何がどうしてそうなったのか、僕はうんと年上の男性に恋をした。勇気を振り絞って、拙いながらも一生懸命想いを伝えて、なんと驚くべきことに今僕と彼は恋人同士となっている。 大好きな人と共に過ごす毎日はとても幸せで、目に映る何もかもが輝いて見える。そんな幸福にどっぷりと浸かった日々の中で、欲張りな僕は更なるものを求めるようになった。 僕はまだ若くて、かつ彼のことが大好きで、つまり。 『エッチ、したいです』 蚊が鳴くようなか細い声で、僕はある日彼にそう言った。 それを聞いた彼は目を真ん丸にして停止し、しばらくしてからじわじわと顔を赤くして、それから何だか泣きそうな顔になった。僕も込み上げる恥ずかしさで泣きそうだった。 けど、どんなに格好悪くてももっと彼と深い仲になりたかった。 数分間気まずい時間が経った後、彼が重い口を開いてこう言った。 『……今度の日曜、家来れるか?』 僕はすぐに大きく何度も頷いた。すると彼はいつものように笑って(でも頬は相変わらず赤いままだ)、僕の髪をくしゃくしゃと撫でてきた。 あの申し出の後、家に呼んでくれた。それはつまり、何というか、そういうことなのだろう。 土曜の夜、はやる気持ちを抑えて早く布団に入ったけれど、一向に眠気が訪れない。日曜のことを考えると興奮と緊張でどうにかなりそうだったので、無心でトレーニングをして何とか寝ることに成功した。それでも3時間くらいしか寝られていないけれど。 そして今に至る。 今、というのは大の男が二人してベッドの上で正座し、無言で向かい合っているという状況だ。 正直、ものすごく気まずい。そして心拍数がものすごいことになっている。 恐る恐る彼の方を見ると、ちょうど彼と目が合う。彼は居心地悪そうにもぞもぞした後、意を決したように顔を上げた。 「………あのさ、」 「は、はい…」 「お前、初めて…?」 「……………は、い」 一瞬答えに詰まるが、嘘は吐きたくなかったので正直に頷いた。 「そんなら…その、……最初の相手が、俺なんかでいいのか…?」 「っ貴方が、虎徹さんが、いいんです…っ!」 「っ、」 「僕は虎徹さんじゃなきゃ、いやなんです……」 ちょっと涙声になってしまってつくづく決まらないが、思い切って彼に近寄り、ぎゅうと抱き締める。 彼は一瞬身体を固く緊張させたが、すぐに力を抜いて身を預けてきた。 「馬鹿野郎」 耳元でそう囁かれて、心拍数が更に上がった気がする。 「折紙、」 真っ赤な顔をした彼が見えたかと思うと、唇に何かが触れた。目の前には近過ぎる彼の顔。 そう、キス、されていた。 「ん、」 おずおずと舌が入ってきて、控え目に水音を鳴らしながら動き回る。それに誘われるように僕も舌を動かし、彼がぴくりと反応する所を頑張って刺激するようにした。 彼は敏感な質らしく、反応がいいのに気をよくして、僕は夢中になって彼の口内を貪った。 ようやく口を離した頃には二人とも息が上がっていて、真っ赤な顔と潤んだ瞳で荒い息を吐く彼はとてもいやらしかった。 「っは…、も、お前、激し過ぎ…」 そしてこんな殺し文句を吐くのだから、まったく質の悪い人だ。 キスの勢いのままに押し倒し、目下の彼をじっと見つめる。抵抗は全くない。 「虎徹さ、」 「イワン」 好きだ。 彼が、優しくそう言う。 自分が言おうとしたことを先に言われてしまって、どうにもたまらなくなってまた彼を抱き締めた。 あなたじゃなきゃ 100625 |