・スザ誕。
・裏あり。
・女装あり。
・変態スザクあり。
「あら、スザク。遅かったじゃなーい」
「あ、会長…」
生徒会室の前の廊下を歩いていると、前方から生徒会長の声が聞こえた。
カレンとシャーリーも一緒みたいだ。
「私たちこれからシャーリーを寮まで送ってくるから、あとのことは頼んだわよスザク」
「え?シャーリー、どうかしたんですか?」
「……鼻血を出して倒れたのよ」
会長の代わりに、カレンが呆れた声で答える。
シャーリーの方を見れば、鼻にありったけのティッシュを詰められていて。
気絶をしているのか、二人の肩に半分引き摺られるようにもたれかかっていた。
「あの…僕、手伝いましょうか。女性だけじゃ…」
「平気よ、こっちにはカレンがいるしね」
「…ちょっと。それどういう意味ですか会長」
笑顔の会長に、いつもより低めの声でカレンが唸った。
カレンは体が弱いらしいから、力仕事には向いてないと思ったんだけど。
…………。
涼しい顔でシャーリーを担いでいるところを見ると、どうやら心配はなさそうだった。
「それにしても、シャーリーはどうして急に鼻血なんか…?」
僕がなんとなく疑問を口にすると、突然、カレンが勢いよく吹き出した。
「ご、ごめんなさい。何でもないわ……ぷぷっ」
「?」
肩を小刻みに震わせて、必死で笑いを堪えているようだった。
僕は何が何だかわからず、改めて視線を会長へと戻す。
しかし、会長はニヤニヤと笑っているだけで、何も教えてはくれなかった。
…何故だろう。
さっきから、僕一人だけ疎外されているような気が。
ひょっとして仲間はずれにされているのだろうか、とちょっと落ち込む。
それから、会長はクスッと小さく笑って。
「私からのプレゼント、絶対気に入るわよ」
僕の耳にそう囁いて、そのままいなくなってしまった。
「えー、と…」
一人ぽつんと、廊下に立ち尽くす。
結局、なにひとつ状況がわからないままだ。
むしろ聞けば聞くほど釈然としないのは、何故なんだろうか。
それに、最後の言葉は一体なんだったんだろう。
プレゼントがどうとか言っていたような。
……。
とりあえず、中に入ることにしよう。
いつまでもここで考えていたって、仕方ないよね。
そう思って、僕は生徒会室の扉を開けた。
そして、僕は。
すぐに、そのすべてを理解することになる。
副会長はメイド様!「お帰りなさいませ、御主人様」
メイドさんが、いた。
いや。正確にはメイドの格好をした、ルルーシュが。
ひざ丈より短い黒のスカートと、頭にはレースのカチューシャ。
気品のある白いフリルのエプロンは、腰の後ろで大きなリボンを結んでいて。
両手に丸いステンレス製のトレイを抱え、恭しくおじぎをして僕の目の前に立っていた。
「…るるー、しゅ?」
思わず、声が出た。
僕が名前を呼ぶと、ルルーシュは勢いよく顔を上げる。
「す、スザク!?」
目が合うと、ルルーシュは顔を赤らめて。
それから、ぱっと恥ずかしそうに目を逸らした。
「て…てっきり、会長たちかと……」
ぼそぼそと呟いて、ルルーシュはそのまま俯いてしまう。
なに、この可愛い生き物。
すごく犯したいんですけど。
「これは、その…。会長がメイドの日をやるって言い出して、いきなりこんな服着せられたんだ。け、決して俺の趣味というわけでは……」
ルルーシュが、慌てた様子で事の顛末を語る。
女装な上コスプレという、この異質な状況の誤解を解きたいのだろう。
まぁ、やっぱりというか予想通りというか。
無理矢理でもない限り、ルルーシュがこんな格好してくれるはずないもんね。
「そしたら、何故か急にシャーリーが鼻血を出して倒れて…」
……シャーリー、君の気持ちよくわかるよ。
「しばらく一人でメイドの練習をしてろって言われたから、それで…」
そこに、ちょうど僕が現れたということか。
危なかった。
もし遅れていたら、僕以外の人間が先に入ってきていた可能性もあったんだ。
ルルーシュのこんな姿、他の男に見られたら間違いなく襲われてる。
それだけは絶対に、許さない!
「…………、」
それにしても、ルルーシュのメイド姿。
すごく、情欲を駆り立てられる……っていうか。
オーバーニーのソックスを履いた太腿がスカートの裾からちらりと見え、思わず生唾を呑みこむ。
メイド服なんて普段、咲世子さんで見慣れているはずなのに。
やっぱり本物とコスプレでは、いやらしさが違うのかな。
ルルーシュだからっていうのもあるんだろうけど。
そもそも、ルルーシュにこの格好は反則だよね。
日本男児たるもの、メイド服に興奮しない者などいない!
もし、自分の家にこんなメイドさんがいたらどうしよう。
御主人様の好きなようにしてもいいってことだよね。
それってつまり、あんなことやそんなことをルルーシュに……。
あぁ、どうしよう。
想像しただけで興奮してきちゃったよ!
「……お前、何さっきから人のことじろじろ見てるんだ」
「わっ!」
僕が悶々と悩んでいると、ルルーシュが怪訝そうな顔で覗き込んできた。
顔を近づけられて、鼓動が一気に加速する。
しっとりとした唇が目の前にあって、すぐにでもキスできそうな距離だった。
「る、ルルーシュ、その。今、自分の理性と本能が戦ってる、とこで…」
ていうかもう。
すでに理性が、負けを認めているというか。
僕の下半身はすでに半起ち状態で、完全なる敗北宣言をしているのであった。
理性のばか!せめてもうちょっと頑張ってくれてもいいじゃないか…!
「ふうん……」
僕の体の異常に気付いたルルーシュが、一瞥する。
視線が下半身に向けられているのを感じて、僕は耐えきれず顔を背けた。
「る、ルルーシュ。そんな風に見られたら、僕は――」
君を、襲ってしまうよ。
そう、言おうとしたのに。
「――んっ…」
柔らかい唇が、僕の言葉を塞いだ。
しっとりと濡れた感触が僕の思考を飲み込み、一瞬、時が止まる。
ルルーシュは軽く味わうように唇を啄ばんだあと。
ぬるりと、僕の舌に自分のものを絡ませ始めた。
ぴちゃぴちゃと唾液の混ざる水音と、その合間に聞こえる二人分の吐息。
自分たち以外誰もいないこの広い部屋の中で、それだけが耳に届く。
「あっ、ルルー…シュ!」
やがて、ルルーシュの太腿が僕の足の間に差し込まれる。
股間をぐいぐいと刺激され、更には上からは激しいディープキス。
体を離された頃には、僕は。
「〜〜…っ、」
フル勃起、してしまっていた。
僕はそんな自分が情けなくて、うっすらと目に涙を浮かべる。
「別に、我慢することないだろう。…今日はお前の、特別な日なんだから」
「え?」
ルルーシュが、テーブルの上に腰かける。
その口元には、艶っぽい笑みを浮かべていた。
「特別な、日?」
意味が分からず、僕は瞳を大きくする。
今日は、土曜日だけど。
ほかに何かあったっけ。
「……お前な。今日は何月何日だ」
「えと、7月10日…………あっ!」
そうか。
今日は、僕の。
「誕生日おめでとう、スザク」
大好きな人の声。
君に祝福してもらえるだけで、僕は生まれてきてよかったと思う。
「プレゼント用意してたんだけど、会長のドタバタのせいで持って来れなくて……。とりあえず今は、その。さっきの続きをするってことで、いいか?」
「え…」
続き。
って、ことは。
「メイド服のルルーシュに、あんなことやそんなことしてもいいってこと!?」
「……あんなことやそんなことって、どんなことだ」
鼻息を荒くする僕とは正反対に、ルルーシュは呆れたようにため息をついた。
「まぁ、でも。お望みとあれば……」
それから、ルルーシュはテーブルの上で優雅に足を組んで。
「――ご奉仕してやるよ。御主人様」
挑発的な瞳で、僕を悩殺する。
組んだ足からスカートが零れ、滑らかな太腿が露になった。
…あ!今、パンツ見えた!
ふと、さっきの会長の言葉が頭をよぎる。
『私からのプレゼント、絶対気に入るわよ』
……会長。
このご恩は一生、忘れません!!
元皇子で、世界一気高いメイド様。
せめて、今日くらい。
――君を独り占めしても、いいよね?
end.
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