今日の天気は雨のち笑顔

雨というのは、人の心を静かに落ち着かせるのと同時に、心をドン底にまで沈ませる効果も併せ持っているらしい。例えば、普段外で遊んだりするような者にしてみたら、雨という天気は最悪以外の何物でもない訳で。

そう。例えば、目の前の彼とか。



「小平太、いい加減溜め息を吐くのをやてくれない?こっちまで気分が沈むわ」

「……だって名前!今日は体育委員会で裏々山へ塹壕掘りに行った後バレーをしようと張り切っていたのに!」

「よし、よくやったわ天気。お陰で暴君から後輩達の命を救えたわ」

「おいおい、大袈裟だぞ名前」

「いえ、私は間違った事は何一つ言っていないと思うけど?」



いつも体育委員会の活動内容を遠目から見ている私の意見としては、まさに『命を救った』という言葉が的を射ていると思う。雨で中止になった委員会活動に泣きながら嬉しがっている後輩達の顔が目に浮かぶ。良かったね、みんな。

というか、今日の小平太はまだマシだ。小平太は基本的に欲望に忠実だ。自分がしたいと思った事に対して、例え自分以外の全員に反対されようとも断固拒否し、己の欲望を満たすためには手段を一切選ばないし、躊躇なんてしない。おまけに手加減という言葉は初めから存在しない(小平太の手加減は決して手加減していない)。そしてそれが、小平太が『暴君』と呼ばれる所以である。てか、改めて考えてみるとかなりはた迷惑な上に厄介だなこいつ。



「まぁ、今日は大人しくしてなさい」

「……暇だー!!あまりにつまらな過ぎて何でも壊せる勢いだぞ!」

「留のストレスが増えるからやめたげなさい」



本当に迷惑で厄介な奴だなこいつ!今の小平太はあれだ、「取り扱い注意」とか書いてある看板が一番似合うな。って、そうじゃなくて!誰かこいつを大人しくさせてください。長次来てよ長次。



「長次は委員会だ!あと少しで終わるぞ!」

「人の心を読むな、人の心を」

「だが名前、全部声に出していたぞ」

「あらやだつい本音が」



そんなコントをしつつも、小平太は未だに「暇だー!」と叫んでいる。説明が遅れたが、ここは食堂だ。お昼時ではないし、食堂のおばちゃんも今日は足りなくなった食材の買い出しのため今は食堂には人っ子一人いない。



「他にする事ないのかアンタは」

「じゃあ、今日は名前と一日一緒に過ごす!」

「そう、私と……は?」



目の前の暴君が間髪入れずに高らかに宣言するもんだから、すっかり腕を組みながら頷きかけてしまいそうになるのを思いとどまる。その際に間抜けな返事を返してしまったが、今回は気にしない事にしよう。それよりも、さっきの小平太の発言なんだが。私と、今日一日を一緒に過ごす?いやいや、それは無理があるだろう。だって私くのたまだし。長屋が違うから部屋で過ごせないし、そもそも忍たま長屋もくのたま長屋も異性の出入りは禁止なのだから。この体力バカは分かっているのだろうか。



「長屋には行けない、外は生憎の雨。そんな状況で、どうやって一緒に過ごすのよ?」

「なら、図書室に行こう!」

「……小平太が図書室に行こうだなんて、明日は槍が降るんじゃないかしら」

「そうか?」

「そうよ。書物を読もう物なら物の数秒も保たずに投げ出してバレーしようとか言って駆け出して行って、最後には騒がしくされて怒りに笑う長次に説教されるのがオチじゃない」



そう溜め息を吐きながら呆れ顔を小平太に向けると、突然小平太が私の右腕を掴み反対の腕を高く掲げながら大股で食堂から出ようと入り口に向かって歩き出す。



「まぁ、細かい事は気にするな!いけいけどんどーん!!」

「ちょっ、痛っ!?ま、待ちなさい小平太!行くから引っ張らないでよ!」



小平太の馬鹿力で若干涙目になりながらも必死にそう言うと、小平太は悪戯っ子のような顔を浮かべて「嫌だ!手を繋いで行くぞ!」と満足気に笑った。





(腕を掴んで何言ってるのよ!)
(名前に触れられるなら、なんでもいい!)
(……っ!?バッカじゃないの!?)






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