俺達は同じおとこ、で。
性別って血液型とか星座より明確。人間の性格はおとことおんなの二種類でほぼ分けれるんだ。(そりゃ中には中性的な人もいるけど)
おとこにはおとこにしかわからないことがあり、おんなにはおんなにしかわからないこともあるだろう。それらを理解し合えるから同性は同類で、一番共存関係に近い。(と、俺は思う)


「アッ…タ、ちょ、まっ待って、」


おとこは汚い。汚いと思ったことは簡単に言う。だから性行為は男女のそれより遥かに生々しく、痛々しく、他人に見せれたモノじゃない(いや見せないけど)。
それでも萎えず衰えず嘔吐せず続けられるのもおとこの性、か。いやこれはもう惚れた欲目みたいなものか。


「むりッ…だめだ、ギブっ」
「…っはぁ、ざけんな…」
「だって、いやだ、すっげぇ…イタイ……」


ちっ、と後ろの跡部がちいさく舌打ちをした。それは俺のだらしない弱音にか、一向に跡部の指を咥えない俺の後孔にか。どっちみち俺か。

おとこのからだは受け入れるように作られちゃいない。ムリヤリ濡らしてムリヤリ押し広げてムリヤリぶっこんで、またムリヤリ押し広げる。でもそんなムリクリ俺にはそれこそムリで。



「はあ……」


次にちいさな溜め息が聞こえた。甘く漏れて聞こえたそれは、それでも確実に呆れを含んでる。やだ、嫌われるのはっ…
(もっとやだ…っ)


「な、なめる」
「…あ?」
「、おれ、あとべの、なめるから。おねがい、」


嫌いにならないで。、





(俺と彼はおとこで、それは同性で同愛という深い深い絆で結ばれており、
でもそれはふとした瞬間、簡単ないざこざでほどけてしまう)




「……ふざけんな」


跡部の体温が離れる。
ぶわ、とさみしさが込み上げてきた。仰向けに枕を抱えていた体勢を起きあがらせ、跡部を振り返る。ベッドサイドに腰かけながら、こちらに背を向けて脱ぎ捨てたシャツを拾っていた。
その焼けた肌が愛おしい。



「…っ怒ったの…?」
「怒ってねぇ」
「萎えたの…?」
「黙れ」
「俺のこと、嫌になったの?」
「なれたらとっくになってんだよっ!」




涙が止まらない。

俺はどんなに痛くされたって、跡部を嫌いになんかならない。なれっこない。
こんなに苦労したって、俺はおんなにうまれたかった、とは微塵も思わない。それはおとこにうまれた俺が跡部に愛される確率の方が遥かに低くて、特別だから。それは一つの奇跡だから、二つの愛が重なったという。



「好きだよ、跡部」
「しね」



そう言って跡部は俺を抱き締めてキスをする。言葉と行動が真逆で、まるで正反対な愛情表現だ。それがとても彼らしいのだ。俺はだからダイスキと呟きながら背中に爪を立てる。お返しだ。










「ねぇ跡部、何か昔話して…」
「…ムード読め、チビ」
「む、ムードどころじゃないっ…」



念入りに解かして、やっと跡部の二本の指を受け入れた俺の中は異物感でいっぱいで。正直体内を掻き乱す圧迫感は気持ち悪くてゲロ吐きそう。だから少しでも気が抜けるように、むしろ意識が別に飛ばせるように、小さなおねだりだ。


「違う事考えてないと、頭爆発しそう……!」
「………」
「う、やべ、…オェっ…」
「はぁ………むかしむかし、…あるところに、それはそれは幸せな男がいました」


跡部がゆっくり話し出した。
聞いたことない冒頭だ。昔話のくせに、最初から幸せ者じゃ「幸せに暮らしました」でシマらなくない?

「富も地位も名声も持ち、世界のあらゆるものを手に入れた完璧な人間でした、」
「うっ…」


(それもしかして自分じゃねーの?)
(ただの自慢か!)






「そいつが愛した、男だった」





ふわり、と力が抜けた。
指が中からゆっくり出て行って、代わりに体が反転させられて跡部と向かい合わせになる。跡部の右手が、やさしく俺の前髪を分けた。







「それがお前だ、ジロー」





ああ、そうなの。
全部全部そうなの。


(俺は、世界一の男に愛された、世界一幸せな男なんだね。)




「うっ…ひぐ、」
「……泣くなよ、そんなに痛ぇか」
「ちがうよ、ちがう、」
「苦しいのか」
「もう、痛くない、苦しくもない、おれ、」
「…なに」
「俺、跡部と繋がりたいよ。跡部を幸せにするんだ、俺も」







俺達はね、細胞レベルで奇跡なんだ。
もう同じ人間として今肌を交えてるだけで、この瞬間、俺達は世界に輝きをひとつ灯した。



あとでベッドの中で、俺も昔話を話してあげるね、跡部。
世界一幸せな男に幸せにされた、世界一の男の話。2人が永遠に愛し合った奇跡。




(20110905)
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