ぶぶぶ。部屋で音楽を聴きながら雑誌を読んでいると、テーブルの上の携帯が震えた。今週末は総体がある。恐らく今のお返事をくれたであろう進藤くんも、もちろんブン太も、2年生とはいえ大事な大会である事には変わりない。最近の部活は本当に大変みたいで、朝のブン太はとっても眠そう。欠伸が止まらないんだもん。教室の隣りの席でもいつも寝てばかりいるから、少しだけつまらない。
いつものようにテーブルの上から携帯を取ると、画面が明るくなる。「立海ってバスケ部もすごい強いし、やっぱり練習大変なの?」久しぶりの進藤くんとのLINEは、普段よりも始まりが遅くて。私のような帰宅部にはわからないけど、きっと遅くまで練習しているんだろうなぁ。

『うん、いつもより試合ばっかりだから結構疲れる!』
『でも基礎練とか無い分楽しいよ!』

「ふふっ」

進藤くんとのLINEも、結構慣れてきた気がする。始めの頃は携帯が震える度にどきどきしていたけれど、今じゃこうして内容を見て笑えるくらいまでになった。
基礎練、ブン太も嫌だって言ってたなあ。進藤くんはあんなにきらきらしているのに、思っているよりも普通の男の子で。相変わらずどうして私と連絡を取り合ってくれているのかはわからないけど、でも、私は進藤くんとのLINEが楽しかった。


「やっぱり基礎練は嫌なんだ?(笑)」
「でも試合に出てるだけでも進藤くんすごいね!」


私はそう送って、また携帯をテーブルに戻す。雑誌に再び目を向けると、可愛いモデルさんが可愛い服と靴を身につけていて。この服、可愛いかも。私はそのページに折り目をつけて、次のページを捲った。そろそろ、暑くなってくる時期だ。制服も衣替えをして、今年はどんな夏になるかなあ。そんなことを考えていると、携帯の画面が光る。返事が返ってきたみたい。


『ううん、そんなことないよ!でもまゆこちゃんにそう言って貰えると嬉しい』
『あ、今週の土曜日って予定ある?』


どきんっ!私の心臓が大きく鳴った。進藤くんはこうして、何気なく私の心臓に悪いことを言ってくる。どうして、こんなことを言ってくれるんだろう。ブン太以外の男の子と小学校以来ほとんど接していない私には、進藤くんが不思議でならなかった。


「私の方こそそんなことないけど、喜んで貰えたなら良かったです」
「土曜日、今のところ特にないよ!進藤くんは大会だね!」


土曜日、ブン太も試合があればなぁ。この間聞いた時はわからないって言ってたけど、明日また聞いてみよう。もしかしたら出ることになったかもしれないし!

そう思って携帯を戻そうとすると、携帯がまた震えた。えっ、早い!


『うん!それでさ、俺今回レギュラーに選ばれたんだ』
『実はもしまゆこちゃんが暇なら見に来て欲しいなーと思って、LINEしたんだよね』



「ええっ」

驚きすぎて、思わず独り言を言ってしまった。だって、私が進藤くんの試合を、見に行く?何回も読み直すけど、やっぱりそう書いてあって。…な、なんで、私?理由を頑張って考えようとするけど、心臓の音が煩くてそこから何も考えられない。でも、早く返事をしないと。……あっ。

そうだ、土曜日は、ブン太の試合があるかもしれないんだ。明日聞こうと思ったけど、明日じゃ遅い。今、聞こう!
私は携帯の画面を戻して、ブン太の携帯に電話をかける。プル。ものすごく短く、呼び出し音が切れた。

『…どした?』
「ええ!早!」
『ゲームしてたの。すげーいいとこだったのに』
「あっ、ごめんね」
『うん。で、何だよ?』

隣りに住んでいるから、普段電話なんてしない私達。電話越しのブン太の声が眠そう。まだそんなに遅くないのに…やっぱり疲れてるんだなあ。

「あ、ブン太、今度の総体…出れそう?」
『…なんで』
「えっと、あの…」

少し不機嫌そうなブン太の声。一緒にいるならまだしも、電話越しだとちょっと困ってしまう。


「今進藤くんから連絡きてね、土曜日暇かって。もしブン太が試合出れそうなら試合見に行こうと思ってたから」
『ふーん』


そう言ったきり、黙ってしまうブン太。

「ブン太…?」
『たぶん出れねえと思うよ』
「…そ、か」
『進藤の試合、見に行くの?』

まだ機嫌が悪そうなブン太に、ちょっとびくびくしてきてしまう。ブン太がこんな風に機嫌が悪い時って、あんまり無いのにな。…でも、きっと試合に出たいんだよね。ブン太に、出れないって言わせてしまった自分を恨めしく思った。


「そう、だね。特に予定も無いし」
『…あ、そ』


うう…ブン太が冷たい。でもこういう時にごめんねっていうのが違うのはわかってる。ブン太が試合に出れなくて気にしているのを知ってて、私が聞いたことを悔やんでるなんてブン太が知ったら、きっと余計傷つけちゃうよね。

『じゃ、それだけ?』
「あ、うん。…ゲームの邪魔しちゃってごめんね」
『ん、じゃあな』
「あっ、ブン太!」
『…何?』
「あの…ううん、また明日ね!ブン太、おやすみなさい」
『おお、おやすみ』

ブン太が先に切って、私の耳にツーツーと音が聞こえている。…ブン太、ちょっと怒ってたよね。はあ。寂しい気持ちと悔しい気持ちが入り交じったまま、私は進藤くんに返事を返した。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -