「大丈夫」と言って
「ねえ」
僕の手を握ってと言うと君は仕方ありませんね、なんてはにかんで手を握ってくれる。僕のお嫁さんは優しくて本当に可愛い人だ。
「総司さんは意地悪で甘えん坊ですね」
「正反対だよ」
「でも、本当にそうなんですよ」
ぎゅうと彼女の手を握ると返ってくる温もりに思わず笑みが零れる。
「君は優しくて本当に可愛いお嫁さんだよ」
「…もう」
「そしてとても強い」
最初はあんな小さな女の子だったのに、こんな強い女の人になったのはいつだったのだろうか。彼女は道を踏み外しそうになる僕の手を掴みいつも導いていてくれていた。血に飢えた獣のように刀を振り回していた頃が懐かしい。僕は結局強かったのか弱かったのか分からないや。
「げほっ」
でも弱かったのかもしれない。今なんか血を吐くこともしばしば。刀もとうの昔に手から離れた。今僕の手の中にあるのは彼女だけ。
その夜、僕は大きな発作を起こした。
「っげほ、ごほ…!」
僕のお嫁さんはすぐに手当てをしてくれたけど、溢れ出る血は底を知らなくて僕はいつか体の中の全てが出てしまうのではないかと少し怖くなった。
「…ね…え」
「無理して話してはいけませんよ」
「僕は…怖いよ」
彼女の手がぴたりと止まった。
「怖い。病気、が…。
それ以上に…ごほ…っ、君を失うことが…」
君が好きだから。
いつか失ってしまうのも、君を1人にしてしまうことも。
この両手におさまるものだけ、僕は守りたかったのに。
それすらも出来ないなんて。
「ねえ…お願い」
「大丈夫」と言って(君の目はどこか優しかった)
*
共に歩むさまに提出。
素敵な企画ありがとうございました!
なんだかんだヒロインも一緒にいっちゃうのかもしれない。けどそれも幸せなはず、彼らにとって。