Jetzt ist es soweit






Jetzt ist es soweit2




抗議する大輔につられて、伊織と京が笑う。お前ら、わらうなあっと赤面した大輔が声を荒げる。ここは何とかしないと大輔のちっちゃいころの恥ずかしいエピソードを披露しかねない雰囲気を纏っていると弟は察知したので、それはもう必死だ。それをアタシに言わせる気?と口を開いたジュンに、うわあああっと大輔は大声を上げる。悔しかったら身長伸ばしてみなさいよ、ちびっこ。6歳差は依然大きいもので、成長期に入りかけの大輔と高校2年生のジュンでは埋めようのない身長差がある。ジュンはウパモンを抱いている伊織と眼があった。


「あの、ジュンさん」

「なに?」

「あの、ウパモン預かってもらえませんか?」

「えっ、伊織の家、いったらあかんのけ?!オレ、楽しみにしとったんにー」

「ふうん、ウパモンっていうのね、この子。アタシはいいけど、ウパモンはいいの?」

「ほんなもんあかんに決まっとるがや。オレは伊織のパートナーやにゃあ?ジュンのパートナーとちゃうしや」

「だってさ」

「でも・・・・・」

「ねえ、伊織くん」

「え?あ、はい。なんですか?」

「伊織くんのおうちってたしか、パソコンあったわよね。あのパソコンってネットに通じてる?」

「え?あ、はい」

「京ちゃんと同じマンションなら、ADSLよね?電話回線じゃないわよね?」

「はい、そうですけど、どうしてですか?」

「そのパソコンって触ってもおこられない?」

「大丈夫だと思います。ディーターミナル使ってるから、ボクが一番パソコンに詳しいんです」

「そっか、なら話は早いわね。はい、これ」

「これって、京さんや光子郎さんがもらったデジバンクですよね?いいんですか?」

「むしろ伊織君が使うべきよ、これは。ウパモンも伊織君と一緒にいたいわよね?」

「もちろんだぎゃ」

「ね?」

「ありがとうございます!」


ウパモンをどうやって連れて帰ろうか、ずっと考えていたらしい伊織の表情がやっとほどける。


「そーいうことなら、アタシの家にくる?ウパモン」

「えーんけ?」

「大輔んちより、アタシの家の方が近いもん。だって同じマンションだし」

「じゃあ、そうしてくれる?京ちゃん。伊織くんの家のパソコンで設定終わったら、京ちゃんのパソコンからウパモンを転送すれば一発ね」

「まっかしといてください、ジュンさん!お台場小学校パソコン部の部長として、もらったプログラムはぜえったいに使いこなして見せますから!」

「期待してるわよー、京ちゃん」

「はい!」

「じゃあ、期待の新人にさっそく宿題ね。京ちゃんとこのマンションのゲートポイントを調べて、こっちに送ること。どういう感じなのか、いっぺん教えてくれる?」

「ホントですか!?やったー!はい、帰ったらさっそくやってみます!」

「えーっ、ずりーぞ京!オレ、昨日やろうとしたら怒られたのに!」

「ダメに決まってんでしょーが、大輔は入ろうとしてたじゃないの。うちのマンションはアタシの管轄なの。勝手なことしたらしばくわよ」

「姉ちゃんのけちー」


ほっとした様子の伊織に、よけいな心配かけてごめんねと後で謝らなければいけない。出会って1週間の子供たちに、家庭事情を説明できるほど伊織はまだなじめていないのだ。フォローすべきだった。あとで大輔をしばかなければとジュンは思う。井之上家を経由して、付き合いがある本宮家と火田家である。伊織の家庭事情は、お葬式に参列する付き合いがあるため、ある程度把握している。伊織の家ではデジモンという言葉はNGワードなのである。存在自体を察知されたら、ひと騒動おこるのは目に見えている。


「ええと、ジュンさんは機械にくわちいんでちゅね」

「そーいう君は?」

「私はポロモンでしゅ」

「ポロモンね、よろしく。っつーか、京ちゃんのパートナーならパソコン得意そうだけど、ちがうの?」

「とんでもないでしゅ。私は機械なんて難しいものはとてもとても」

「へー、パートナーって言ってもいろんなのがいるのね、今さらながらおもしろいわ」


京に抱っこされているピンク色の幼年期は、かわいらしい外見とは裏腹に、ずいぶんと男らしい声をしている。これまた面白い組み合わせだこと。ジュンはひととおり挨拶を終えたのを確認して、パソコンを広げる。さっきから京と伊織ばっかずりい、オレもデジバンク欲しいとうるさい大輔にうるさいと一喝したジュンは、パソコンを提示した。


「そんなにいうなら、見せてあげるわ、ゲートポイント。ついて来なさい、大輔」


ぽかんとしている京と伊織。他の子供たちはうわあという顔をしている。ご愁傷様は聞こえない。大輔だけはその笑みの被害者になった経験から身構えている。チビモンは初めて見るゲートポイントに繋がるデジタルゲートに興味津々だ。


「光子郎君、デジメンタルのバンクの調子はどう?」

「ええ、問題ありませんよ」

「じゃあ、ゲート開いてくれる?大輔」

「いいけど、何する気だよ」

「えっ、なになに、なにがはじまるんだ?ジュン

「これから本題にはいるのよ、いっとくけど、今日はアタシが満足するまで帰さないからねー」

「え゛!?」


開かれるデジタルゲート。そして、本宮姉弟、そしてチビモンはパソコンの向こうに消えた。ネットの空間ではチビモンはブイモンに進化できる。


「お待ちしておりましたよ、大輔」

「あ、ガーゴモン。ごめんな、昨日は約束やぶっちまってー」

「ガーゴモン、アンタねえ。人の弟を勝手に連れ出さそうとしないでくれる?心臓泊まるかと思ったわよ、もう」

「それは申し訳ない。ジュンの大切な弟ですからね、ご要望はうかがうのが得策かとおもいまして」

「ガーゴモン?えーっと、なあなあ、大輔。ガーゴモンってジュンのデジモンなのか?」

「うーん、オレも実はよくわかんないんだけどさ、ちがうんだって。なんか姉ちゃんを気に入ったらしくて、ずっと一緒にいるんだよ」

「へー、そうなのか。おれ、ブイモン!よろしくな、ガーゴモン。大輔が言ってたデジタルワールドにこっそり行ける心あたりってガーゴモンのことだったんだな!」

「ええ、いかにも。まあ、今回は申し訳ないことをいたしました」

「ううん、いいんだ。おかげで大輔と一緒にいられるし、ありがとな!」


ジュンは、なにやらパソコンをいじっている。いやな予感しかしない大輔である。そんな大輔に向けられる不敵な笑顔。


「ところでルーキーくん、ここんとこの冒険はどう?」

「そりゃ、ちょっとは緊張してたけど、大丈夫かなって気がしてるよ」

「へーえ、いうじゃない」

「だって、ブイモンも京も伊織も、太一先輩たちだっているし。姉ちゃんだっているんだから、心配することなんかねーだろ。もちろんオレだってやれることはなんだってやるつもりだけどな!」

「期待してるわよー」


そしてジュンは立ち上がった。


「まあ、それが口だけじゃないか、確認はさせてもらうつもりだけどね」

「えっ!?」

「ここのゲートポイントはハッキングさせてもらったわ。逃げるの禁止よ」


そして、足元に広がる魔法陣。世界は一色に包まれる。


「えっ、ちょ、待ってくれよ、姉ちゃん!まさかガーゴモンと戦えっていうのかよ!」

「ご安心ください、大輔。なにも殺し合いをしようというわけではございません故。アナタとブイモンの覚悟がどれほどのものか、ここで見せていただきたいのです。アーマー進化は紋章のように制限がないと聞きます。ここにあるのは勇気、愛情、知識。さあ、お好きに戦ってください」

「なにせブイモンもホークモンもアルマジモンも、デジモン図鑑にデータがないのよ(古代種的な意味で)。だからね、アーマー進化、みせてちょうだい」

「だってさ、大輔!がんばろーぜ!」

「なんでそんなうきうきしてんだよ、ブイモン」

「だって、切羽詰まった状況じゃないバトルって初めてだろ、大輔。なーなー、付き合ってくれよ、大輔」

「あーもう、わかったよ!」


完全にネットワークから切り離された空間。かつてウォーゲームの最終会場を作り上げた実績もある異空間である。大輔はD-3をおもいきり掲げた。
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