Iam loving3





「・・・・・・だーもう、どうすりゃいいんだよ!」


太一は悩んでいた。それはもう悩んでいた。下手をしたらテスト勉強以上に頭を悩ませていた。ジュンから宿題を出されて、もうすぐ三週間だ。ジュンからの反応はどうとらえたらいいのか、太一は正直わからないでいる。はぐらかされているのか、遠回しに脈なしだといわれているのか、ぐちゃぐちゃ考えるのは正直得意じゃない。ジュンが素直になれないなら手紙でも書けといったのだ、たしかに口に出すには気恥ずかしいけど、いざ文字に起こすのもまた結構な羞恥を伴う作業だと太一は初めて気づいた。

パソコンを前にして、あーとかうーとか言いながらうなっている太一の横から伸びてくる手がある。

「何書いてるの?メール?」

「うわあっ!?な、なんだよ、光って見るなよ!」

あわてて×ボタンを連打する。

「なんで隠すの?」

「なんでもねーよ!」

「?変なお兄ちゃん」

ピンクのワンピースを着ている光はどこかに遊びに行くようだ。

「どっか行くのか?」

「うん、今日みっちゃんの誕生日だから。これプレゼント」

「あー、あんとき買ってたやつ?」

「うん。お兄ちゃんはまだなの?」

「なにが?」

ジュンさんの誕生日プレゼント。まだいーだろって買わなかったけど、もう買った?」

「うっせえ、こっちだっていろいろ考えてんだよ」

「ほんと?ホワイトデーの時みたいにマシュマロ買おうとしてない?」

「だーから、あげるお菓子に意味があるとか、そんなの知るかよ!そこんとこは感謝してるけどさ!」

ジュンさんなんて?」

「おいしかったってさ」

「え、それだけ?」

「そーだよ、わりーかよ」

「お兄ちゃん、なんて渡したの?」

「・・・・・・いーだろ、そんなの」

拗ねたようにふて腐れる太一を見て、光は笑う。これはいいことを聞いた。誕生日会でみっちゃんたちと王様ゲームするとき、きっと回ってくる内緒の話とかそういったのに使える。そう思った。よからぬことを考えている光に気づいたらしく、何笑ってんだよと太一はじと目だ。なんでもないと光は首を振った。ほんとかあ?と太一は訝しげだ。

大好きなお兄ちゃんがとられるのは正直、光は嫌だなと思うこともある。お兄ちゃんの一番じゃなくなるのは嫌だなって。でも、ずっと頼れるお兄ちゃんだった、光にとってはいつだって守ってくれるお兄ちゃんがどうしようもないとき、頼る人がいるという当たり前を光は去年学んだ。お母さんと久しぶりに会えた時泣きじゃくっていた太一を見たときが最初で。次がデジタルワールドで熾烈を極めたダークマスターズとの戦いで。あとはもう、数え切れないくらいあった。その積み重ねが今の太一の初恋なのだとしたら、そっかあ、ってなるのだ。光の気持ちは別問題として、そういうこともあるんだなって。


小学校3年生になった光はちょっとだけ大人になった。ミミがそういったドラマとか、漫画とか大好きで、ジュンも友達の影響か結構詳しくて、そういうのを貸してもらえるようになったのもある。お兄ちゃん子だった光はその漫画を読んだりアニメをみたりすることはあっても、女の子向けのジャンルを見る機会は以外と無かった。空はあんまりそういうの好きじゃないし。ミミの布教活動はそりゃもう熱心だった。女の子なんだからもっとかわいいを楽しまなきゃ、とシンプルな動きやすい服ばかりな光を買い物に連れ出した。インドア派なジュンは百恵が増えたって嘆いていたけれど、光の周りにはいろんなタイプのお姉さんが一気に増えてしまったのだ。好きなものも、ジャンルも、なにもかも違うのに、デジモンという共通点で結ばれている、そんな不思議なお友達がたくさんできた。しかも空がサッカーをやめて、お母さんの手ほどきを受けて華道を習い始めた。講座発表会にお邪魔したら、綺麗な着物を着てお茶を点てていた。正直どきどきした。みんな、変わっていく。なら、私もちょっと変わりたい。そう思った。だからピンク色のワンピースを着ているのだ。今までの光だったら、あんまりこういうのに興味は示さなかったから、お母さんはちょっとうれしそうだったりする。

うーんうーんうなっている太一の横を隙ありとばかりにのぞき込む。買ったばかりのお気に入りを翻し、光はパソコンの横に立つ。うわっと大げさに驚いている太一の横で、マウスを操作する。

「はい、送信」

「うわあっ!?ちょ、何してんだよ、光!」

「お兄ちゃん送るんでしょ?」

「そーだけどさー」

送信完了の文字に太一はどうしようとぐるぐるし始める。らしくないがたくさん見れて、これはこれで楽しかったりするのだ。光は。あのメールだって、みんなでお祝いすることになっているから、それとはまた別にどっか行こうと誘うメールだったのだ。想いを伝える言葉はひとつもないのに、ここまで太一は悩んでいる。あの太一がだ。帰ってくる頃にはなんかあったらいいなと思う。光のちょっと違う普通じゃない体質について告白されたとき、大輔みたいねといいながらあっさり受け入れてくれたジュンである。怖いと泣きじゃくるたびに何一つ否定されず、抱きしめてくれたお姉ちゃんがいる。同級生の男の子がとてもうらやましくなってしまうくらいには、光はジュンに好感を抱いている。

「いってきまーす」

お兄ちゃんを置き去りにして、ちゃっかりとした妹は出かけてしまったのだった。



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