ジローの奔放さが、時々俺を苦しめる。
お前は魚だ。そうやって自由に動き回って、いつか、遠くに泳いでいってしまう。広い海の彼方まで。
「俺が魚なら、きっと跡部んちのプールで満足だよ」
そう言ってジローは、真っ白なシーツの波の上で、クロールしながら笑った。
『だって広ぇじゃん?』、屈託なく笑うから、俺はゆっくりその上に覆い被さる。
「ん、くるしいよ、」
長いキスの合間で、くすぐったそうに口にするジローの頭を抱いて、もう一度。
呼吸を求めて赤く上気する顔に、潤む瞳。
そうやって、俺の水槽の中、俺の近くで、俺を、求めて、?
(永久に、)
そしたら、酸素をくれてやる。
「跡部、だいじょうぶ?」
『どこか痛い?』、不安そうに尋ねる頬に、一滴、落ちる雫は、俺の瞳から。
呼吸ができないのは、どうやら俺らしい。
「うへ、しょっぺぇ、」
ジローが俺の両頬を両手で挟んで、引き寄せる。ペロリと舌がそこをなぞった。
ばか、と笑って、もう一度キスをした。
そして気付く、ジローも少し、泣いていた。
二人分の涙の海。
そこで俺達は愛を寄せ合って、ずっと、泳いでる。ただただ、自由に。
(20131028)