58


空座町ーー

空座第一高校、1年3組。



いつも通り、一護は学校に登校していた。


「(俺は今、学校に来ている実感がねぇ。尸魂界のやつらに滅多打ちにあって、死に損なったこと…今ここに、アイツらがいないことも…そして、クラスの連中が誰一人、凛とルキアを覚えてないって事…。)」


クラスの雑談が聞こえてくる。
啓吾、水色、竜貴…

皆、覚えていない。



「(これが尸魂界に帰るってことか…
消えるんだ…この世界からも、人の心からも…あいつらの存在した全ての事実が消えてなくなってしまう……

 真っ白に )」




ーーーーーーーーーーー


放課後、帰宅中の一護。


「(もともとルキアはあっちの人間だ。こっちにはハナからアイツの居場所なんて無かったんだ…。
じゃあ、凛はなんでだ?今、ルキアに比べて遥かな喪失感を覚える…。ガキの頃から一緒だったからか……。
そもそもなんで凛まで連れて行かれた?黒髪のヤツは凛のことを知っているようだったし…。)」


ふと足をとめると、背後から足音がする。
振り返ると、織姫がいた。


「井上。…なんだよ、どうかしたか?」





「凛ちゃんと朽木さん何処行ったの?」






「っ?!」


「どうして急に、皆朽木さん、凛ちゃんのことまで忘れちゃったの?
…黒崎君なら、知ってるとおもって…。」








真剣な表情の織姫に、一護は全てを明かした。








「…じゃあ朽木さん、もといた世界に帰っちゃったの?なんで凛ちゃんまで…」


「ああ…。しっかし、びっくりしたな。まさか、井上に俺らのことが見えてたなんて…。いつからだ?」


「お兄ちゃんのことがあったときから…。」


「っ…そっか……」




「私ね、あのときのこと本当に感謝してるんだ。お兄ちゃんを導いてくれて。きっとおにいちゃん向こうで幸せにしてると思う。
…なんとなくわかるんだ。」


「そっか…」



「うん。朽木さんや、凛ちゃんも向こうで元気にしてるかな…。朽木さんは、家族や友達とかもいるんだろうね。」


「っ…」



ふと一護の脳裏に浮かんだのは、ルキアが兄とよんだ黒髪の男。


「連れ戻さなきゃならねぇ。」


「え?凛ちゃん??朽木さんも…?でも、あっちで幸せなら、それで…。」


「アイツは今、いつ殺されてもおかしくねぇって状況なんだ…。凛なんてそれこそ何があるかわからねえ……」



「…その後はきっとこうね、’向こうに家族がいようとなんだろうと、生きてりゃそのうちまた会えんだろ。死んだらそれでおしまいだぜ。’…黒崎君の気持ちは決まってるんでしょ?」



織姫は一護をみて、微笑む。
そんな一護の手には、固く拳が握られていた。



「アイツらは確かに、ここにいた。居場所なら、ココにある。大体、凛の居場所はもとからこっちだ。

…ありがとう井上。」



一護は走り出した。





「(まずは、ゲタ帽子に凛のこと聞いてやる…!)」







意志を固めた一護は前だけを見ていた。





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