白いフリフリのエプロン(形から入るタイプらしいエステルが買ったものだ)姿に何ら違和感の無い男を見やる。きらきらと瞳を輝かせながらこちらを見つめてくるのは、三十も半ばに差し掛かった中年である。しかし、何というか、その、あれだ。可愛いと思う。おかしいと自分でも思うが、事実なんだから仕方がない。何なんだこの中年。今だってそわそわしてる姿が可愛過ぎてたまらない。「せーねん、早く食べてよぅ」なんてちょっと拗ねた口調で言われた時には、思わず顔を隠し俯いて悶えた。だーかーら、可愛いんだっての!自覚しろ!と心の中で何回叫んだことか。 「せーねん?」 「…よし、いただきます。」 男にまた訝しがられたので、慌ててまだ温かいそれを一口。………二口。三口。四口。うまい物を食べる時は無口になるとよく人に言われるが、今回も例に漏れることはなかった。夢中になって食べ進めていると、それはあっという間に無くなってしまった。 甘い余韻が口内を満たす。同時に男が満面の笑みをこちらに向けてきて、正直その笑顔でクレープの味も吹き飛んでしまった。 「どうよ、新作桃のコンポートと生クリームのクレープバニラアイス乗せ!おいしい?」 「…うまい。すげーうまい。」 「でっしょー!よしよし、じゃあこれもレパートリーに加えとこう!女の子は桃好きだしねぇ。」 浮かれた様子でそう言いながら、男がレシピに筆を走らせる。その様子がまた可愛くて赤面すると、隠しきれないそれに男が楽しげに笑った。 ふわふわ桃の匂いがして、目の前にはふにゃりと笑う男が居て、空は晴れていて。幸せだなぁなんて柄にもないことを、ぼんやりと考えたりした。 mellow mellow 100520 |