される俺たちは、いい迷惑だよ」
「あはは」
階段を下りて、出口へと向かう。
カツン、カツンと、静まり返った校舎に2つの足音が交互に鳴り響く。
ちょうど2階のところに差し当ったところで、突然ルルーシュが立ち止まった。
それに気付いたスザクも足を止め、後ろを振り向く。
「どうしたの、ルルーシュ?」
「その…」
「?」
ルルーシュが、恥ずかしそうに俯いた。
「トイレに、行きたいんだが…」
「え?あ、うん」
ちょうど、トイレはこの階段から近くのところにある。
角を曲がって少し歩けば、すぐ着く距離だった。
「………………」
しかし、ルルーシュはなかなかその場所から動こうとはしなかった。
本当はトイレに行きたくてそわそわしているが、何か迷っているようだった。
「ルルーシュ…。もしかして、一人で行くのが怖いの?」
「……っ!」
ビク、とルルーシュの体が震える。
どうやら、強がってはいたが、ルルーシュも本当は幽霊が怖かったようだ。
「な…っ違う、俺は……!」
「はいはい。非科学的なものは信じないんでしょ?一緒について行ってあげるから、早く行ってきちゃおうよ」
「〜〜…っ」
それ以上反論することもできなくて、ルルーシュは腕を引っ張って歩き出すスザクの後に黙ってついて行く。
トイレの扉を開けると、昼間とは違って薄暗く、なんとも気味の悪い雰囲気が漂っていた。
それでも奥の小窓から外の明かりがぼんやりと入ってきているので、目が慣れればまったく見えないというわけではなかった。
「電気、つける?」
「…いや、下手につけると目立つから、このままでいい。当直の先生が来て見つかったら、後で色々と面倒だし」
生徒だけで見回りなんて、許可が下りるわけがない。
なので、ミレイの独断でこっそり潜入している状態に近かった。
懐中電灯を手洗い場の上に置いて、なんとかその明かりだけで壁際の便器の方まで歩く。
しかし、
「…………スザク」
「ん?何、ルルーシュ」
爽やかな笑顔を浮かべるスザクとは逆に、ルルーシュはぴくぴくと眉間に皺を寄せる。
「隣に立たれると、気が散って何もできないんだが…」
スザクは横から覗きこむかのように、ルルーシュの隣に立っていた。
おかげでルルーシュはまだベルトにも手をかけられないでいた。
「あ、僕のことは気にしないで。ちゃんと、そばについててあげるからさ」
「だからって、こんなところまでついて来るな!お前は、入り口の方に立っていてくれるだけでいいんだっ」
なんとかスザクをドアの前まで追いやって、ようやくルルーシュはゆっくりと用を足すことができる。
普段、トイレで一緒になった奴に隣から覗かれても何とも思わないのに、スザクにあんな風にじっと見つめられると、なんだか緊張してドキドキしてしまう。
排尿を終え、ズボンのチャックを上げようとすると、ふと、視界の端で何かが動くのが見えた。
スザクが立っているのとは反対にある、小さな窓の方からだった。
「え……?」
思わず手が止まり、そちらの方を向く。
ルルーシュが恐る恐る、ちらりと見ると。
何もなかった窓の外に、白い影がぼんやりと映っていた。
「ほわあああああぁぁぁっ!?」
ルルーシュは素っ頓狂な叫び声を上げて、スザクに勢いよく抱きついた。
「ルルーシュ?どうしたの?」
「すすすすスザク…!か、影が…っ」
「影?」
「あそこに今、白い影が出たんだ!」
ルルーシュがスザクの肩に顔をぎゅっとくっつけたまま、わなわなと窓の方を指差した。
「白い影なんていないよ?」
スザクがそう言うのでビクビクしながら後ろを振り返ってみると、すでにそこには何もいなかった。
「嘘だ…っ。俺は確かに、見たんだ!」
「何かと見間違えたんじゃない?誰か人が通ったとか」
「でも、ここは2階だぞ!?人だってこんな時間にいるわけない!」
ルルーシュは、すっかり気が動転してしまっている。
ズボンもしっかり穿かぬままスザクのところまで駆け寄ってきたので、ずるずるとずり落ちかけていた。
「とりあえず落ち着いてよ。…パンツ、丸見えだよ?」
薄明かりの中で、ルルーシュの白い肌の上に、黒い下着が浮き立っていた。
「それとも、こんなところで誘ってるの?」
「……っ!ちが…」
するりと、ルルーシュの下着の中に指を滑り込ませる。
尻の窪みをなぞってやれば、スザクの首にしがみついていたルルーシュの腰が、ビクンと跳ねた。
「す、スザク…やめ……っ」
「やめて欲しいの?こんなに感じてるくせに?」
いつの間にか尻から前へと手を移動させていたスザクの手が、ルルーシュの反応しかけてる陰部を捉えた。
「あ…っ」
「僕もルルーシュにそんな格好で抱きつかれたせいで、大きくなっちゃったよ」
ほら、と自身の性器も取り出し、ルルーシュのそれに擦り合わせる。
手の中で一緒に上下に扱けば、くちゅくちゅといやらしい音が聞こえた。
「す…ざく…っ」
はぁはぁと息を乱しながら、ルルーシュはぎゅっと目を瞑って快楽に耐える。
そんなルルーシュを見て、スザクは満足そうに微笑んだ。
「やっぱり、我慢できそうにないや…。今、ここでしよう」
くるりとルルーシュの体を回転させて、そのまま後ろを向かせる。
トイレの壁に手をついて、腰だけスザクの前に突き出す体勢にさせられる。
「ちょ、スザク…!?何を…っ」
「何って、…ナニだけど」
「……っ!」
下着を一気に太腿のあたりまで下ろされ、ずぶりとスザクの硬いものが挿入される。
あっという間に奥まで押し込まれ、間髪いれずにバックを激しく攻められる。
「や…、あぁ…っ」
「はぁ…ルルーシュ……っ」
ズン、ズン、と前後にピストンする。
腰をスザクの両手でしっかり押さえられてしまっていて、ルルーシュは身を捩ることさえもできなかった。
「スザク…!あぁ…っん、幽霊が、見てる…のに、」
「そんなの、見せつけてやればいいよ。僕たちの間に割り込む隙なんてない、ってね」
後ろを突き上げながら前も握ってやると、ルルーシュは更に甘い声を漏らした。
前後から同時に快感を与えられ、情欲の嵐に翻弄する。
「それに、こうしてるともう怖くないだろ?幽霊のことなんか、すぐに忘れさせてあげるよ…」
「あぁ…っすざく、すざく…!」
ルルーシュが、うわ言のようにスザクの名前を呼ぶ。
それに合わせて、スザクの腰の動きも速くなっていく。
こんな状況なのに、感じて、気持ち良くて。
ルルーシュはいつしか白い影のことなど頭から消えて、夢中になってスザクを求めるようになっていた。
* * *「あれぇ〜?スザク君、今日はすごく調子が良さそうだねぇ。何か、いいことあったのかなぁ?」
「あ、わかります?ロイドさん」
特派のラボに現れたスザクの隣に、ロイドがすかさず近づいて来る。
スザクはにこにこと満面の笑みを浮かべていて、誰が見ても機嫌がいいと窺えるほど態度が分かりやすかった。
「それってもしかして、最近ランスロットの夜間実験をアッシュフォード学園の近くでやらせてくれって言ったのと、関係があるのかい?」
ロイドが詮索するように、ニヤニヤと笑ってスザクを見つめる。
「あ、それなんですけど。その件はうまくいったので、もう今まで通りブリタニア軍の演習場に場所を戻してもらって結構です」
「…君、なんだか上司を利用してない?」
「いやだなぁ、気のせいですよ」
ははは、と笑ってスザクはランスロットのパイロット席へと乗り込む。
「ちょっとロイドさん!いつまで油売ってるんですかっ」
「いてて…。セシル君、そのすぐ手を出す癖、止めた方がいいよ」
「ロイドさんがちゃんと仕事してくれるなら、すぐに止めます!」
耳につけたインカムから、二人の賑やかな会話が流れてくる。
そして、セシルはスザクのメンテナンスへと取りかかる。
『スザク君、今日の調子はどう?』
『はい、さっきロイドさんとも話してたんですけど、絶好調です!』
『そう?ならいいんだけど…。ここ連日、夜遅くまでナイトメアで隠密行動の訓練ばかりしてたから、疲れてるんじゃないかと思って。昨日なんか、ランスロットの機体を校舎の周りまで運んでくれっていうメールが来たきり全然連絡がなかったから、心配してたのよ?学校で、何かあったんじゃないかって』
「まぁ…何かあったかと言えば、ありましたね」
スザクが、通信を切って一人ぼそりと呟いた。
『いくらシュナイゼル殿下の後ろ盾があるとはいえ、無許可で何度もナイトメアの演習を行うなんて…。いつ見つかるんじゃないかと私、すごく不安だったのよ?』
「結構、目撃されてたみたいですけどね。…噂も流れて、計算通りだったな」
そう。わざと目立つように、アッシュフォード学園の周りをランスロットで飛び回ったのだから。
つまり。
白い影の正体は…。
『ちょっとスザク君!聞いてるの!?』
『あ、はい。すみません…!』
再び通信をオンにして、慌てて返事をする。
それからいくつかデータを取って、メンテナンスは終了した。
「まさか、あんなにうまくルルーシュとエッチができるなんて」
昨日の夜の出来事を思い出し、スザクは思わず口元がニヤける。
「おばけを怖がるルルーシュ、可愛かったなぁ…」
えへへ、と幸せそうな笑顔でランスロットから下りるスザクを、ロイドはまるですべてを知っているかのような目で眺めていた。
「……ま。僕はパーツが元気なら、それでいいんだけどね…」
* * *その頃、アッシュフォード学園では。
「会長ぉ!俺、見たんですよ、白い影…!」
「リヴァル、どうしたの?落ち着いて話しなさいってば」
「お…俺、昨日やっぱりルルーシュが心配になって、あの後様子を見に戻ったんですけど…。そしたら、白い影が乗り物に乗って、校舎の周りをぐるぐるぐるぐる回ってたんですよおおおおお!」
「は?乗り物に…?幽霊じゃないの?」
「あれは幽霊じゃないッスよ!あれはきっと、宇宙人です…っ」
「…宇宙、人?」
「それに俺、聞いちゃったんですよ。2階のトイレの方から、変な呻き声がするのを…!」
「ぶっ…!!」
「あれ、ルル。どうしたのいきなり紅茶なんか吹き出して」
「あああああルルーシュううう!お前、よく無事だったなぁ!?俺はてっきり、宇宙人に攫われたのかと思ったぜ…!」
「…リヴァル。宇宙人とかそんな非科学的なものは、この世に存在しない!」
「えぇ〜?俺が見たところ、すんげー科学的だったぜ?」
「多分、夢でも見たんじゃないか?俺はそんなもの見なかったし」
「あっ!ルルーシュ〜。もしかして昨日、あれから見回りサボったんじゃないでしょうねぇ?」
「ち、違いますよ」
「えー、なんか怪しーい」
「とにかく、俺は何も知りませんから…!」
もう、おばけなんて大嫌いだ!
end.
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