今日も昨日と同じく雪が降っている。でも今日は昨日みたいに明るいうちに帰るなんてことは無理そうやのう。

「また外見てる」

外見るの本当好きなんだねー雅治。
せいなはそう言って同じように外を眺めてから、再びプリントに目を移した。
せいなが今やってるのは先週の週末に出された課題。テスト範囲だから絶対やっとけと言われたのを忘れていたようで、今日中に提出しろと教師に言われとった。

「てか何で雅治はやってるのよばか」
「やっとらんせいなにばか呼ばわりされる筋合いはないナリ」
「だってー」
「恨むんなら教えてくれた丸井を恨みんしゃい」

まあ、俺が教師の話を聞いていたのかと言ったらそうではなくて、たまたま丸井が教えてくれたからやったってだけ。せいながうだうだ言うのもわからんでもない。

肘をついてせいなを見てるとなんだか眠くなってきた。瞬きの回数が増えた気がする。

「長い…」
「んー」
「…雅治もしかして眠い?」
「目しぱしぱする」
「だって目これくらいしか開いてないもん」

せいなが目を細める。え、それ開いとらんけど。これくらいしかっていうか、開いてないって言った方が早いと思う。
―そんなことより。

「ぶっ」
「えっ」

俺がいきなり吹き出すとせいなは驚いて目を丸くした。

「何、どしたの?」
「顔…」
「顔?」
「カワイクナイ」
「……え」

俺は未だににやけている口元を押さえながら言った。目を細めた仏頂面はいつものせいなとは全然違っとって、面白いくらいカワイクナイ。

「ち、ちょっと!知ってるけどそんなダイレクトに言わなくてもいいじゃん!」
「あ、可愛くなった」
「…は?」
「さっきの目細めた顔、初めて見たきにその感想言うただけじゃ」
「や、意味がわかりません」
「わかっとるくせに」

はあ?そう口から出てきそうな顔をされた。あれ、本当にわかっとらんの?もしかしてまだ可愛くないって言われたと思っとる?

「だから」
「あーもう!とりあえず眠いんでしょ?寝てもいいよ」
「え」
「だってまだ時間かかりそうだし、黙ってても暇だと思うし」

せいなはそう言うとシャーペンを持ってプリントに向かった。むすっとした顔を見る限り、たぶん理解しとらんと思う。…でも、今さら弁解するのもなあ。

「わかった。じゃおやすみ」
「うん」

カリカリ。せいなが何かを書きこむ音だけが教室に響いとる。俺は片腕を枕にして顔をせいなの方に向けているけど、横の髪が邪魔で顔がよう見えん。

「せいなー」
「んー…ってなんでこっち見てるの!」
「こっち側の髪も耳にかけて」
「なんで?」
「髪邪魔で顔見えんきに」
「いやいや見なくていいよ!」
「じゃあ俺がかける」

俺は手を伸ばしてせいなの髪を触れる。

「わわわわかったわかったかければいいんでしょ!」

俺の手から逃げるようにせいなは顔を引き、髪を耳にかけた。せいなの顔はうっすら赤くて、

「これでいい?」
「ん」
「じゃあ寝ててね」
「……可愛い」
「え」
「……」
「…ね、寝てる…!」









何分経ったのかはわからないけど、眠りから覚めてきたころに前がいきなり暗くなったのがわかった。ふわりと何か甘い匂いもした。
そこから一気に意識を取り戻した俺は目を開けた。

「…せいな?」
「わあ!」

目を開けた俺の前にあったのはドアップのせいなの顔。俺が名前を呼ぶと真っ赤になった顔を引っ込める。

「どした…終わった?」
「う、うん」
「…顔、赤い」

まだ頭がぼーっとする。時計を見ると30分も経っとった。

「そう?」
「ん」
「な、んでかな」
「あれ」

せいなが話したとき、甘い匂いがした。この匂い、さっき嗅いだはず。

「さっき寝てるときこの匂いした」
「えっ」
「1人でしゃべってた?」
「ま、まさかそんなわけないでしょ!」
「…ふーん。ま、終わったんなら提出して帰ろ」

既に筆入れとかは片付けられていたせいなの机を見て、俺はカバンを掴んで立ち上がった。

「……」

せいなも続いて立ち上がる。カバンと課題を持ったのを確認して、俺は歩き出す。

「あの!」
「…?」

でも、後ろからせいなに腕を掴まれて足は止められた。

「どしたん」
「えっと…」

目が明らかに泳いでたり声が小さかったり、一体どうしたんやろう。腕もなかなか離さない。俺はよくわからんくてただ立っとるだけ。

「ごめんなさい!」
「は、」
「ごめん、あたしさっき」
「……」
「あの、雅治に…ちゅー、しちゃった…」

ぎゅっと強く俺の腕を握るせいな。ああ、だからあの匂いか…。なんて冷静な脳内。

「なんで謝るんじゃ」
「え?」
驚いた。冷静やと思っとったのは脳内だけで身体は動揺していたのか、疑問が勝手に口から漏れた。うつ向いとったせいなが顔をあげて首を傾げとる。

「あ、いや」
「…?」

おかしい。勝手に顔がにやける。何も言わなくなった俺をせいなが不思議そうに見つめる。

「別に、俺は嫌じゃなか」
「でも」
「俺、たぶんせいなが思っとる以上にせいなのこと好きやと思う」

そっぽを向いて言う俺。無理じゃ、顔見てなんて絶対に言えん。
すると突然せいなが手を離して椅子に座った。

「はは、腰抜けた」
「…ふっ」
「わ、笑わないでよ!だって絶対嫌な顔されると思ってたもん」
「そんなんするわけないじゃろ」
「わかんないじゃん」
「わかる」

椅子に座っとるせいなに近づいてそのままキスをする。
本当のことを言えば、たぶん、せいながキスをしてくれたことが嬉しいんじゃと思う。でもそんなの言えんくて。

この口から離したくない。だけど離したときのせいなの顔も見たい俺もいたり。



(こわいくらい、どんどんすきになっとる)

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