awake or asleep

※何かもう色々おかしい
※シリアスだけど誕生日夢で愛有り
※暖かい目で見守ってください











「…………あ」



歩を進めていた足を、ふと止める。私の感じ取った、とある人物の魔力の波長が、一瞬乱れた気がした。



今日は3月22日。大好きな雁夜さんーー第四次聖杯戦争でのバーサーカーのマスターである間桐雁夜ーーの誕生日。もちろん、今は聖杯戦争の真っ只中な訳だが、それでもこの悲しくもめでたい日を祝いたかった。夜の冬木市は、3月といってもまだ少し肌寒い。今日は薄いカーディガンしか上に羽織っていないからだろう。出掛ける前に雁夜さんに「少しでも暖かい格好でね」と言われていたのを今さらになって思い出した。



ーーいや。今は、そんな事よりも。



つい先程感じた魔力に、私はもう一度静かに目を閉じ、神経を研ぎ澄ます。すると、すぐに乱れた魔力の波長が私の神経を刺激した。チリチリと焼けるような痛みに、不安定で常に一定しない魔力の波。この乱れようは、間違いない。こんな所で、誕生日プレゼントを買いに行こうとしている場合じゃないーー!



ソレを理解したと同時に、私は踵を返して元来た道を逆走した。










雁夜さんの引き当てたサーヴァントである、【狂戦士】バーサーカーは魔力消費量が膨大で、過去の聖杯戦争を見ても例外なくマスター(魔術師)の魔力切れで敗退しているクラスだ。おまけに、雁夜さんはあの思い出すだけでも忌々しい糞爺(もちろん間桐臓硯の事だ)から受けた一年間に渡る無茶な魔術鍛錬と刻印虫のせいで、弱りきっている。体力や気力なんて、ある訳がないのだ。そして、あの糞爺はそれを理解した上で雁夜さんに聖杯戦争を続けさせている。

でも、私もきちんと理解はしている。雁夜さんは、桜嬢をあの糞爺から救うために、必死に戦っている事を。その事実を知っているから、私は何も言えない。



走って乱れる呼吸を飲み込み、自宅のドアを力任せに開けた。今日は雁夜さんには内緒で誕生日プレゼントを買いに行っていたため、私の部屋に来るよう先に言っていたのだ。すぐさま靴を脱ぎ捨て、一人暮らしの狭いリビングに向かう。すると、案の定息を乱して咳き込みながら血を流す雁夜さんの痛々しい姿が、そこにあった。



「……雁夜、さん」



とりあえず、楽にさせなければ。そう思うが早いか、私はすぐさま布団を敷いて頑張って雁夜さんを寝かせ、台所でタオルを冷やし桶に氷水を入れて再び雁夜さんの元に急ぐ。

汗を拭き取り、血の付いた口許を丁寧に拭う。しかし、一向に息の乱れが治る事はない。当たり前だ。ただの頭痛や風邪とは違う、魔力消費量の問題なのだ。足りない魔力は、消費した魔力はーー足してやればいい。満たしてやればいい。簡単な事だ。他の誰でもない、私がーー彼を楽にしてやればいいのだ。



「……零したら、駄目だからね。雁夜さん」



そう小さく一人呟いて、雁夜さんの顎に右手をもっていき、軽く上を向かせる。そして、そのまま顔を近付け雁夜さんの唇に私のソレを押し当てる。途端に、自身の有り余る魔力が吸い取られていくような感覚に陥り、身震いする。魔力を供給するには、体液が一番確実。つまりは、キスが一番手っ取り早い方法なのだ。

雁夜さんの口内は、思った通り熱い。その、予想以上に熱を持った彼の舌に、私は自身の舌を絡ませる。唾液と唾液が淫らに絡まり合う音が部屋に響いて、私は変な気分になる。魔力供給のためだと自分に何度言い聞かせても、毎回こんな気分になる自分が、怖くなる。



「……っん、はぁ……!」

「……っは、!名前、ちゃんっ……!?今日は出掛けてたん、じゃ……!?」

「……雁夜さんの魔力の波長が、乱れてたから。それどころじゃなくなったの」



目を閉じてキス(という名の魔力供給)に没頭していると、聞き慣れた愛しい声が私を呼んだ。その声に応えるようにゆっくりと目を開けると、雁夜さんが目を見開いて私を見ていた。



「名前ちゃん、君はまた……」

「……うん。魔力供給」

「そうか……ありがとう、名前ちゃん。だいぶ楽になったよ。でも、もう大丈夫だから、」

「……駄目」

「……え?」



大丈夫と言って上乗りになった私を退かそうとする雁夜さんを、私は制する。すると、雁夜おさんは心底驚いたようにまた目を見開いてキョトンと私を見つめた。



「……まだ、足りない」

「え?いや、もう十分魔力貰ったけど……」

「……ううん。私が、足りないの」

「……ん?名前ちゃん?」



悟ってくれるかどうかとカマをかけてみても、雁夜さんは全く気付かずに頭に疑問符を浮かべている。多分、今日が自分の誕生日だと分かっていないのだろう。まぁ、聖杯戦争の真っ只中なのだから当たり前だろうけど。



「……ねぇ、雁夜さん。今日、何の日か、分かる?」

「…………?」

「……今日は、雁夜さんの誕生日。だから、まだキス、し足りない」

「……あ…………っ!?」



私の問いかけに更に疑問符を浮かべ、私の解答に今度は耳まで真っ赤にさせる。口許を隠しながら俯く雁夜さんに、私はキュンと胸が締め付けられる。可愛い。目の前の彼が、とても可愛い。



「……だから、もっとキスしたい。それ以上の事も、シたい」

「……全く。毎回この息苦しさに目を醒ましてみると、名前ちゃんは毎回キスで魔力供給してくるし。最近やっと慣れたきたけど、今日は……良い意味で心臓に悪いよ、名前ちゃん」

「……駄目?」

「その聞き方は、ズルいんじゃないかな」

「……誕生日おめでとう、雁夜さん」

「……うん。ありがとう、名前ちゃん」




awake or asleep
(また苦しくなったら、私が満たしてあげる)
(この子という温もりを、俺は失いたくない)
(寝ても醒めても、キミが居る幸せ)



title by 水葬


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雁夜おじさん誕生日おめでとうございます!大好きです!!

いやぁ、この子で雁夜さん連載をしたいですね!お互いラブラブな相思相愛で、年齢的にかなりアブナイ連載したいですね!!←雁夜さんを救うために、夢主がひたすら奔走する救済夢書きたいです。

そしてこの後の展開がどうしても裏にしかならない件\(^o^)/どうして私は短編の終わり方が裏々しく終わるんだちくしょう……続き書きたくなるじゃんか……!!←






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