デジモンアドベンチャーbi
小学校に向かう通学路にて、勢いよく走ってきた幼なじみの豪快なおっはよーが飛んでくる。珍しく朝練がない寝坊すれすれの登校時間、あくびをかみ殺しながら歩いていた少年はランドセルごしの衝撃にふっとびそうになる。なにすんだよ、と恨めしげに見上げてくる少年に、メガネをかけ直しながら彼女は笑った。
「ねー、大輔。今日来てよ、パソコン部」
「えー、なんでだよ。活動日じゃねーだろ」
「あーもう、やっぱ忘れてる。パソコン部は存続の危機だっていってるでしょー!いいだしっぺなんだから新入生入れる手伝いしてよね!」
「うっげ、まじかよ。やっとサッカーレギュラーになれっかもしれないってときに」
「ならせめて昼休みー」
「わかったよ」
「やりい!新垣先生説得する方法考えとくから、大輔は後輩君とか見繕ってね!」
「はあ!?まさかの丸投げかよ!?」
「部長は忙しいのよ、副部長?」
「期待はすんなよ」
「最悪名簿に名前書いてもらうだけでもいいから、ね?ね?お願いね!」
はあ、と海より広く谷より深いため息をつきながら、がしがし頭を掻いた大輔と呼ばれた少年はめんどくさそうにうなずいたのだった。大仕事が終わったとばかりに幼なじみは鼻歌交じりで隣を歩いている。とうとう、今日がきてしまった。どうしよう、という不安ばかりが浮かんでは消えている大輔は浮かない顔を隠すことができない。なにを勘違いしたのか、幼なじみは責任を感じてしまっていると思ったようで弁解にはいる。
「あ、でもでも、伊織は入ってくれること確定してるから、あと2人でいいからね?」
「2人もかよ、多くね?」
「仕方ないでしょー、部長たちお台場中学校いっちゃったからこっちくる暇ないって断られちゃったんだから」
「だよな」
「弱小部はつらいわくっそう」
おどけた様子で笑う幼なじみにつられて大輔は笑った。
どこで間違ってしまったのだろうか。
光が丘テロ事件は仕方ないのだ。大輔は初代選ばれし子供ではないし、お台場霧事件が発生する前に引っ越すなり転校するなりして巻き込まれれば問題ない、とテレビ越しにニュースを見ているだけだった。お台場集合団地に引っ越すと聞いたとき、いよいよきたのかと覚悟したはずなのに。3年前のサマーキャンプの時は参加できたし、太一たちの冒険を見届けたし、キャンプから帰ったあとバケモンたちに襲われてひどい目にあったはずだ。そのときのことはぼんやりとしか思い出せないが、ホメオスタシスによる記憶操作があっただろうから、ネットで拾ったニュースで脳内保管したにすぎないけども。問題はお台場霧事件のあと、大輔の家族は引っ越してしまったことだろう。京が通う小学校に転校した大輔は、ここの小学校に通い始めて3年目になる。京の家族は新しくできたマンションに入ったテナントでコンビニを始めたが、今更転校はイヤだとごねた子供たちの要望、通えなくもない距離であるという理由から転校しないままだ。
大輔は太一と知り合う機会に恵まれないまま、今に至る。もちろん先輩の応援にいった大会で、太一や空、光、光子郎を目撃することはあったし、それなりに会話もした。それでもほかの小学校という壁は大きい。こんなことなら1年生の時から入っておけばよかった。ドラマCDで太一のことを何となく覚えていて、それからサッカー部に入った感じだったから、それに倣ったのが裏目に出た。小学校2年生のとき転校したせいで、サッカー部でみんなと知り合いだったという事実を作ることができなかった。京が2000年の夏休みのささやかなネット上の大バトルを目撃したはずなのに、いまいち覚えていない、みたいなフラグはちょくちょく見えるのになにひとつつながらないままここまできてしまった。どうしよう、が先に来る。
「そんな心配しなくても大輔が声かけたらきてくれるでしょ、一人や二人」
「幽霊部員ならなー、まあなんとか」
「それで十分よ、十分。あとはいいわけを考えるだけね、よーしファイトだ私!」
この小学校にはパソコン部がなかった。でも、大輔も京も伊織もいるのだ。せめてパソコンが自由に使える時間を確保しないと、もしもの時ほんとうに詰んでしまう。入りたい部活もクラブもないとコンビニの手伝いをしていた京に、パソコンサークルを持ちかけた大輔である。もちろん部長直々のお願いには答えるつもりでいた。それと引き替えにサッカー部の後かたづけ当番はいろいろと変わってあげないといけない。サッカー部だってないがしろにはできないのだ、レギュラーにならないと天才少年として頭角を現し始めている一乗寺賢と知り合う機会が永遠に失われてしまう。2年前の小学生のひき逃げ事故の記事は覚えているのだ。もうなにも起こらないことは絶対にない。父親が海の向こうで死んだと泣きじゃくりながら京と大輔に打ち明けてくれた伊織を飛行機に送り出したあの夜から、大輔の中で関わらないという選択肢は消え失せているのである。
できるだろうか、たった3人で。誰もデジモンのことを知らないのに。うちに秘めた不安をあざ笑うように、校門をくぐり抜けた大輔にサッカーボールが転がってくる。おーい、と当然のように誘ってくる友達という日常が迫り来る。大輔はなにも考えたくなくてグラウンドに向かって走り出した。約束忘れないでよねー!って叫ぶ幼なじみの言葉には、おざなりな返事だけ返しておいた。
「ありがとね、大輔。ほんと今日はたすかったわー、こういうとこきっちりしてるからほんと助かる」
「じゃあポテチな、ピザポテト」
「うっぐ、抜け目ないわね。わかったわよ」
「すいません、大輔さん。僕も誰か連れてきたらよかったでしょうか」
「あー?いいっていいって。だって伊織、クラブ初めてだろ」
「でも・・・・・・」
「っつーか、よく伊織のじーちゃん許してくれたよなー。めっちゃこえーじゃん」
「京さんと大輔さんがいるっていったら許してくれました」
「なんだそりゃ」
「ま、当然よね。私たちの仲だもん」
「は?」
きょとんとしている大輔に京と伊織は顔を見合わせて笑った。
「なんだよ、お前ら。無視すんな!」
「拗ねないでよ、大輔」
「そうですよ、ほめてるんです」
「ぜんぜんうれしくねえ」
「そーいうとこが大輔よね」
「どーいうとこだよ」
「なーいしょ」
「はあ?」
疑問符がたくさん飛んでいる大輔に京はひとしきり笑ったあと、やっとできあがった書類を職員室にいる顧問の先生に持って行くと出て行った。サークル存続に必要な人ぎりぎり5名分、そして5名集めてきたら今年もやってあげるといってくれた技術の先生である。期限ぎりぎりの達成だった。あぶないあぶない。大輔は京が帰ってくるまでネットでもして遊ぼうといいながらネットをつなぐ。
「いいんですか?」
「いーんだよ、いっつも遊んでるだけだし。たまにタイピングとかしてそれっぽいことするけど」
「タイピングですか?」
「そーそ、伊織もやるか?」
「はい!」
ローマ字表を引っ張り出し、大輔は伊織がローラー運んでくるのを待ちながらパソコンのファイルを開く。突然、知らないフォルダが開かれた。そして鮮やかな光がディスプレイを照らす。完全なる不意打ちだった。光の直撃を食らった大輔はたまらず目を覆う。大輔、伊織、そして扉の向こうに消えていく。堅い感触が膝に落ちた。
「なな、なんですかこれ!?」
「うっあ、まぶしかった、目がしばしばする」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねー、なんだこれ?」
思いっきり目をつむっても光の残像が消えてくれない。心配そうに伊織がやってくる。どだだだだっと足音がして、豪快に扉を開いた部長が帰ってきた。
「なにこれ、パソコン室からとんできたんだけどー!って、大輔、あんた大丈夫!?」
「やっべえ、目が死んでる!」
「保健室いく?」
「や、そこまでやばくはねーけど、あーやっと収まってきた」
「よかった・・・・・・ところで京さんにもきたんですか?」
「そうそう、そうなの。なにこれ?」
「そんなのしらねーよ、いきなりパソコンからぶっ飛んできたんだ」
「パソコンから?」
大輔の指さす先には、知らない画面がディスプレイに表示されている。京はおそるおそる近寄ってみる。どうやらカーソルが仕事をしないようでまったく動かないという。かちかちやっている京の隣にやってきた伊織と大輔は機械をぽちぽちしてみるがデジタル時計と意味不明な英単語が表示されるだけでただのおもちゃでしかない。説明書もなしで渡されても意味不明である。あーもうなにこれ!と京はいらいらしながら声を上げる。ハッキングされていることはわかるのに、その発信元がデジタルワールドとかいう意味不明なサーバらしい。所在地がデジタルワールド、サーバの名前もデジタルワールド、なるほど意味がわからん状態である。大輔はそれとなく後ろを向き、謎のデジタル時計をかざす。大輔のデジタル時計に反応した画面が切り替わる。突然の変化に驚く京の後ろで大輔はどーした?とのぞき込んだ。
DIGITAL GATE OPEN
その表示と共に3人は光の濁流に呑まれて消えた。
「いってえええ!お前らはやくどけよ、つぶれるーっ!!」
大輔の悲鳴が森に木霊する。大輔の声に我に返ったらしい京と伊織はあわてて退いてくれた。近くには壊れかけのパソコンが転がっている。どこをどう見てもここからきたのだ。体の節々が痛む。大げさに痛がりながら立ち上がった大輔はあたりを見渡す。ここどこ、とさすがの京は不安でたまらないようで、心なし大輔との距離が違い。伊織もあまり離れたくないようであたりを見渡しながら大輔たちから離れようとしない。
とうとうきてしまった。先導者のいないまま、デジモンカイザーのいる世界に。大輔は二人の不安をかき消すように、自分を鼓舞する。
「どこだここ?!」
「そんなの私が聞きたいわよ!」
「どこなんでしょう、見たことないです」
「えーっと、パソコンに吸い込まれてー、あ、あれか!?」
はじかれたように京と伊織がパソコンをみる。デジタルゲートは開きっぱなしであり、見慣れた教室がうつっている。大輔が何の躊躇もなく手を伸ばしてみるとぐにゃりとゆがんでしまった。
「えっ、えっ」
「なんだこれおもしれえ!」
一気に頭をつっこんだ大輔に常識人二人のつっこみが飛ぶ。デジタルゲートは律儀に大輔をふたたび吸い込んでくれた。もどれる、ということが判明すればもう二人の反応は安堵に変わる。
「どこなんだろー、ここ。パソコンの中?」
「東京じゃないですよね」
「もしかしてゲームの中か?そんで、これで入れるとか!」
脳天気なほど明るい大輔にだいぶんほぐされた緊張感である。京たちは謎の世界をちょっと探検することに賛成してくれたのだった。
大輔たちが迷い込んだのはファイル島だった。先代の選ばれし子供たちのパートナーが守護デジモンをしているはずだ。ダークタワーがたっていたら進化できずに退化しているはずである。はやいところ、おもちゃのまち、ファクトリアルタウン、はじまりのまち、ミハラシ山のどれかにいって助けてもらうべきだ。選ばれし子供を知っているほかの守護デジモンたちなら、このデジタル時計を見せればわかってくれるはずだ。
森を抜けるため、ひたすら大きな道を歩いた。やっと開けた道に出たとき、そこに巨大な黒い塔がみえた。これはまずい。非常にまずい。はじまりの街はエレキモンしかいない!大輔は焦る内心をひた隠しながら、頭上にいくつもそびえる巨大な黒い塔を指さす。空を突き刺す黒い針にいやな感じを覚えるのはみんな同じようで、あれについて聞いてみよう、とようやくみえたはじまりの街の看板をくぐった。
「誰だ、お前たちは」
そこに現れたのは、エレキモンではなかった。レオモンでもない。ライオンみたいなデジモンだった。
「え、な、なに、ライオン?!」
「しゃ、しゃべってる・・・・・・僕たちの言葉がわかるんですか?」
「お前たちは・・・まさか、カイザーの仲間か?」
「は?」
きょとんとしている大輔たちに獣型のデジモンは、警戒は解かないもののいやな気配はないと不思議がっている。
「なあ、ここってどこなんだよ?俺たち、これにつれてこられたんだけど」
デジタル時計を差し出した大輔に、獣型デジモンの目の色が変わった。
「それはっ・・・・・・!やはり、貴様等、カイザーの仲間か!」
「だからカイザーってなんだよ?」
「お前たちとにたような奴だ。平和だったこの世界に現れて、突然世界征服を始めた。あの塔が建てられると俺たちは進化することができなくなる。なすすべがないまま、俺たちはカイザーの手下のデジモンにすみかを奪われたり、無理矢理働かされたりしているのだ。選ばれし子供は世界を救う英雄だと聞いていたが話が違うぞ、どういうことだ!」
「だーかーら!俺たちにいわれても知らねえよ!気づいたら俺たちはここにいたんだよ!」
「気づいたら?やはり、別の世界からきたのか、カイザーと同じ世界から!」
「どうする、大輔。なんか歓迎されてないみたいだけど」
「僕たち、ここにいちゃいけないみたいだし、帰りませんか」
「えー、せっかくきたのにもう帰るのかよ、つまんねえ。でもしかたねーか」
これ以上長居するとライオンのようなデジモンに攻撃されてしまいそうだった。はあ、とため息をついた大輔たちは始まりの街をあとにした。どうやら選ばれし子供を知らないデジモンとあたってしまったようだ。運がない。大輔たちは森に引き返した。
「そういえば、さっきからこのデジタル時計、ぴこぴこなってるけどなんだろう?」
「え?」
「ほら、ここ」
「あ、ほんとだ」
「なんか気になるしいってみるか?」
「さんせー!」
京たちは迷わずの森を抜け、先に進んだ。
そこにあったのは洞窟である。おそるおそる進んでいくと、なにやらミミズのはいつくばったような文字が並んでおり、それにふれるとまるで波紋のように光が広がった。結構な広さである。デジタル時計は光っている。それを頼りに進もうと洞窟に向けると、まるで歓迎するかのようにすべての文字列が発光し、まるで蛍光のようにあたりをてらす。一様に明るくなった。すごい、すごい!とまるでSFのような世界に京がうれしそうに笑う。もっと先に行ってみよう、と好奇心が先を急がせる。さっさと帰りたい、という気持ちは2対1に押し切られ、伊織はあと少しだけですよ、としぶしぶうなずいてついてきてくれた。
ダイノ古代境、とデジ文字でかかれていることを確認する。大輔は冷や汗が伝うのがわかる。ここらへんだろう、と予想はついていた。問題はデジメンタルが出現する条件が先代の選ばれし子供たちの紋章と対応している場合、大輔たちは完全なる詰みとなることだ。頼むからいてくれ、と願いながら、どんどん先を進んでいく。そこにはぽっかりとあいた空間が広がっていた。
「ここ、は」
ぽっかりと広がる空間があった。その先にはちょっとした山があり、その頂に炎を模したデザインの石が鎮座している。どきどきしながら大輔はよじ登る。無理しないでよ、とスカートできてしまった京はそこで待っている。伊織はついてくるのに疲れてきたのか京のとなりでぜいぜいいいながらすわりこんでいた。近づくにつれてどきどきが止まらなくなる。そこには、大輔が待ちわびてやまなかった炎のデジメンタルがあった。
「勇気の紋章がねえ・・・・・・」
どこをみても、炎のデザインしか見あたらない。太一たちと知り合わなかったから、デジメンタルの出現条件は違うのかもしれない。これが持ち上がらなかったらどうしよう、という不安をかき消したくて、大輔はそれに手をかける。まるでサッカーボールのような重さだった。意外と大きな石だった。それは大輔の手の中でどんどん小さくなり、まるでデータチップのようなものになってしまう。突然の変貌に困惑していると、からっぽになった石があったところから、なにかが飛び出してきた。
「いやったああーーー!やっとでられたー!」
それは大輔が待ちわびていた声だった。ぴょんぴょん飛び跳ねる姿はげんきいっぱいの竜の子供である。目があったとき、きっと大輔は笑っていたのだ。それをみた青い竜の子供は、その赤い目をへにゃりとして、それはもう全力で喜んだ。歓迎されていることがわかったらしい。
「デジメンタル持ち上げてくれてありがとな!ずーっとまってたんだよ、オレ!」
両手をがしっとつかみ、上機嫌な青い竜の子供は、おわあああっと振り回される大輔をいいことにダンスに巻き込む。
「オレ、ブイモン!デジメンタル持ち上げてくれたってことは、オレのパートナーなんだろ?な、な、名前は!?」
「お、おれか?」
「うん!」
「お、俺は大輔、本宮大輔」
「大輔、大輔、うんわかった、大輔な。覚えた!オレ、ブイモン!よろしくな!」
「お、おう、よろしく?」
「えへへー、オレのパートナーどんなやつなんだろーなーってずっと考えてたんだよ。まさかこんなに時間かかるとは思わなかったけど、大輔にあえたらどうでもよくなったからまあいいや!」
「さっきからなにいってんだよ、えーっと」
「だからブイモンだっていってるだろー!大輔はオレのパートナーで、このデジタルワールドを救うためにきた選ばれし子供なんだ!」
「え、あ、ちょ、一気にいうなよ、えええっ!?」
大輔の大声に京と伊織が駆けつけた。二人をみたブイモンが目を輝かせる。
「さっすがは大輔!もう仲間つれてきてくれたんだな!」
「え、ちょ、さっきからなんの話してんだよ、ブイモン?!さっぱり話についていけねえんだけど!?」
お前は誰だとか、そういったものを吹っ飛ばして、ブイモンという存在を肯定し、名前で呼んでくれるだけでなくパートナーであることにつっこみもしない大輔の反応はブイモンにとってとんでもなくうれしいものだったらしい。大輔からすれば、すでにいろんなことを知っているブイモンが予想外すぎてついていけていないだけなのだが。ブイモンってこんなにいろんなこと教えてくれる奴だっけ。光子郎さんがいないから、ゲンナイさんたちが手を回してくれたんだろうか?いろんなことがわからない世界である。大輔がブイモンとすっかりうちとけて漫才じみたやりとりをしているのをみて、どうやら二人は警戒するのもバカらしくなったらしい。
選ばれし子供とか、デジメンタルとか、いろんなことを質問する。驚くべきことに、なにひとつ言葉に詰まることもないまま説明してしまったブイモンである。もう大輔は開いた口がふさがらない。こんなやつがもうひとりの自分とかどういうことだ。オーバーハイスペックすぎないか、なんだこれ。すごいな、としかいえない大輔に、ブイモンはほめてもらえたとスキップで喜んでいる。
「ってことは、この近くに私や伊織のパートナーもいるってこと?」
「うん、いるよ。ただ、ここよりちょっと遠いんだ」
「もしかして、このぴこぴこ表示してるところですか?」
「そうそう!二人がいかないとオレが案内したくても洞窟がでてこないんだ。だからさ、今から迎えにいこうぜ、大輔!」
疑問ではなく確定事項のようだ。あたりまえのように手を握り、ブイモンは先を促す。
「あ、そーだ、大輔」
「今度はなんだよ」
「そのデジメンタル。それに差してみて」
「これか?」
「うん」
いわれるがまま差してみると、どうやらSDカードだったらしい。デジメンタルがダウンロードされ、デジタル時計に表示された。
「あ、私のとこにも出てる」
「僕にもでました」
「なんだこれ?」
「オレたちが戦うとき必要なんだ。これは炎の力が使えるデジメンタル。オレを進化させるとき使ってね」
「進化ってなんだよ」
「やってみればわかるって。大丈夫、大丈夫」
「なんだそりゃ」
「オレと大輔がいるんだ。それに京や伊織だっている。もう負ける気がしないね。へへっ、もう好き勝手なんかさせやしない。がんばろーぜ、大輔!みんなでデジタルワールドを救うんだ!」