ドラマチック | ナノ




・天使ユーリとおっさん
・現パロっぽい





「あんたを幸せにする為に来た。」

ぱーどぅん?
そんな似非英語を使いたくなるくらいには、目の前の世界は不可思議さに満ち溢れていた。それはそうだ、誰だって目覚めた瞬間に知らない人間に凝視されていたら驚くだろう。しかもそれがこの世のものとは思えない程の美形で、更に何だか意味の分からないことを言いやがったりした日には、二度寝を決め込もうとしても許される筈だ。それなのにその美形がそれを許さず、ご丁寧に頬をぺちぺちと叩いて起こしてくるものだから、これは現実なのだと絶望した。取り敢えず物盗りの輩では無さそうだが、とだけ寝呆けた頭で考え、ゆっくりと身を起こす。目を擦って瞬きを数回、伸びを一回。見ると、とんでもなく綺麗な顔をした青年がそこにふてぶてしく座っていた。

「で、俺今日から此処に住むから。宜しく。」
「いやいやいやいやちょっと待て!」
「何だよ」
「なんか色々と着いて行けないんだけど分かりやすく簡潔に説明してくんないかな不法侵入者くん!」
「はぁ?」

はぁ?はこっちの台詞だ馬鹿!そう言いながら枕を引っ掴んで投げつけてやったが、見事にキャッチされてしまった。本当に何なんだ、せっかくの日曜だってのに何で朝っぱらから混乱しなければならないんだ!しかしそんな俺にはお構い無しに、謎の青年は呑気にもふもふと枕を弄っている。また何か投げてやろうかと思ったが適当なものが無かったので、取り敢えず少しだけ近寄ってその横っ腹を蹴ってやると、思い切り嫌な顔をされた。眉を寄せて見つめてくる青年に負けじと敵意を込めた眼差しを向けていると、根負けしたのか面倒臭くなったのか、長い髪をがしがしと掻き回しながら青年がやる気無く口を開いた。

「俺は天使。あんたは選ばれた。」
「……は?」
「ややこしいことは省くけど、まぁ宝くじに当たったみたいなもんだ。言っただろ、あんたを幸せにするって。」
「………へ?」
「で、あんたにとっての幸せが何なのか判断するまでは、取り敢えず一緒に住まわせて貰うからな。」

宜しくな、レイヴン?
その声が響くと同時に、俺の視界が一息で純白に染まった。柔らかそうな羽毛がふわふわと宙を舞い、地に落ちていく。その発生源が彼の背から生えている翼であることや、教えていない筈の俺の名を彼が知っていること、目の前にある見たことのない紫紺の瞳など、あまりの非現実な現実世界に少々眩暈がした。



ドラマチック

100614





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