*ちょっと未来設定



高等部に上がってもジローの身長は伸びなかった。
身長は170を迎えず止まり、肌は白いし相変わらずガリガリ。成長期の同年齢男子とは正直思えない。


「俺はお母さんのお腹の中に成長期をわすれてきてしまったんだ」
「どうすんだお前」
「お母さんが気付いて出してくれるまで待つ」
「アホか」


しかもお前、そのあと妹生まれただろ。このまま妹にまで身長抜かれたら、ちょっと笑えるな。なんて。

寝る子は育つ、なんて迷信があると聞く。とんだでまかせだと実証したのはコイツだ。
未だに中等部生と間違われるジロー。まだまだ身長が伸びてバスケ部やバレー部の勧誘が後を絶たない年下の樺地や鳳を見ながら、人知れず溜め息なんて零していた。
成長期なんて所詮思春期のホルモンバランスだ。身長だって伸びる奴は伸びるし、伸びない奴はそれこそ遺伝だ、そんなの。


「別にいいだろ。背くらい」
「跡部は自分が高いからそう言えんじゃん」
「…」
「あーあ」


そう言ってくてんと頭を下げたジローが「あーあ…」と今度は消えそうに呟いた。

中等部の頃、背の高さを競り合っていた(ただのどんぐりの背比べだったが)向日は、今ぐん、と伸びてるらしく。忍足曰わく(アイツも更に伸びているが)、ふとしたときに近付いた距離が慣れない、なんて珍しく溜め息を吐いていた。


(“伸びてほしくない、なんて言うたら、それこそ雷落ちそうやけど、
イヤミとかいっこもなくて、変わってほしくないだけなんやけどな”)




「おいジロー」
「……」
「はぁー…」
「っ!うわっ」



溜め息ひとつだけ吐き出して、いつまでも俯いてるジローを、正面から脇に手を差し込み、持ち上げた。
身長に比例して体重まで軽い。



「えっ、な、なに」
「どうだ、景色は」
「、ち、ちょっと怖い」


俺より少し高くにある顔は少しだけ青ざめていた。そうだろ、と返して、下に下ろす。


「今くらいが樺地から見た視界だ」
「すげぇ樺地……跡部の顔が下にあるのがまず落ち着かない…」
「どういう意味だ」
「どきどきしたぁ…」
「あ?」
「え、」


どきどき、?
感覚おかしいだろ。





「……だってあんな風に跡部の顔近付くことないよ」




ぷいっと反らされた顔は、耳まで赤かった。
それはやっぱり皮肉と自嘲も混じっていたが、さっきまでとは少しだけ、ちがう、(少しは機嫌なおしたな。)




「テメェに見下されることほど屈辱なことはねぇよ」
「むー」
「抜くなよ絶対に」
「どうせ抜けねーよ!」



そのままで、いれば。


ポン、と頭に乗せた手の位置が落ち着いた。
そんな日常。




(20110526)
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