「天子やん」
「あれ、蔵」

ポカポカした休日の部活中、部室前のベンチに座っていたあたし。誰かが歩いてきたかと思えば蔵だった。

「何やサボりかいな」
「まあね」
「ほー、ええなあ…っていやいや自分マネージャーやろ」
「あれそうだっけ?」
「…天子?」
「ごめんなさい白石部長。…だってこんな暖かいんだよ?ひなたぼっこが一番いいに決まってるでしょ」

空を見上げれば太陽がすごく眩しい。うんうん、これくらいがひなたぼっこに最適だよね。きっと植物はみんなコウゴウセイをしてるに違いないなんて昨日習ったことを考えてみる。

「そらそうやけど」
「ほーらね!」
「ほらねやないっちゅーねん。ちゃんと仕事せなあかんやろ」
「まあまあ、そう固くならずにさ」
「…俺かなり緩い方やと思うんやけどなあ」

呆れたように蔵はそう言った。まあ確かに、さっき金ちゃんがたこ焼き買いに行ったのを特に止めなかったことを考えれば緩いと思う。

「…うん、そうかもしれないかもしれない!」

あたしの言葉に、まどろっこしいわとツッコむ蔵。そしてあからさまにふうとため息をつく。

「何や天子の相手してたら疲れたわ」

蔵はそう言ってゆっくりとあたしの隣に座った。…ええ、え!あたしはものすごい勢いで今まで蔵に向けていた顔を前に向ける(ベンチに2人っきりで顔なんて見れない!)

「天子〜」
「んー?」
「さっきから見とるけど何かあっちにあるん?」
「特に何もない…うひゃあ!」

何かが顔の横に来た気がして目だけ向けてみる。でもびっくりして思わず大きな声が出てしまい、横にきていた蔵はあたしの声をまともに受けたらしく耳を押さえていた。

「…耳元で叫ぶなや…」
「ご、ごめん」

めっちゃキーンてするしとぶつぶつ蔵は呟く。でも横にあんな綺麗な顔があったらびっくりするっての!あたしはまだドキドキしているのを悟られないように冷静を装う。

「しかも何もないんかい」
「当たり前じゃん」
「ほな何で見てたん?」
「……いい天気だね〜」
「はいはい話し逸らさない」

逸らすも何も見てないのに…。かといってまさか蔵のこと見れないからなんて言えないし。困った顔で何を言うか考えてると、蔵も何か感じとったのかあたしから顔を逸らす。

「まあ別にええわ。それにしてもええ天気やな」
「あーうん…それさっきあたし言ったよね」
「……」
「……」
「あ、金ちゃん帰ってきたわ」
「ちょっと蔵!」
「天子ー!たこ焼き食おうやー!」
「ほら金ちゃん呼どるやん。はよ行くで」
「あー…うん」



もうたこ焼きが美味しいからいいってことにするんだ。

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