ねぇ跡部。
眠り姫ってさぁ、王子様のキスで目覚めて、二人で幸せに暮らしました、で終わるでしょう?
でもそれは改訂されたハッピーエンドで、本当は王子様は、森の中で眠る眠り姫に一目惚れして、棺ごとお城に連れて帰っちゃったんだって。




「なんだか跡部みたいだね」


だって、跡部ならしちゃいそうだもん。
クスクス笑ってみせたら、跡部は嫌そうに顔を歪めて、頬杖ついた。


「随分な喩えだな、アーン?」
「だって、そうでしょ?世界中のものなんでも手に入ると思ってんでしょ」
「当たり前だ」
「ほらぁー」



でもね、でもさ。
たとえ棺の中でも、帰ってただのコレクションにされちゃっても?
俺、お姫様が羨ましいと思うよ。
だって跡部に見初められるんだから。虜にしてしまえるんだから。


 (だったらたとえ、一生そのまま目覚めなくても、俺、)




「悪いが俺様はそこら辺に落ちてるモノを持って帰るような拾い食いみたいなことはしない」
「コラコラ、モノじゃないから、お姫様ぁー」
「ただし試合時間になってもコートにいないどっかの寝坊野郎は拾いに行くがな」


樺地が、と言葉尻に付け加えて、プイッと顔を反らされた。
あ、照れてる、坊ちゃんが。めずらしい。恥ずかしいならそんな喩え言葉出さなきゃいいのに。


 (でもめちゃくちゃうれC、デス。)


「それってさ、」
「…アーン?」
「イチバンってこと?」



俺は立派な棺にも入ってやいないけど。
王子様は柄じゃないほど横暴だけど。
(そんな二人だけどね)
きっと二人は末永く幸せに暮らすのでした。




でもどうせなら、やっぱりキスで目覚めたいかも、ねぇ王子様。




(20110505)
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