「おい、放課後付き合え。」



お付き合いならとっくにしてますが?、なんて洒落たジョークはあっさりかわされて、リムジンに押し込められた。
これから自分がどこに行くのか、はたまた何をするのかされるのか、一つもわからぬまま。

ただ一つ知ってるのは、今日が特別な日だ、ってこと。




「俺どうなっちゃうの?」
「黙って待ってろ。支度が終わったら迎えにくる」


跡部家に連れて来られ、その一室に制服のまま置き去りにされる。
支度ってなんだ。
とりあえず慌てふためいたところで状況は変わらないわけだし、その教え通り黙って待つとするか。なんと気の利いたことに、部屋には美味しそうなカップケーキとお紅茶、テレビゲームまであるのだから。
俺は勝手知ったる態度で部屋を存分に占拠し、跡部を待った。




「待たせたな」
「…ん、あとべーっ!」
「行くぞ」
「え、どこに…、あ、あっ待って!せーぶ!せーぶー!」



暫くして帰ってきた跡部に連れられ、ゲームのセーブもさせてもらえぬまま、今度は颯爽と部屋から連れ出された。

跡部は、ぴしっとした銀のスーツを着ていた。中に着た黒いワイシャツの襟からは、ゴールドのネックレスが覗いてる。益々年相応に見えない身だしなみだ。ちょーカッコEんだけど。ドキドキする。


足早に広い廊下を歩ききり、デカイ扉の一室の前で足は止まった。(前々から広い豪邸だとは思ってきたが、ここまできたら城だ)


「入れ」


今日の跡部様は特に命令口調が多いようだ。
わけもわからぬまま、とりあえず目の前の扉をグッと押してみる。

目の前に広がったのは、なんて煌びやかで、色鮮やかな。


(う、わあ…)



「行くぞ」
「…あ、はい」


華やかに着飾った人々、それが囲む沢山のテーブルに、口に入れるどころか目にも入れたこともない豪華なご馳走。なんだ、この英国のパーティーみたいな風景は。実際日系人ではない人も何人かいる。

ここまで見たら、いくら頭が悪い俺にだって、この場がどのような場所か、皆目見当もつくってなもんで。
そう、つまり、氷帝学園の跡部様はそんな規模では留まり切らず、世界の跡部様であったと、そういうこと。それはそれは、盛大にバースデーパーティーが行われるほどに。


「あのぉ、」
「なんだよ」
「オレ、は、ここで何をしてれば…」


歩いていれば、次々に「おめでとうございます」と祝杯の声がかかる、自分の先頭を歩くお方。
打って変わって俺はなんだろう。そんな人の後ろをフラフラとついて歩いて、挙げ句格好も制服のままだし、ちなみにネクタイには今日昼間食べたオムライスのケチャップが染みにまでなっている。さすがの俺も自分の存在の浮きっぷりも、不似合いさもわかってるつもりだ。


「お前が?何を?」
「…あい」
「なんもしてなくていんだよ、そこら辺で飯でも食ってろ」


 ケチャップ飛ばしてな、。
そう言って跡部が一つのテーブルに俺を置いて、知らない大人達の輪に入って行ってしまった。

ぽかん、と。開いた口が塞がらないなんていうのは、まさにこのことなんだろうな、って。

(跡部って、自由だな…知ってたけど。)


つーかケチャップばれてたのかよ!
はっずかC!







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