カランコロン。朝練が始まったころ、普段はめったに聞かない心地いい音が聞こえてきた。

「千歳…!」
「おー、天子おはようさん」
「おはよう、どうしたの?こんな朝早く」
「早く起きたけん、そいだけばい」
「…そりゃそうなんだろうけど」

散歩してて気付いたら学校だった。そんな感じのことを言ってあたしの横にきて立ち止まった千歳。あたしは見上げるようにして千歳を見た。

「……」
「なんばしよっと?」
「千歳って背高いよねー」
「まあ、天子よりは背高かね」
「あたしよりってか、そこらへん見ても千歳よりも背高い人なんてそうそういないよ?」

あたしの質問に、んーと千歳は悩む。
あれ、そんなことより練習出なきゃじゃない?…うん、そうだよ。でも千歳、あたしが言っても聞かないんだよなあ。

「天子は背高いほうがよか?」
「あ、うん、背は高くなりたいな」
「あー…俺が言いたいんは男ん…まあよかばい。ばってん、天子はこん身長がむぞらしかよ?」

千歳はそう笑ってあたしの頭を撫でた。千歳はいつもそうやってすぐにあたしの頭を撫でる。

「まーたそうやって子ども扱いするの?」
「そがんこつなかよ」
「だっていつも撫でるじゃん」
「天子がむぞらしかけん、仕方なか」

…朝からそんなに誉められると反応に戸惑うんだけど。なんかちょっとドキドキしちゃう。…顔赤くなってないよね?
あたしが反応に困っていると、コートから誰かが走ってくるのがわかった。

「おーい千歳ー、来とるんやったら練習せえー」
「お、白石。もう見つかったとね」
「なんでせっかく朝練来たのに天子と話してんねん。天子も千歳に部活やれー言わなあかんやろ?」
「だって千歳、あたしが言っても聞かないもん」
「もん」
「ほら」
「そういう問題やあらへん」

そう言われたと思ったら、さっきまで千歳の手があった場所に蔵の軽いげんこつが落ちてきた。

「えー」
「えーちゃうやろ」
「…しょうがなかね。こん以上天子いじめられっと敵わんけん、練習するばい」
「え」
「白石、誰と打ちよったとね」
「銀さんやけど」
「了解。じゃ、選手交代ばい」

カランコロン。千歳は蔵のラケットを借りると、コートに入って行った。

「なんや、それやったら俺が練習できひんやん」
「…まあ、千歳が朝練するってだけでもいいんじゃない?」
「そらそうやけど…」
「でしょ?」
「そういやさっき千歳と何話しとったん?」
「千歳は背が高くていいねって話」
「へえ…」

あ、なんか可愛い可愛い言われたの思い出してきた。でも千歳からしたら、あたしには妹みたいな感覚で言ってるんだろうなあ。

「…天子は背高い方がええん?」
「え、あ、うん。やっぱりそっちの方がかっこいいし!…って、それさっきも千歳に聞かれたんだけど」
「千歳に?」
「うん」
「もしかしてさっき顔…いや、ほんなら俺練習戻るわ」
「?…わかった。がんばってね」
「おう」





「…まだ中3やし、身長伸びるやろ」





あたしが背高いのって、そんなに変?

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