美味しく頂かれた者は

最近、クダリの様子が今までとは違うように思います。クダリはわたくしと違い、常に笑顔でニコニコしていますが、今日を含め最近はいつも以上に機嫌が良いように見えます。なんと言えば良いのか、纏うオーラが違います。見ているこちらまで思わず顔を緩ませてしまうくらい、とても「良い笑顔」をしていました。



「クダリ、最近とても楽しそうでございますね。何かあったのですか?」

「あ、ノボリ。バレちゃった?よく分かったね!ボク達双子だから通じ合っちゃったのかな?」



ずっとクダリ本人には直接核心を突く事はなく、わたくしは遠目でその様子を眺めているだけでございました。しかし、クダリがこんな様子になってからもう4日目になるので、そろそろ真相を知りたいと思ってしまったという事は、所詮わたくしも一人の人間だったという事でございましょうか。クダリを心配する気持ちともう一つ。結局、好奇心というものは心の奥深く、誰にでも持てるものなのでございます。クダリの元へ歩いている途中、ふと最近ギアステーションで働く女性を目にする機会が(それでなくてもギアステーションで働く女性は受け付けや清掃員など、わたくしが普段目にするのは珍しい職種の方たちばかりであるのに)明らかに減った気がしますが、今は良いでしょう。



「双子は関係ありませんよ、クダリ。貴方のその眩しい笑顔にクラウド達も薄々気が付いていますよ」

「え、そうなの!?うわぁ恥ずかしいなー!」



そう言って両手で顔を隠しながら頬を赤らめて笑うクダリは、わたくしと同じ顔でありながらとても可愛らしい。いえ、決してナルシストというわけではなく。そんな無邪気な様子を見て、わたくしは更に話を進めます。



「それで、クダリはどうしてそんなに楽しそうなのですか?」

「えへへ、ノボリになら特別に教えちゃう!ボクね、ギアステーションで働く可愛い子みーんな食べちゃった!!」



そうクダリが今日一番の笑顔とテンションで言い放った言葉を聞いた瞬間、わたくしはあまりの驚きに目を見開き言葉を失ってしまいました。み、みんな食べちゃった、ですって…!?クダリの「食べちゃった」とは、つまり…!?



「く、クダリ!ここは職場です!そういう発言は控えてくださいまし!!」

「えー?元はノボリが聞いたんじゃない」

「そ、そういう話とは思わなかったのです!」

「でも、ノボリこういう話苦手だもんね」



「ごめんごめん」と、特に悪びれた様子もなく両手を合わせてわたくしに謝るクダリに、わたくしは間を置いて「もういいです」と言って溜め息を吐きました。すると、クダリは「あ、そう?」なんて言ってすぐに手を下ろし、またいつものニコニコ顔に戻りました。やはり最初から反省する気はありませんでしたか。まぁ、いつもの事なのであまり期待はしていませんでしたが。



「ここで働く女性を…というと、苗字様でございますか?」

「うん、そうだよ!」

「おや、確か数日前に"苗字様にはまだ手が出せない"と言っていませんでしたか?」

「うん、だから最後の最後に取っておいたの!メインディッシュ!」

「…貴方は苗字様の彼氏でございますしょう?不純でございます」



クダリはわたくしと違い、異性に対する気の持ちようや接し方、付き合い方は少し(いえかなり)異なっております。可愛らしい女性、美しい女性には目がないのです。女性好きな性格はもう定着してしまっているので、もうどうしようもないと諦めていますが、まさかここまで末期とは…呆れて物も言えません。つまりは、夜から朝方まで「食べていた」から女性方は出勤できなかったのでございますね…!は、破廉恥でございます!!



「とにかく、これからは控えてくださいまし。ギアステーションの運営にも支障が…」

「それなら任せて!新しい受け付けさんや清掃員さん、募集しておいたから!」

「そ、そうですか…(わざわざ募集…?)」



どうしてわざわざ募集をかけるのかは分かりませんが、まぁ良いでしょう。クダリはこんな性格ですが変なところは一途で、何人もの女性をお相手にしていますが、結局一番愛しているのは苗字様なのですから。それこそ、職場であるギアステーションでもたまにイチャイチャしたりしてクラウド達が注意していたくらいですし、わたくしも口をすっぱくして言いつけていたのですから。本当に良いカップルです。ここ何日かは目にしていませんが、クダリに朝方まで愛されていたのでしょう。身体が痛くて動けないのかもしれませんね。もしそうだとしたら、クダリは一体何時間愛したのか…破廉恥です。やはりお説教ですね。



「…クダリ、苗字様はどうでしたか?」

「うん!とっても美味しかった!!」



自分の職場、それも昼間からこのような下品な質問は正直どうかと思いましたが、クダリの悪意のない(いえ、表面上はないけれど裏では何か企んでいたかもしれません)笑顔を見て、わたくしはまた溜め息を一つ吐きました。




(果たして幸せだろうか?)




元ネタ:意味が分かると怖い話






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