それは紛れもない悪意

※ 名前変換無し
※「awake or asleep」と同一夢主
※ 出てこないけど本命は雁夜さん
※ 時臣と臓硯を超嫌ってる
※ 雁夜さんの敵は全て自分の敵






冬木市は深山町の高台に聳え立つ遠坂邸。その洋館の一室にてワインを一服していた遠坂時臣は、周りを取り巻く空気に違和感を覚え、グラスを置き、椅子から立ち上がる。そして、部屋から出て長い廊下を歩き、下の階に降りて広い玄関まで来たところで立ち止まる。明らかに外から凄まじい程の魔力量が蔓延っている。サーヴァントの気配は全くなく、まさかこの遠坂邸に魔術師単体で来たのかと時臣は考えたが、それはあくまで一つの可能性という事で思いとどまる。

ゆっくりとした足取りでドアに近づき、慎重にドアノブに手をかけ、回す。ガチャという金属音と共にドアを押し、外に出る。辺りは不気味な程静かで、月明かりが差さなければ周りの景色は認識し難い。

時臣は、息をするのも億劫になるような重く異質な魔力が蔓延る遠坂邸の庭を見渡し、ある一点に視界を止める。闇に溶け込むように、小さなシルエットが視界に映ったのだ。時臣は訝しげに顔を歪め、その認識し難い小さなシルエットを凝視する。すると、時臣がそのシルエットの正体を正確に認識する前に、凛とした声が静かな遠坂邸の庭に、時臣の耳に嫌に響いた。



「ーーお前が遠坂時臣か」



疑問符も付けず、まるで確認するかのような言葉に、時臣はますます顔を歪める。やがて目が闇に慣れ、月明かりが小さなシルエットを照らす。そこで時臣は驚きと困惑に目を見開く。目の前に浮かび上がったのは、十代後半くらいの見たことのない少女だったからだ。



「ーーふむ。雁夜さんが憎む男だから、確実に殺す為にきちんとこの目に焼き付けておこうと思ったんだが……」

「……なんだって?」



少女の呟くような言葉の中のある単語に、時臣はいち早く反応した。



「……雁夜?間桐雁夜、の事かい?」

「お前の口から雁夜さんの名前がフルネームで出てくるのは大いに不愉快だが、そうだ」



顔を歪めながら全身から「不愉快オーラ」を撒き散らす少女は、時臣に軽蔑するかのような眼差しを向ける。一方時臣は、何故見ず知らずの少女にそこまで言われ軽蔑の眼差しで見られなければならないのか、全く分からないでいた。しかしそれでも平静を装い、時臣は少女に問いかける。



「あの男と、手でも組んでいるのかい?」

「私が雁夜さんと直接的な協力関係にあろうがなかろうが、雁夜さんの敵は私の敵。雁夜さんを苦しめる全てを排除し、私が雁夜さんを救う」

「それをわざわざ忠告する為に、この遠坂邸にまで足を運んだのかい?」

「そう。そして、雁夜さんが聖杯を手にした時、必ず桜嬢を。私が聖杯を手にした時には雁夜さんと桜嬢の二人を間桐の糞爺から救い出す」

「……さく、ら?」



少女の淡々とした話の内容と出てきた名前に、いよいよ時臣は訳が分からないという感情を表に出し始めた。何故、間桐に養子に出した娘の事を知り、あまつさえ「救い出す」などとほざいているのか。



「ーー忠告は以上。これ以上ここに居る理由はない、私は帰る」

「……君は、一体……?」

「……貴様に名乗る名は無い



鋭い眼光とどす黒い魔力の放出に、時臣は咄嗟に口元を抑えた。気を抜けばあまりに重苦しい魔力量に嘔吐してしまいそうになる程の、凄まじい魔力の波動。それは少女の怒りと憎悪の強さを表すかの如く遠坂邸を覆い込み、時臣の全身にまとわりつく。まるで、先程の言葉自体に呪いという名の魔力を込めたかのように。



「苦しいか?痛いか?吐きそうか?安心しろ。雁夜さんが受けている苦しさや痛みや吐き気よりは遥かにマシだから」

「ぐっ……!」

「己の娘をーー桜嬢を間桐の糞爺に引き渡した事、せいぜい後悔するといいよ」





そう吐き捨て、少女は身を翻し再び漆黒の闇に溶け込むように消えて行った。





(こんなのはまだ小手調べ)
(ゆっくり時間をかけて絶望へ叩き堕とすから)
(ふむ……あの娘、我を楽しませてくれそうだ)
(金色の英霊は少女を見下ろして嗤った)




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もし雁夜救済連載するとしたら、本編での夢主は終始こんな感じ。むしろ雁夜さんと自分のサーヴァント以外にはまともに会話すらしないかも。特に臓硯・時臣・切嗣とは相性がすこぶる悪い。切嗣と悪い理由は、「多数を救う為に少数を切り捨てる」切嗣と違い「一人(雁夜)を救う為に多数を切り捨てる」夢主はお互い相入れない存在だから。でも根本は似ているので同族嫌悪に近い。夢主も負けず劣らず外道。雁夜の魔力を吸い取る存在であるバーサーカーも嫌悪している。

やりたいなぁ、雁夜救済連載。落ちは雁夜さんだろうけど、面倒な面子に興味惹かれたり好意を持たれたりする夢主だったら良いなぁ。


title by 水葬






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