「む、無理!ぜったいむりっ!」 ぎゃんぎゃん騒ぐ口をええいと自分のそれで塞いでしまうと、キスが好きらしいこの男は途端におとなしくなる。男の肉厚な舌は柔らかで吸い心地がよく、更に舌先で咥内をノックするように愛撫してやれば、気持ち良いのを堪えるようにぎゅうと服を握りしめてきた。そういうのに弱いんだと、そう言ってみたら照れて怒り出すだろうから言わないけれど。 ぷは、と口を放した後に広がる絶景も好きだ。いつもの飄々とした感じの垂れ目が熱っぽく濡れて、真っ赤な顔で必死に浅い呼吸を繰り返す。こんなとろとろしたえろい顔させてんの俺だけだよな、なんて思うと一気にぶわっと愛しさが込み上げてきて、またキスせずにはいられない。その繰り返し。 こちらのねちっこいキスにすっかり開発されてしまったらしい男は「いつか呼吸困難で死ぬ!」とかなんとか文句を言いながらも、いつも大変よさそうにしてくれるのだから素直じゃない。でもそういうとこがまたいいんだよな、と思いながら三度目のキスを終えた。えろい顔も三度目。何度でも腰にくる。 「し、っ…しつこ、過ぎ……っ!」 「好きだろ?」 息苦しくて喋るのが辛いのか、ふるふると必死に首を横に振って答えてくる。あぁなんか小動物みてぇ、だなんて思ってしまうのは惚れた欲目か。 未だぜいぜいと息を荒げる目下の男を持ち上げ、膝の上に乗せる。首を傾げた男がぼんっと顔を真っ赤にした所で、話は冒頭の発言に戻る訳だ。 「なぁ上乗ってくれよ」 「やだっ絶対やだ無理死ぬ!」 「なんで」 「……………は、恥っずかしいからに決まってんでしょ馬鹿あぁぁぁ!」 「なんで」 「な、なんでって……そりゃ…、」 「なんで」 「お前はあれか、好奇心旺盛な子どもか!なんでしか言えないのか!」 「なんで」 「病院行こう青年。」 じたばたと暴れる男をぎゅうと抱き締めて押さえ付ける。そしてしっかりと目を合わせてから、もう一度「なんで?」と意地悪く聞いた。この顔(男曰くやたらと雄臭くてやらしい笑顔)に弱いことを勿論知りながらやっていて、男は毎度毎度いい反応をしてくれる。 「………っひ、卑怯者。」 「なんのことですかねー」 顔を真っ赤にしながら軽く罵ってくるのにきゅんとときめくが、別に被虐趣味は無い。むしろSだ、というか男の方がドの付くMなんだと思う。 「……だ、だって、」 「だって?」 「………ユーリに、俺がなんか色々いっぱいいっぱいでぐちゃぐちゃになってるのとか、見られたくないんだもん…」 こんなことを言って顔をかあぁと赤くする男を、そう言わずしてなんと言う。 いきなり物凄い爆撃を喰らってしまった。自分から言わせといてあれだが、ほんとなんか可愛過ぎるこのおっさんもう駄目だ絶対ぐちゃぐちゃにしてやる。つーかあんたが快感で訳分かんなくなってるとことか見飽きるくらい(いや飽きちゃいないが)見てるから今更だっての! しかし表面上は冷静を装い、恥ずかしげにする男に微笑みかけてやる。 「じゃ、入れてみ」 「……青年俺の話聞いてた?」 「さっきまで突っ込んでたから慣らさなくてもいけんだろ。ほら」 「青年俺の話聞こえてる!?」 「さっきのすんげぇ誘い文句ならばっちし聞こえたぜ?あんた可愛過ぎ」 「ばっ、馬鹿野郎!」 また騒ぎ出す口を塞いでやり、乳首を撫で上げたり耳をなぞったりして男の熱を煽るだけ煽ってやる。解放してやると期待するように瞳を揺らす男がそこに居たが、理性に急ブレーキを掛けてそのままじっと耐えた。 「ゆっ…、ユーリ…?」 「んー?」 「あ、の………」 見れば男の自身は緩く立ち上がっていて、とろとろと先走りを零している。すぐにでも擦ってやりたい衝動に駆られたが、それも我慢。 「どした?」 極めて優しくそう言えば、男は情けなく眉を下げて泣きそうな顔をした。 「………意地、悪…っ!」 そう言った男がそっと俺の自身に触れ、その上を跨いで膝立ちになった。なるべくこちらを見ないようにしているのか、先程から一度も目が合わないのは少し寂しい。が、絶景はもうすぐだ。 恐る恐る、非常にゆっくりと、男が腰を落とす。窪まりに先端が触れた瞬間ひっと息を飲んだが、数秒間深呼吸をし、ぐっと更に腰を落としていく。 「ふ、…〜〜〜っ…!」 ゆっくりと中を割り開いていく感触。容赦無くきゅうきゅうと締め付けてくるのに、ぐっと歯を噛み締めて耐えた。 「力、抜いて、み?」 「んぅ…っ、ぁ、」 ずぷ、ずぷ、とゆっくりゆっくり飲み込まれていくのが何だか新鮮だ。必死に慣れないことをする姿が可愛くてたまらず、自然と口元が緩んでしまうのだが、ぎゅっと目を瞑っている男には見えていないのだろう。可愛いなぁ、全く。 ぐっと体重を掛けて遂に全部飲み込んでしまうと、男が深く息を吐いた。 「は、はずかしくて、しにそう…っ」 目に涙を浮かべながら男がそう言うのを見て、興奮で更に自身が張り詰める。いや俺の所為じゃない、おっさんがえろ過ぎるのが悪いんだ。 羞恥にふるふると震える(やっぱり小動物だ、うん)男をめちゃくちゃに突き上げてよがらせたい衝動を押し込め、誤魔化すように男の太ももを一撫でしてから、また優しく笑った。 「………ユーリ…?」 「んー?」 それは何もしないという意思表示。 また泣きそうに眉を下げた男は、「後で、覚えてなさいよ…っ!」と可愛らしく恨み言を言いながら、俺の腹にぺたりと両手を付いた。そして恐る恐る、ゆるゆると腰を揺らし始める。 「……っ……ん、…」 何かを探るように、ゆっくりと。 物凄く恥ずかしそうな顔で物凄くやらしい腰使いをする、その対比がかなりやばい。しかもそれを無意識にやってのけるのだから、とことん質が悪い男だ。 これはこっちの方が保たないかもしれない、と苦笑しかけた、その時。 「ぁ…っ?!」 びくん、と男の身体が大きく跳ねる。 戸惑ったように呆ける男に向かって、にやにやと意地悪く笑った。 「イイとこ、見つけたみたいだな。」 「やだっ、あ、なにこれ…っ、」 「ほら、動いてみ?」 「っん!急に、うごく、なぁ…っ!」 一度だけそこを突き上げてやれば、先走りを噴き出させながら男が啜り泣くように喘ぐ。しかしそれ以上は我慢。 俺の方がずっとこの調子なもんだから、男はいよいよ我慢が出来なくなってしまったらしい。 「…っひぁ、あ、…あ…っ!」 まだ遠慮しつつも、自分のイイ所に当てるように男が自分から腰を揺らし始める。びくびく身体を跳ねさせ、先走りを溢れさせ、余裕のない声と顔で喘ぐ。その様子がたまらなく愛しくてならない。 だんだん快楽に飲まれていく内に、男の腰使いも大胆なものになっていく。 「やだっやなのにっやなのにぃ…っ!ぁ、や、とまんな、…っ!」 「……やらし過ぎだろ、ほんと」 「ひぁ、だめっだめぇっ!あ、っ、ぁっ、でちゃっ、あぁあ…っ、」 今更だが、この男は本当に快楽に弱いと思う。しかしそれを恥ずかしがって認めまいとし、無理に堪えようとする。が、結局は流されてしまう。 「っ、あんたのそういうとこが、たまんねぇんだっての……!」 「ぁ、っ?!やだやだぁっ、きもち、きもちいっからぁ!あ――…っ!」 あまりのいやらしさに理性が吹っ飛んで、素早く上下を入れ替えてずんっと突けば、男が喉を反らしながら達する。しかしその間も突き上げは止めず、それから気が済むまで男をよがらせ続けた。 やっぱり我慢出来なかった。 気絶するように眠ってしまった男を見つめながら、少しだけ後悔した。 本当は、男に全部やらせてみて恥ずかしがるその様を見て楽しみ、最後はおねだりさせて締めようと思っていたのだ。が、想像以上の可愛さとやらしさにやられ、我慢出来ずに自分から手を出してしまった訳である。しかし。 (―――……俺どんだけ好きなんだ、このおっさんのこと。) そう自嘲してみれば、むず痒くも何となく悪くない気分になってくる。 今度またリベンジしよう、と考えながらにんまりと笑い、すやすや眠る男の鼻先をそっと突っついてやった。 かわいいいとしいくるしい! 101107 |