Spiel dein Spiel 3
クラモン
レベル:幼年期
種族:正体不明
属性:不明
コンピュータネットワーク上に突如出現した正体不明のデジモン。コンピュータネットワークを悪用する人間の悪意やネットワーク上で繰り広げられる争いによって発生する攻撃性が具現化し、ひとつのデジタマがうまれた。そのデジタマには人間の破壊本能が凝縮されており、そこから生まれたこの謎のデジモンは非常に危険な存在である。コンピュータネットワークの中で病原菌のように繁殖して、軽度のネットワーク障害を引き起こす。必殺技は巨大な目から泡状の物体を放出するグレアーアイ。
デジヴァイスに搭載されているデジモン図鑑がホログラムで表示される。詳細な画像まで添付されている高性能さに、ジュンは目を輝かせた。これがクラモンなんだってまじまじとジュンのパソコンを眺めていたタカトに、そっちの世界ではクラモンはいないの?ってジュンの言葉にうなずいた。見たことないのに知ってるなんて変なの、と茶化すジュンに、タカトはあははと笑う。映画館でも見たし、テレビでも見たし、ネットの動画でも見たけれど、こうして実際に見るのは初めてのタカトである。笑うしかない。ほかにごまかし用なんてなかった。ジュンたちのことは、デジモンアドベンチャー02という名前のアニメで見たから知ってるなんて、さすがに言えるわけがない。
「秋山遼さんって、知ってますか?」
「え、誰それ?」
「えーっと、その、一乗寺賢くんって知ってますよね?その人と一緒に冒険した人がいたんですけど、ゲンナイって人から聞いたって教えてくれました。僕たちの世界が危ないって教えてくれたんです。その人は今、ずっと遠いところにいる。僕はゲンナイさんに頼んで、あの人のところにいきたい。僕は、もう一度、会わなきゃいけないんだ」
「そっか、賢くんの。残念だけど、あの子、なんにも覚えてないのよね。いろいろあったから」
「そう、です、よね」
「あ、知ってるか。ごめんね、気を使わせちゃって。タカトくんの方が大変でしょうに。ちょっと待ってね、今からメールしとくわ。なんか太一くんたちにほっぽりだされて愚痴ってたから、暇してると思うし。大輔たちにはこっちのこと手伝ってもらいましょ」
あれ、とタカトは思う。選ばれし子供たちがお台場中学校に集合し、クラモン収集班とディアボロモンと戦闘する班に分かれていたはずだ。思えばクラモンたちの姿がない。だから光子郎は大輔たちに収集をかけないんだろう。小さな違和感を感じながら、タカトはテレビ越しに憧れ続けた少年たちと会えるのを心待ちにしていた。赤信号の待ち時間を利用してメールを送信したジュンは、マンションに向かった。
傍から見れば可愛らしいクラモンも、白黒の16ドットで構成されているジュンの相棒がロードしてしまった。声を上げはしたが、拒否反応はないタカトにジュンはほっと息を吐く。タカトはデジヴァイスをしまった。異世界のデジタルワールドを救うためにやってきました、というタカトに、証拠を見せてとジュンは言ったのだ。どうやらジュンは納得してくれたらしい。タカトの知る本宮ジュンとはずいぶん違うキャラクターだから、ものすごく違和感があるけど、デジヴァイスを見て目を輝かせている様は、ヤマトにお熱を上げていた彼女に似ている。ミーハーな本質は同じようだ。
「タカトくんはロード見たことあるのね、助かるわ。野生のデジモンの生態、あの子達知らないから見せられないのよ。ここで見たことは内密で頼むわね」
「あれ、ガーゴモンはジュンさんのデジモンじゃないんですか?」
「パートナーって意味で?それなら違うわよ。アタシは選ばれし子供じゃないもの」
「ワタクシはヴァンデモンの一派としてこの世界に参りました。その時、ワタクシはジュンとであったのです。とても運命的な出会いでした。ヴァンデモンがワタクシの裏切りを察知して、刺客をけしかけましてね、ワタクシはジュンをお守りすると誓ったのです」
似たような関係性を見たことがあるタカトは、懐かしさを覚えた。
「じゃあ、ジュンさんはテイマーなんですね、僕たちと同じなんだ」
「僕たち、ってことは、タカトくんの世界だとそれが普通なのね?なるほど。ホントに興味深い話だわ」
ただいま、現在進行形で、世界中で一斉送信されている特定のダイレクトメールを開くと、八神太一と石田ヤマトのプライベート画像がばらまかれた挙句、クラモンにパソコンのデータを食い尽くされる被害が多発している。もちろんガーゴモンを養うためにウィルスバスターを入れていない非常に無防備なジュンのパソコンにもそれはやってきた。捕食者の餌食になったクラモンのデータから、送信先を特定したガーゴモンは、光子郎に情報の転送を要請する。了解、とジュンはメールを送信した。恐ろしい捕食者がいると知ったクラモンたちはくもの子を散らすようにいなくなり、新宿エリアからいなくなってしまう。あとはエージェントたちの仕事だ。ゲートポイントを封鎖して、クラモンたちが現実世界に来る通路を断つ。ジュンは車を走らせる。
「それにしても、タカトくんのデジヴァイスって便利なのね。よかったら、あとで解析させてくれない?」
「えっ、でもデジモンをしまっちゃうジュンさんのほうがすごいよ」
「こんなのデジバンクの応用だもの、たいしたことないわ。でもね、こっちのデジモン図鑑はデジタルワールドにアクセスして、データ引っ張ってこなきゃいけない都合上、ネット環境がないと詰むのよ。だから、今みたいに、ネット環境ぶっ壊されるとどうしようもなくなるわけ。でも、タカトくんのは違うでしょ?凄まじいデジモンのデータが入ってるわけでしょ?そのなかに。どんなプログラム組んだらデジヴァイスにぶち込めるのかしら」
「さ、さあ?」
ここに大人たちがいたら話が弾んだかもしれない、とタカトは思った。残念ながらタカトは自分の世界のデジモンの誕生の背景も歴史も網羅するほどの研究者気質ではないし、説明されたことはあっても詳細に覚えてなかった。タカトにとっては、ギルモンとの関係が選ばれし子供とパートナーデジモンのそれではない、ということしか語れない。それでも、ずいぶんと興味をそそられたらしいジュンは、矢継ぎ早に質問して、タカトを困らせた。でも、次第に緊張がほぐれてきたらしいタカトは、ジュンに質問をする余裕が出てきた。それに受け答えしながら、ジュンの車はマンションに到着したのだが。
「伊織君?それに京ちゃんまで・・・どうしたのかしら」
ジュンを待っていたのは、どこかに電話をしながらせわしなくあたりを見渡している京。こっちに気づいて、早く来るよう手招きする伊織。ウパモンが飛び跳ねている。ポロモンもこっちに気づいたようで、大きく旋回するとジュンが住んでいる階まで飛んでいく。どうやら大輔と賢はジュンの家の前に既に集合していたようだ。ジュンたちの到着を知ったらしい大輔たちがかけてくる。その中にはウォレスもいて、ジュンを驚かせた。
「どうしたのよ、みんな」
「どうもこうもねえよ!姉ちゃんが呼んだんだろ?」
「あの、困ったことってなんですか?」
「もしかしてジュンさんに何かあったかもってとんできたんですよ!だって、ジュンさん、ディアボロモンの居場所を特定したってメールしてから、返事がないって光子郎さんが!」
「あー、ごめん、運転中だったのよ。そんなことより、助けてあげて欲しい子がいるの。紹介するわ、松田タカトくん。それとギルモン」
みんなの視線を浴びる中、こんにちは、はじめまして、って気圧されながら頭を下げたタカトだったが、無邪気ながら大型なギルモンと見たこともないデザインながらデジヴァイスを持っていることで、子供たちの警戒心が多少緩和される。そんな中、真っ先に反応したのは、ウォレスだった。
「タカトだっけ、ねえ、そのデジヴァイス見せてくれるかい?」
「え?うん、いいよ」
「すごーい、タカトのデジヴァイス、きんきらだねー」
「テリアモン!?」
「なあにー?ぼくのことしってるのー?」
「んー、タカトー、テリアモンはテリアモンだけど、ギルモンの知ってるテリアモンじゃない」
ウォレス、と呼ばれた少年とテリアモンを初めて見たタカトは、こんな人いたかな、と思い出してみるが、記憶にないキャラクターである。金髪の外国人なら世界へんで出てきた覚えがあるが、あれはミミの彼氏疑惑があるハリウッド俳優を父に持つマイケルのはずだ。ウォレスという名前の選ばれし子供はもちろん、テリアモンの組み合わせは見たことがなかった。もしあったら、ジェンと初めて会った時、タカトは真っ先に気づいたはずである。
「そりゃそうだよ、ジェンとは違うんだから」
「そっかあ」
ギルモン以外消えてしまった仲間たち。久しぶりに懐かしい匂いを感じて、多少気分が高揚したギルモンだったが、赤の他人と気づいてしまったせいで落胆も大きい。かわいそうなくらいしょげてしまうギルモンである。それはタカトも同じである。ウォレスはデジヴァイスを返しながら、タカトに聞いた。
「ねえ、君の友達に遼っていなかった?秋山遼って人」
「遼さんをしってるの!?」
「やっぱり、そうじゃないかと思ったんだ。遼もこんな形のデジヴァイス持ってたから!」
「松田くん、だっけ。僕も遼さんと冒険をしたことがある、らしいんだ。ごめん、なにも覚えてなくて」
「あれ?ウォレス、お前、タカトと冒険したわけじゃねえのか?」
「ううん、僕は初めて会ったよ。遼は何度もデジタルワールドを冒険してるって言ってたから、その時の仲間じゃないのかい?」
「そうだよ、そうだけど。だから僕とギルモンはここにいるんだ」
「ほんとにどこにいっちゃったんだろうね、遼さんってひと」
「これだけ探しても見つからないなんて変です。この事件が終わったら、ゲンナイさんに調べてみてもらわないと」
「それより、助けて欲しいって、どういうことだよ?なにかあったのか?」
タカトはこくりとうなずいた。
「遼さんを助けて欲しいんだ」
遼がどういう手段で次元を突破したのかは不明だが、ミレニアモンとの決着をつけるために、原始のデジタルワールドにいるのは事実である。タカトたちの知り合いには、デジタルワールドの時間に干渉することができる存在はいない。しかし、この世界ではデジタルワールドの最上位の存在が選ばれし子供たちの後ろ盾となっている都合上、接触することができれば可能となる。だからクラヴィスエンジェモンは幾多のデジタルワールドにつながる扉から、この世界を選んでタカトたちを転送したのだ。
「なんだかおおごとになってきましたね」
「その、ホメなんたらに会えばいいんだよな?俺たちも手伝うぜ、なあ、賢?」
「ああ、もちろん。僕はいく。記憶を取り戻すためにも」
「ホメオスタシス、保健の授業の時にならったでしょ、大輔」
「うるせー」
そんな中、ウォレスは悲しい顔をした。
「僕ももっと真剣に遼を探せばよかった。遼にそんなことがあったなんて知らなかったよ。3年間も、遼は一人だったなんて」
タカトは気づくのだ。タカトが秋山遼という少年と出会ったのは2001年である。1年間デジタルワールドを放浪していたわけだから、失踪したのは2000年だろう。この世界の秋山遼とタカトの世界の秋山遼が入れ替わったのは、2000年で間違いない。問題はデジモンアドベンチャー02という世界は、2002年を舞台とした世界だということだ。賢と遼が冒険したのはウォーゲームの直後、2000年である。この世界ではミレニアモンとの最終決戦で失踪したことになっている。この世界では秋山遼という少年がウォレスたちの前から姿を消したのは3年前になるのだ。時空の裂け目に落ちたタカトの世界の秋山遼は、デジタルワールドと現実世界を行き来しながら元の世界に帰る方法を必死で探していたらしい。こちらの世界の遼がどういう経緯で失踪したかなんて知らないわけだから、ウォレスたちに会いにいきようがないのだ。しかもゲンナイのような存在はタカトたちの世界にはない。だから、接触しようと試みたエージェントたちを怪しんで、姿を隠すようなことまでしたから、なおさら難航したらしいのだ。タカトは胸がいたんだ。
「僕も協力させてほしい」
ウォレスはいう。もう二度と目の前で仲間がいなくなるなんて、いやだからと。
「まずはゲンナイさんに頼んで、ホメオスタシスに接触することなんだけど、この事態を収集するのが先よね。しっかし、太一くんたち、まだサーバにつかないのかしら?」
京から借りたパソコンで太一たちの動向を追いかけているジュンはいう。
「それにしても、不思議ですよね。ディアボロモンって、太一さんたちが倒したはずですよね?」
「そーいえばそうよね、なんで今更復活したのよ、おかしいでしょ」
「あーもう、オレもいきたかったのに!なんでタケルたちだけ行ってんだよ!」
「太一さんがいってたでしょ?こっちに取り逃がしたらあとは頼むって」
「でもよー、それって待機ってことだろー?」
「どこかに生き残りがいたとか?」
「それはないわ、賢くん。だってオメガモンが分裂したあいつを全滅させて、オリジナルに止めさしたのアタシみたもの」
「じゃーなんで復活してんだよ、姉ちゃん」
「しらないわよ、そんなこと」
大輔のディーターミナルにメールがとどいた。東京のネット回線には、クラモンが溢れていて、太一たちがディアボロモンのところに向かっているのに見向きもしないそうだ。むしろ、まるで監視しているかのように、じいっとみつめて動きすらしないという。時折、挑発するようにネット障害を起こしてはコキュートスブレスの餌食になる。しかし、進化する気配もなく、ただ蜘蛛の子を散らすように逃げていく。光子郎もさすがに不審におもったらしい。太一とヤマトを挑発するような言動を繰り返し、煽っている。誘い込むように、クラモンが漂っている。
「ディアボロモン?」
「どうしたんだよ、ウォレス?」
「ディアボロモン?ホントにそう言った?大輔」
「お、おう」
「みせて、ジュン!」
京のパソコンに飛びついたウォレスは、青ざめた。
「ありえないよ、なんでこいつがここにいるんだ!」
「ウォレス、見たことあるのか?!」
「見たことあるもなにも、僕が生まれて初めて冒険したのは、こいつが復活したからなんだ!」
「えっ、でもさっき、ミレニアモンを倒すためって」
「ミレニアモンの仕業なんだよ!あいつは時間を巻き戻す力があるんだ。倒した敵を復活させてるのが得意なんだって遼が言ってた!僕たちのときも最初に呼ばれた子供たちが罠にかかって、タカトの時みたいに仲間を異次元に閉じ込められちゃったんだ。ディアボロモンは罠だったんだよ!そもそもコイツがいた世界は、デジタルワールドをコピーして作ったミラーワールドで、ゲンナイさんたちがこれない場所だった。とっても危険な場所だった。だから賢たちのナビゲートだけが頼りだったんだ!」
その直後だ。光子郎から太一たちが行方不明になったという知らせが届いたのは。オメガモンがディアボロモンを倒した瞬間に、ゲートポイントに亀裂が走り、彼らはそこに飲み込まれてしまったのだという。光子郎は必死でデジヴァイスの探知機能を追跡しているが、表示される言葉はひたすらエラー。この世界のネットワークには存在しないというとんでもない言葉が出ているらしい。
「だめだ、今からじゃ間に合わない!」
「どうすんだよ、このままじゃ太一さんたちが!」
「ウォレス、その時のデジタルゲートはまだ使える?アドレスは覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ。生み出されたミラーワールドは、今は、デジタルワールドのデバックに使われてるはずだ!」
「でも、エージェントさんたちは、今、みんなでばらってていないのよ!仕方ない、アタシがナビゲートするわ。ウォレス、お願いできる?」
ウォレスは力強くうなずいた。教えてもらったアドレスを打ち込み、3年ぶりに開かれるミラーワールドのデジタルゲート。選ばれし子供たちは、オメガモンを助けるべく向かうことになったのだった。
現実世界の1分がデジタルワールドの1日といういびつな時間軸のまま、遼たちの冒険から人間が訪れることがなかったデバック世界が広がっていた。世界の安定を守る者が存在しない無法地帯は、時間の概念が死んでいた。かつて倒したはずの敵との連戦。徐々に思い出していく賢の記憶、そしてカイザーとなった少年がキメラモンを造ろうとした本当の理由とは。囚われた仲間たちを大輔たちは助けることができるのか。
「なんでだよ、なんでだよ、オメガモン!」
「あれは本当にオメガモンなんですか?」
「どうして、そんな」
黒く染め上げられたオメガモン。選ばれし子供たちに牙をむく、その理由とは。
「タカト、君は一体・・・・・」
「あれが、デュークモンのオリジナルか」
「僕はずっと君と戦いたかったのかもしれない。こんな形で会いたくはなかったけど」」
「タカト、ギルモン、会いたかったよ!」
懐かしい友との再会。そして、タカトが明かす本当の旅の目的。降臨するデュークモン。そしてクリムゾンモード。ホメオスタシスに送り出された原始のデジタルワールドが語るロイヤルナイツ、誕生の秘密とは。
「どうして、あいつがフォレストリーフを持ってるのよ、ガーゴモン。信じてたのに」