ゾロ目な上に祝日が誕生日なんて覚えやすい、ってよく言われるけど、
実際得したことなんてさほどなくって。



「よぉージロー」
「、岳人」
「誕生日おめでと」


いつもと変わらず店番任されて、でもGW中にクリーニングなんざ頼みに来る客は、まぁまずいない。
携帯開いてぴこぴこ無料ゲームやってれば、ようやく開いた扉と見慣れた紅髪。
挨拶の二言目に放たれた祝いの言葉に、零れた笑顔。


「あんがと。」
「で、誕生日まで店番とか?」
「しょーがないよ。代わりに夜は多分ケーキ出てくるから」


ちょっとたのしみ、とニヒッと笑えば岳人が「あっそ」と小さく笑った。岳人は毎年だね、必ず顔を合わせて「おめでとう」って言ってくれるの。


「他の奴らからはなんかきた?」
「んー、ほとんど日付ぴったりに忍足と鳳と滝がおたおメールくれたぁ。宍戸からは朝電話あったかな。樺地と日吉はね、昨日プレゼントくれたの。樺地がくれたキャンディーめちゃくちゃ甘くて、日吉がくれた濡れ煎餅は濡れてた」
「うーわ。一人だけ見事に浮くようにスルーしてるな」
「毎年だよ」


毎年、GWは海外の別荘に旅行に出掛けるんだ。もう恒例のことだから今更何も思わない。
連休が明けてぽんっと渡されたお土産に、ハッピーバースデーのメッセージカードが添えられていて、口で言えないのか・とちょっと膨れて、でも嬉しくて、ありがとって終了。
(ほだされる俺も俺か)


「まぁいいけどさ、お前がいーんなら」
「……ん」
「でも俺は誕生日ってもっと大事だと思うんだけど」


ちゃらちゃらとBGMを流しながらゲームの画面を映していた携帯が、突如ぷつりと画面を暗くした。…あ、電池切れた。


「やっぱり一番スキな奴には直接言ってもらいたいじゃん、おめでとうとか」
「…がっくん忍足のことそんな風に思ってんだ」
「ちげっ、オメーらの話だろうがよっ!」
「そんな柄じゃないもん、ウチの人は」
「(ウチの人て…旦那か)…言わなきゃわかんねーだろうよ、やれやれインサイトなんたらが聞いて呆れるぜ」
「……へへ、ねー」
「なぁー」

クスクスと、短く笑い合って。
『でも欲しがらないと誰もなんもくれねーぞ?』って、岳人が俺の頭を一回撫でた。
んで、小遣い日前だからプレゼントはまた今度な・って店を出て行った。

欲しがらないと、




(本当は、
今日一番とは言わないから、
今日ほしいよ、一番から)




ふと意識を戻せば、電話が鳴っていた。しかも奥の、家用の方の黒電話。
(やべ、今母ちゃん買い物だ)



「はいはい、芥川〜」


急いで奥まで行き、受話器を手に取る。
でも、電話口からは少しの音もしない。通話は繋がってるのに。


「もしもしー」
『………』
「どちらさま?」
『………』



「……跡部?」



(それは、なんの確証もなかったけど。
しいて言えば、願望だったかな。)



『…なんで携帯繋がらねーんだ』



やっと受話器の向こうからきこえてきた声に、涙が出そうになるほど安堵してしまった。
それはきっと、今日が特別な日だから。




「…ゲームしまくってたら、充電切れちった」
『カス』
「電話くれた?」
『知るか』
「めんごめんご」
『……今から日本に帰る』
「へ?」
『ドチビ、愛してるから』


じゃーな、って。
要件もまともに伝えず切れる電話。おかしいの。
跡部ってほんと、おかしなひと。


「……特別な日、だから?」



『愛してる』なんて、いつも言わないくせに。
そして今日も、きっと『おめでとう』はメッセージカードの上だけかな。
(それでも、それでもいいよ、いいさ)


はやく会いたいな。

今年は俺、欲しがり屋だからね、びっくりしちゃえよ。(プレゼントだって箱ひとつじゃ許さない!)




Happy birthday 2011/5/5
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