皆と部室
休日練の日。
昨日の夜に緑間から『明日の朝は家に来るな』と結構な内容のメールが届いたから今日は一人で学校に来た。
……のはいいんだけど、部室にいる人という人らから何か微妙に避けられてねオレ。いやいやそれはないだろオレ。被害妄想だろソレ。
と若干ソワソワしてたら宮地サンが部室に入って来たからいつもみたいに「おはよーございまっす!」と笑顔で駆け寄る。けど、
「……」
見事にスルーされた。
え、うそ。なんで?
オレなんかしたっけ??
宮地サンにガン無視されるとか結構ガチで凹むんですけど。
そこにちょうど緑間が入って来たから空元気ヨロシク話し掛ける。
「おはよ真ちゃん、今さぁ、なんでか知んねーけど宮地サンにガン無視されちゃってオレなんかしたのかなー?」
「……っオレは何も知らないのだよ……!」
「え、や、そりゃ真ちゃんは宮地サンが怒ってる(かもしんない)理由知らないだろうけど……って、え、ちょっ真ちゃ……っ?えええ……」
行っちゃったんですけど。
え?なにこれ?新手のイジメ??
何かした?オレなんかしたか??
その疑問に答えてくれる人はなく。
部活の時間は始まった。
◇ ◇ ◇
「……実はオレ嫌われてたわけ……?」
最早笑うしかねえ。
結局一日誰一人まともに話してくんなかったとか、ほんと、さすがに落ち込むって。試合形式のときは最低限の会話はしてくれたけどさ。
ため息を隠すことなく溢して部室へと戻る。まだ部室には先輩らもいるし、正直この状態で入るとか嫌すぎる。
でも行かないことには荷物も取れねーし帰れないし。
考えてても仕方ない。
とりあえず今日は何も気づかないフリを装おうそうしよう。
そう決めたオレは、笑顔を顔面に貼り付けてから勢い勇んでドアを開けた。
その瞬間。
「「「高尾、おめでとう!!」」」
「…………は?」
派手なクラッカーの破裂音と共に聴こえてきた言葉に、オレは呆然と立ち竦む。
部室の中には、沢山の笑顔。
皆が皆、オレの方を見て笑っている。
え、どっきり?
「どっきりっつうか、サプライズパーティ、だな」
心の声が漏れていたのか。
ボケッとしたままのオレの頭を、宮地サンがわしゃわしゃと撫でながら言った。
「え、宮地サン、え?パーティって……ていうか、オレと、話したくなかったんじゃ」
「あ?……ち、ちげーよ!オマエ驚かすのに、大坪が、その、ぜったい喋るなとか言うから……っ」
「え、キャプテン?」
宮地サンの言葉に慌てて主将を見たら、にこにこと微笑んでいる。
隣で木村さんはニヤニヤしてるし、一体、どういう……
「喋るなって言ったのはこのパーティのことだったのに宮地のやつ、高尾と“会話するな”だと勘違いしててな」
「はぁぁ?!そ、そうだったのかよ!!」
「面白かったからオレも大坪も黙ってたんだよ」
「オマエら……!!」
「でも他の部員らもつられてバラさないよう高尾避けてたよな」
何となく話が見えてきて。ぶわっと込み上げるなにかは、オレの意思に反して外へと溢れてしまった。
「た、高尾……なななななぜ泣いているのだよ!!」
「「「!!!!」」」
一番に気づいたらしい相棒様がこっち見て驚いてたけど、こちとらそれどころじゃねーっての。
「だ……って、みんな、オレのことムシする、し……っ嫌われたのか、って、」
「はっ?ちょ、わ、悪かったって総スカンみたいなったのは謝るから、泣くな!高尾!」
あーカッコ悪い。高校生にもなって、周りから無視されたくらいで泣くとか。でも。
「オレ、秀徳のみんなのこと…っ、ちょうすきなんすよぉ……っ」
「「「……ッ!!!」」」
そうだ。
総無視されていっぱし傷ついちゃう程度には、皆のことが大好きなんだ。
改めてそんなことを自覚して自分のなかで反芻させてたら、必死の形相の部員みんなから謝罪された上に「オレらも高尾のこと大好きだからな!!!」って言われた。
さすがに泣かせたのはまずいと思ったのかな。
「つうか、高尾……オマエほんと……」
「一々心臓に悪い奴なのだよ……」
「緑間……たまには気が合うじゃねえか」
何か向こうで緑間と宮地サンが意気投合してたけど、話に加わる前に大坪さんから紙コップを渡される。
「ほら高尾、今日はオマエが主役だ」
「いい果物も奮発してやったからな!」
木村さんからコップにジュースを注がれたところで、そういえば、と改めて先輩たちの顔を見上げた。
「ところで、これ。何のパーティなんですか?」
「「「…………え」」」
そしてあまりの怒涛の一日のせいで、自分の誕生日を忘れていたオレが真ちゃんから「貴様の誕生日だろう!!!」とツッコミ食らってまた少し泣いちゃうのは、すぐ後の話。
(13/11/14)
高尾くん
HappyBirthday!!
(11/21)